手記と不帰のダンジョン

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グランドフォート王国の王都から脱出後のクレスの話


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 不帰かえらずのダンジョンって帰ってこれないんじゃないのか?


 それに不帰かえらずのダンジョンに入って、戻ってこれないなら、なんでクレスがこれを持っているんだ?こうして疑問が浮上する。



 さて、まず何から聞くべきか。本当に帰って来れないダンジョンがあるのか?



 最初に聞く事は、どこにあるか、だな。場所把握大事!



 「このダンジョンは、どこにあるんだ?」


 「そうですね。このダンジョンは、イーストウッド国から北西にある【オラトリオ】というダンジョン都市にあります。ちょうど、このイーストウッド国、ノーザンテースト帝国、グランドフォート王国の3国の国境に位置します。元々は中立国だったのですが、今はグランドフォート王国の領地になっています」

なるほど、――わからん。


 大体この大陸に転移してからまだ一ヶ月もたってないしな。なぜ場所を聞いたんだろうな、俺。次に、手記について聞いてみるか。



 「この手記はどうやって手にしたんだ?」


 「これの入手経路ですが、僕の妹から頂きました」

 

 「妹は、ダンジョン攻略したのか?」

 

 「いえ、違いますよ。実は持ち主は帰還者なんですよ」

 

 「って事は、その人はダンジョン攻略した人なのか?」


 「そうではなかったようです。これの持ち主は、ノーザン地方の北部にある、ノーザンダンジョンで発見されました」


 「そんなに距離があるのか?」


 「ええ、誰にも発見される事もなく、国境を越えたりすることはまず無理ですからね」


 「実は神器アーティファクトを隠し持ってたりしてないか?」


 「魔力感知にも引っ掛かりませんでしたし、発見当時はほとんど全裸に近い状態だったそうです」

 

 「その人は、今も冒険者なのか?」

 

 「いえ、その手記を売ったお金で宿屋を経営してるそうです」

日記みたいな物って売れるんだ。


 「いくらで売ったんだ?」


 「大体100金貨ぐらいだと、妹は言ってましたね」

やべぇ、お金の価値分からねぇ。あとでアズラックに聞くか。


 「ってことは、不帰のダンジョンとノーザンダンジョンと繫がっているのか?」


 「いえ、それはあり得ません。その後の報告で繫がってる問い報告はありませんし、実際見てきましたから」

気になって見に行ったのか。


 「このダンジョンに入るのは神器アーティファクトが必要なのか?」

クレスに聞いていた。


 「ええ、そうしなければ、入口すら開きませんので」

そうクレスは回答した。


 「中から開けられるのでは?」

そう、俺は疑問に思った。


 「入った入口からは、誰一人、帰ってきたことが、一度も無いそうです」

なるほどね。


 「あとですね、そのダンジョンに入るには、神器を収めるエリアがあるのです」

なるほど、収めるエリアが……………ん!?


 「どうゆうことだ? まさか…………!」

まさかな・・‥そんなことは無いと信じたいが。


 「お察しの通り、神器がカギになって開くので、そのまま不帰のダンジョンに吸収されます」

な、なんだって――! やっぱりそうなのか。


――つまり、俺を利用しようとしているって事で謝るのはその為か。納得だわ。



 ……………そういえば、あの幼女こんなこと言ってたっけ?


【3つ目は能力付与のアクセサリーね】

【元居る世界から、こちらに送り込む人によって、必要な能力が違うのよね~】

【ただし、24時間以上手元から離れると、それ以上付与することができなくなるので注意してね】

【不正利用防止ってことで納得してね~。一度でも付与したら手元から離れても、無効には、ならないから安心してね~】




 ――――こうなることを予想していたのか、あの幼女、食えん奴だったな。





…………待てよ、そんな危ないダンジョン、俺行く必要なくね?


「なぁ、その扉を開けたら、俺中に入るの危険だから、待っててもいいんだけど?」

俺がこういう。


 「ダメに決まってるでしょ!? 何考えてるの!」

 「くうとくんなら言うと思ったけど、それはダメだよぉ」

 「しかし、あんちゃん…………お人好し過ぎないか?」

 「クウトさん! 僕がそんな外道な事をすると思ってるんですか!?」

4人からの総批判の攻撃をまともに受けることになった。


 「あのね、クウト。私は絶対そんなことさせないから!」

特にエリナから強い拒否をされてしまった。なぜかエリナが涙目になってるし。


 「ああ、わかったよ」

とりあえず了解しておく。これは何かあるな。

まあ、この話題は機会があれば、そのうち聞くとして今はダンジョンの事だな。



 「そうそう、よくRPGなんかのゲームだと、宝が落ちてたりするんだけど、どういった原理何だろうな?」

話題逸らしの為に俺がこういうと、エリナ以外の人たちの顔は(?ω?)って顔になってた。


 「そうね、このダンジョンに限らず、ダンジョンの構造上魔力が溜まりやすいのよ。そこに存在する物に魔力を吸収するのよ。 魔力が結晶化したものがアイテムになったり、コアになったりする。様々な化学反応を起こして神器になる説が有力だわ」

と、エリナが補足してくれる。なるほど、なんとなくわかった気がした。さすが転移者。ってかエリナ、ゲームで通じるのか。


 「クウトさんが言う、あーるぴ-じーのげーむ? ってのと、エリナさんがいう化学反応? ってよく分かりませんが、冒険者が落とした武具が魔道具になったり、結晶になった物がダンジョンコアになるのは有名な話ですね」

そりゃあ、この世界の人にゲームとか、化学反応って言われても、流石に理解は出来ないだろ。


 「そして、帰らずのダンジョンに入るのは、神器が必要なのです」

そう言ってクレスが締めくくる。





 ――不可解な話である。


神器を得るために、神器が必要とか。

まさに鶏が先か卵が先か、である。



 「昔はねぇ、その辺のダンジョンでも神器が産出されていた、らしいよぉ」

果物を口にしていたアリーシャが口を開く。珍しくおとなしくしてたな。

――つまりだ、採り尽くされたわけだ。


 「ええ、僕も数年間様々なダンジョンを渡り歩きましたが、成果はありませんでした」

そう簡単に問屋は卸さないってわけか。



 ――しかし、そこまでしていく価値はあるのだろうか? ――なぜそこまでしていく必要がある?

 クレスは、イーストウッドを奪還するのが目的って言ってなかったか?これも聞いてみよう。


 「そういえば、クレスはイーストウッド国の奪還を目指して居るのに、そっちは先にしなくてもいいのか?」

そう聞くと、クレスは顔をゆがめ、語りだす。


 「そうしたい! そうすべき! いや………そうしなければいけない! …………ですが、戦力が足りません………」

そう言うとクレスの顔に影を落とす。





 ――――そして、今まで傍観していたアズラックが語りだす。


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