街中での出来事


////////////////////////////////////////////////////////////////////////


  あらすじ:悠斗との会話で


////////////////////////////////////////////////////////////////////////




  とりあえず悠斗から逃げる。これは決定事項だ。


 ――その前にまず、確かめたいことがあった。



  それはそう、一つ気になることがあるからだ。




 悠斗は、なぜ街のど真ん中で叫んでいたのだろうか?



 「悠斗は、あんなところでなにしてたんだ?」

そう訊ねると、勇者のパーティに勧誘していたのだと。



 勧誘相手は女性だったそうだが、俺と悠斗が話しているうちにどこかへ姿を隠していた。



 ――うまく逃げたな。



 よく見ると悠斗のパーティは美女ぞろい、というか女しかいない。見た目は実に華やかだ。



 つまりあれか、ハーレムパーティというのをしてみたくて片っ端から声をかけているのか。実に悠斗らしいな。



 そんでもって、今いるのは過去にそんな勧誘に乗ってパーティを組んだ人たちってとこだろう。こいつにホイホイついていくあたり、頭がお花畑な人は世界問わずそれなりにいるようだ。




しかも後ろでは


 「私のほうが悠斗様にふさわしい!」

とか


 「悠斗様は私が居ればいいのに何で他の子に声かけるのよ!」

とか、ブーブー言ってる。




 そりゃあ、まあ気持ちはわかる。ご愁傷さまといったところだ。





 「皇帝が探してたぜええええ、姫奈も心配するだろうし、俺らは一緒にいるべきだあああああ」

ああ、今聞かれたくない質問トップ3に入る質問がきた。


 ――しかしもう、いちいちこいつは煩いな。



 「それはだな、、、」

おや? きっぱり断ろうとしたら、姿が見えない。




  俺の後ろで様子を窺っていたエリナを勧誘ナンパしているじゃないか。



  こいついつの間に移動したんだ!動きが見えなかったぞ?



 「とても美しいお嬢さん、初めまして。僕は悠斗。いずれ勇者になる男でえええええす。お名前聞かせて下さあああああい」

おいおい、俺は無視かよ!



 「エリナと言います。あなたも異世界の方なんですね・・・。」

そう答えるエリナになぜか殺気が漂っている。



 「エリナさん、僕のところで一緒に冒険を・・ふべぇ!」

気が付いたらアリーシャが、悠斗に大剣の鞘ごと叩きつけていた。



 「何ぃこの人、うっとうしい!」

理由はそれだけだった。

アリーシャ、ナイスですぞ!と心のなかで誉めておく。




 確かにうっとうしいのは間違いないが、ただな、何でも暴力に訴えかけるのはどうかと思うんだ。確かに、悠斗の自業自得だから何も言わない。つぶれたカエルみたいになってても仕方ない。仕方ないんだよ。




 あ、カエルがこっち向いた。訓練の成果か、鎧のおかげか、意外とタフなカエルだ。



 「今の一撃・・・素晴らしい! あなたは僕の女神だ! あなたも一緒に・・・ぐはぁ!」

まるで土下座のような体勢から懇願する悠斗の顎に、アリーシャの蹴りが炸裂する。容赦ねぇな。




 いくら異世界人が急成長し強くなると言っても、わずか一週間ではそこまで強くはなれない。



 それに比べてアリーシャは現役バリバリの冒険者だ。積み上げたモノが違う。




 これだけの折檻されてもなお、諦めない悠斗と、エリナ、アリーシャの3人で口論が始まった。



 悠斗はもっぱら必死に、というか愚直に勧誘してたが、アリーシャが再び鞘ごとの一撃を加える。殴られた悠斗がなんだか嬉しそうに見えるのは気のせいだよね?





 「あんちゃん、ちょっとまずいぜ」

 「そうですね、早く撤退しないといけません」

アズラックとクレスがどこかを見つめながら話しかけてくる。




 ――ん? どうゆうことだ?



 何かまずいことでも起こるのか?




 二人の視線を追うと、遠くに砂煙が巻き起こっている。

何かが近づいてくるようだ。




 茶番中のエリナとアリーシャも放置できない。事態の詳細はわからないが、とにかくその場を撤退する事にした。



 エリナに声をかけようとしたところ、彼女も異変に気が付いたようで、逆に俺の腕をつかんで逃げるように引っ張っていく。



 アリーシャには知らせないでいいのかと聞くと、大丈夫という事。



 「アリーシャは私が連れていきますので大丈夫です」

クレスはそう答えた。どうやらアリーシャは、悠斗の気を引いてくれるらしい。



 クレスがそう言ってたので任せることにした。男として悔しいが、俺たちのパーティで真っ先に守られるべき存在は俺だってことは、この一週間で身に沁みている。


 俺はまだ弱い。あの砂煙がどうヤバいのかわからない程に経験も無い。 自分が情けなくて、無意識に唇を噛んでいた。 エリナはそんな俺に気が付き表情を緩めると、俺の手首から手を放し、改めて差し出してきた。俺は小さく頷いてその手をとると、横に並んで走り出す。剣だこの頼もしい、とても温かい手を握りしめ。




 アズラックとエレナと3人でとにかくこの場から逃げることにした。先頭を走るアズラックはこちらを見てはいないだろう。たぶん。




 ――俺たちは走り始めた。どこに行くかもわからない目的地に向かって。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る