第14話 伝われ

「ちょっと待ってくれないでしょうか。いろいろ聞きたいのですが、あなたのような精霊がどうしてうちの子と一緒に……? というか、カイトその格好どうしたんだ!?血まみれじゃないかっ!」


 あ、やべ……。肩にもらった時の血が付いたままだった。後で捨てようと思ってたのに忘れてたや…


「あ、これは~、その~け~~が~~? をしてぇぇ??」


 まずい、自分でもわかる。これは目がすごい泳いでいるっ!


「怪我だと!? どこだっ!? この血の痕だと肩かっ!? 大丈夫なのか!?」


 言いつつお父様が焦った様子で僕の左肩をぺたぺたしながら確認してくるけど、もう傷跡も綺麗さっぱりなくなっているんだよね……。ヒール掛けたしね。いや、あれはちゃんとヒールだったから!


「ん? んん? どこもおかしいところはなさそうだな……? 服に血はついているんだがな?」

「あ~、それはね、ほら! この人が治してくれたんだよ!!」

「えっ!? あたし!?」

「えっ!って言ってるぞ……?」

「いやいや、何言ってるのさ、助けてくれたじゃない!!」


 お父様と警備隊の皆さんを背にするようにしてリーファを見上げてバチコンバチコン音が出そうなくらいにウィンクしまくって合図を送る僕……


(話合わせて! 頼むよ! 頼む! 頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む……)

(あぁ! うるさいわね! 分かったわよ!!)


 届いたっ! リーファに届いたっ!


「あ、いえ、違うんです。急に私の方に話が来たからびっくりしてしまっただけで。そう、私が彼の傷を癒したんですよ?」


 そう言ってお父様に話してくれるリーファ。ふぅ、壁を一つ乗り越えた感じ!


「そう、ですか……。それは本当にありがとうございました! しかもわざわざここまで送っていただいたなんて。本当に良かった。カイトが無事でいてくれて、本当に……」

「お、お父様……」

「あぁ、よかったな! アラン! カイト、坊主も無事で何よりだ!」

「旦那……よかったですね」「いやぁ、これで一安心だ!」「カイトの坊ちゃん! ひどい怪我もなく戻ってこれたんだな……!」「怪我はしてけど治ったんだってよ!」「おい、早くアラン隊長とこの村に伝令飛ばしてやれっ!」「おっと、そうだな! 誰かいるかっ!?」「俺が行こう!」「いや、俺が行くぜ!」「ちょっと待て、お前らはリーシュさんに会いてぇだけだろう? ここは俺がだな……」「おいおい、もめてる場合かよ。仕方がねぇな。ここはおれがちょっと聖女様に会いに行ってきてやらぁ……」「「「ロリコン野郎! お前は却下だ!」」」「なんでだよっ!?」

「あぁ、カイト君が無事で本当に良かった。しかもこのような形とは言え精霊様に出会うこともできたしな……」


 あ、あらら? お父様が泣いている……? なんか後ろの人たちは騒がしいけども……

 どうしよう、本当に心配をかけていたんだ……。僕はこんな大ごとになるようなことをしちゃったのか……


「あ、あぁ、何でもないぞ、カイト。それよりもだ、リーファ様、でよろしいでしょうか? カイトがお世話になりました。この度はなんとお礼を申し上げればよいのか……」

「あ、待ってください。そのことについてなんですが、私とカイトからお話ししなければならないことがあるんです!」

「話さなくてはならないこと……ですか……?」

「はい、実は私は……」


――――――――――――――――――――


「なんということだ、まさかアランのところのカイト君が精霊様と契約を交わすことになったとは……」

「あぁ、まったくだぜ……。こいつぁ、どうすりゃいいんだ……?」

「カイト、お前いったいどうしてそんなことに……?」

「あ、そ、それはそのぉ~」

「そこはまたあとでお話させていただきたいのですが、先ほども言った通り魔力の枯渇で弱っていた私にカイトが魔力を分けてくれたのですが、その時に私とカイトとの間に確かなつながりができてしまったみたいで……」


