あみいちこゆき!
二ノ瀬美亜
1☆蟻の行列が大量にいい!
ジリジリと容赦無く、真夏の太陽がアスファルトを灼き尽くす。頭が駄目になる暑さの中、雪見高等学校南棟一階、教室の扉に『なんでもお助け隊』と貼られた部室では、今日も今日とてこの様な会話が繰り広げられていた。
「あー暑い〜、アイス食べたいアイス。今何度〜」
部室のソファの背もたれに頭を預けて、ぐだぁ、と夏バテのご様子なのは、那須田亜実。高校二年生。『お助け隊』リーダー。ツインテールがよく似合う。気が強く男勝り。
「アイス買ってきてくれ。三十七度」
椅子に座りうちわをパタパタさせながら、上体を仰け反らせて、こちらも亜実と同様夏バテ状態の、永倉壱。高校二年生。両耳にはシルバーピアス。女の子にモテる。が、何故か誰とも付き合わない。
「亜実さん、壱くん。氷でも食べますか?」
二人を尻目にひとり涼しい顔をしているのは、仲原小雪。高校一年生。仲原グループの社長令嬢にして亜実と壱の妹的存在。
「えっ氷あんの? もらうわ」
「あたしも〜」
小雪が、部室に備え付けられている冷蔵庫から氷を取り出す。
と、亜実が何かに気付く。小雪が持っている氷が入ったアイストレーの端。ウヨウヨと、そしてモゾモゾと動く小さな黒いそれは──。
「ギャアアア! 小雪ん! 蟻! 蟻の行列が大量にいい!」
「まあ、大変ですわ」
「なんで氷に蟻があぁアあ⁉」
虫が苦手な壱は叫ぶというより喚き散らしながら暴れるだけ。
「普通に凍らせて食べるより美味しいかと思いまして、蜂蜜とガムシロップを加えてみたのですが」
亜実と壱は心の中で鋭いツッコミをいれる。
「加えてみたのですが」じゃナイヨ!! 何してくれてんだ!
「いくら小雪でも許さねーぞォォォ!」
『お助け隊』の部室は、ギャアアアと、一瞬にして狂乱の渦になったのであった。
「いやあああ!」
「こっち飛ばすな亜実ー!」
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