第28話 文化祭を楽しむために
各クラスでそれぞれ文化祭の出し物を話し合い、仮決定した数日後、ようやく生徒会から全クラスへと許可が下りた。
今年はクラスでの被りがそこまで多くは無かったらしくもめることも無かったようだが、あまりにも被る内容の出し物が多かった場合にはクラスの代表が集まって話し合いをすることになっていたらしい。
とりあえず、今年は平和に終わることが出来たようでどのクラスもそれぞれ希望が通った形になった。
そして、各クラス何をするのか決まったところでようやく生徒会から文化祭、体育祭に関しての資料が全校生徒へと配られた。
これは、まだ各クラスの出し物が記載されていなかったり、どこをどのクラスが利用するのかなど、完成はしていないままの、注意事項やクラス以外でも何か活動をするの場合のための必要事項などが描かれていた。
「という事で、バンドをやらないか?」
資料が渡された日の放課後、弓道部の部室では聡が部活の仲間たちに声を掛けていた。
聡の主張は、折角の高校生活、何か思い出になることをしたい、という事で、それに部活の仲間を誘ってきたのは良いのだが、誰から見ても分かりやすいほどにその真意が伝わってきていた。
モテたい、と。
別に、誰もそれを悪いとは思わないけれど、あまりにもモテたいと表に出過ぎていて、特に女子は聡から離れていっていた。
そんなことに気付かずに聡は駆に近付いて小声で話しかけていた。
そして何やら話はまとまったのか駆の元を離れると、次は修哉の元へとやって来た。
「修哉も一緒にやろうぜ! ヴォーカルは俺が貰うけどな!」
「いや、それは良いんだけどさ、俺、音楽的な才能皆無だから、やるつもりないぞ?」
「そんなの、練習次第で何とでもなるだろ! 修哉なら頭いいし出来るって」
「いや、無理無理。リコーダーですらまともに吹けたこと無いし、今からやっても間に合わないって」
「それは根性だ! お前はモテたくないのか! 彼女が欲しくないのか!?」
「いや、別に……。恋愛とか分かんないし、今は彼女が欲しいとか思わないな。……それに、あっちに是非とも誘ってほしそうなやつらいるじゃんか。あいつら誘えばいいんじゃないか?」
修哉の指さす方には、自分から声を掛けに来ようとはしていないものの、こちらを伺っているだろう雰囲気の響と雅史、健が誘ってほしそうにしていた。
「確かに……。もういい、俺ら五人でバンドやって、皆の注目を浴びてやる! 後から入れて欲しいって言ってももう遅いからな!」
そうして、捨て台詞を吐いて聡は三人の元へと向かっていったのだった。
聡たちがバンドで何をやるのか話していると、部活を始める時間になっていた。
部長が声を掛けて、全員が集まると、いつもとは違ってそのまま練習を始めずに何やら話し始めた。
「どのクラスもおそらく文化祭での出し物が決まっていると思う。我等弓道部は特に何か出し物だったりはすることは無いんだが、しっかりと文化祭の資料を読んだ奴は知っていると思うが、文化祭でうちの高校はミスコン、ミスタコンがある。生徒会から、盛り上げるためにも各部活から最低一人ずつ参加するように言われていて、それを弓道部では一年生から出てもらっているんだが、出たいやつはいるか?」
……もちろん、誰も手を上げるものなどいない。
それだけ自分に自信をもっているのならとっくに恋人なりが出来ているだろうし、出来ているのなら出ようとも思わないのだから。
「んー、やっぱいないか……。ちなみに、うちの高校では女装、男装して参加なんだけど……」
しかし、続けて部長から話された言葉を聞いて、一年生が一斉に修哉に顔を向けて来た。
あまりに息の合った動きに修哉はついビクッと反応してしまったところで、駆が口を開いた。
「部長! それなら修哉にやらせるといいと思います! 優勝狙えますよ!」
すると、他の一年生たちも口々に似合ってただの可愛いだの言い始めた。
「ちょっと待て、やるって言ってない、いやその前に何で全員知ってる!?」
「そんなの当然俺らが見せたに決まってるだろ?」
修哉の叫びを聞いて、聡が当然だとでも言うように言うと、駆も頷いており、愛莉と友里は少し修哉から顔を背けていた。
それをみて全てを察した修哉は項垂れてしまった。
「まあ、とりあえず男は修哉に決定で、女子は誰が出る? 立候補が無いなら、女子でじゃんけんして一番負けた奴が決定でいいか?」
いつの間にか部長の中でも修哉に決まっていたことにもはや言い返す気力もなく、修哉は受け入れるのだった。
ちなみに、女子はじゃんけんに負けた結果、茜が参加することになった。
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