 森の外での再開から隊長のお父様と副隊長のセレキスさん、お父様の親友で隊員のトラマーさんの3人でリーファの話を聞くことになった訳なんだけど、僕とリーファの今の状態を3人は”契約”って呼んでいた。


「あ、あのお父様。精霊様との契約というのは一体?」

「あ、あぁ、カイト、お前が知らないのは当然だな…。まぁなんだ、俺たちの身の回りにはいろいろな生き物がいるな?」

「はい、僕たちのような人だったり村の羊や鶏、ミミズとかスライムにゴブリンみたいな魔物なんかもいっぱいいます」

「そうだ。沢山の種類の生き物がいて、そこには俺たちが普段はあまりかかわらないようなドラゴンや神話に出てくるような生き物だっている、らしい。そしてそんな俺たち生き物の隣に寄り添うようにして存在しているのが……」

「私たち精霊という種族なのよ?」

「精霊、ね?」

「そ、精霊」

「でだ、その精霊という存在は時に生き物に特別な祝福を与えるといわれているんだ。そうして祝福された個体を精霊憑きと呼んだりする」

「精霊憑き……」

「そう、精霊憑きだ。その精霊に祝福された個体は今までの能力とはけた違いの能力を発揮できるようになったり、外見が大きく変わったり、今まで持っていなかったような能力を急に開花させたり、とその祝福も多岐にわたるといわれている。それを逆手にとって自分にとって戦いやら私生活やらを充実させてくれそうな精霊と積極的に関わって進んで精霊憑きになるものたちがいるんだ。そういった人たちのことを精霊使いと呼ぶんだ」

「精霊使い?」

「そうよ。私たちはドライアドっていう木と森の精霊だけれど、ほかにも水の精霊や火の精霊、土に光に闇といろいろいるのよ?」

「へぇ~、たくさんの精霊がいるんだね!」

「で、だ。カイト君、君もその精霊憑きになったわけなんだが、今の君の状況は精霊とのを結んだっていう状態にみられるわけだ」

「うん?」

「つまりだ!坊主は偶発的にだが、精霊使いになったってことだ!」

「なるほど~」


 僕は今リーファ使いになっているということなのか。

 ……僕が一番上手にリーファを使えるんだっ!

 違うか……


「そして精霊の恩恵は契約にしろ精霊憑きにしろ一方的なものじゃない。まぁ、精霊憑きの場合は憑かれている当人の何らかの資質・能力にひかれて取り付くわけだから大して憑かれた側は持っていかれるものは少ないらしいが、契約は別だ。契約に関しては精霊と契約者は対等と思える条件で行われる。つまりカイト。お前は今も何かしらの代償を支払っているはずなんだ……」

「えっ!? そうなの!?」


 聞いてないけど!? どういうことなの? リーファさん!?


「あぁ~、それなんですがね? 私がカイトからもらっている代償はただの魔力だけ、なんです……」

「「「魔力だけ……?」」」

「はい、そうです」

「え? え?」


 魔力だけだと何か変なの!?


「いや、でもよぉ。あんたみたいな大精霊との契約の代償が魔力だけなんて言われてもよぉ」

「そうですね。森と契約するといわれているドライアドほどの精霊になれば、必要とする魔力量はとてもじゃないが人1人に補える量では……」

「そういうことだ、カイト。お前は大丈夫なのか?」

「えぇと、なんともないです……」

「そうなんです。カイトは全く問題ないみたいでして……」

「それほどだったのか……」


 なんか僕の魔力の多さに3人が「マジかよ、こいつ……」みたいになってるんですが……。やっぱり僕の魔力量は常識外らしいね。


「ところで、カイトお前どうして森の中に行ってたんだ?」


……きましたわ。






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