第壱章 いじめといじめといじめといじめ

第一話 関係

 「ごめんなさい」という言葉を私は今、何回、いや何十回、何百回繰り返したのだろう。

 でも私が弱いからあの子を助けられなかった。私にもっと力があれば、そう何度も思ってしまう。……時間が戻ってくれないかと何度も思ってしまう。しかしここはファンタジーな世界じゃない。現実世界。そんな不思議な力なんて存在しない。この世界は屁理屈と嘘と憎悪とかで出来ている。

 自暴自棄。彼女の目はもう死んでいて、部屋に飾ってあった写真は全てビリビリに破かれていた。そして、その彼女の手には丈夫なロープを持ち、啜り泣きをしながら、ある場所に向かうのだった。

・・・

「え、いじめが原因で自殺。どうやったらいじめって無くなるのかね?」

「無くなるわけがないですよ。人は弱い人をいじめないと自分の存在意義を見出せない人ばっかりなんですか」

「まぁ、それもそうなんだけどさ」

「仕方がないんですよ。それに今回ばかりは私にも原因がありますし……」

「へー」

「原因を訊いてこないんですか?」

「訊いたところで俺に何のメリットもないからね」

「そうですか」


 そう言って、幽霊の女性は出されていた麦茶を飲んだ。

 アセアンは麦茶に牛乳を入れた。すると、


「幽霊が怨念を込めてつくった麦茶に手を加えるなんて、最低!」


 幽霊の女性は噴き出した。花子が咄嗟に、


「大丈夫よ、あなたのは愛情100%だから」

「そ、そうですか」


 幽霊の女性は台拭きで噴き出した麦茶を拭いた。

 アセアンは、


「まだ、怒ってるの?」

「え、何が?」


 花子の額に血管は浮き出ていた。そして、明らかに怒った口調である。


「あ、あの花子さん、何でもするので許してもらえませんか?」

「……なんでもするって言ったわね」

「あ、いや、これは言葉のあやと言いますか」

「なら、明日デートするね、はい決まり」

「え、いきなりじゃ」

「何でもするって言ったよね」

「あ、はい、わ、わかりました」

「それとね、私以外の子の裸を見ちゃダメ!もし見たら」

「もし見たら?」

「永遠に一緒にいてもらうわ」

「え、それは俺にとって喜び何ですけど」

「そうよね。あなたがもし逃げたりとか浮気、不倫をしたら両手両足を切り落として逃げられないようにして」

「こ、怖い」

「私がこんな行動をしてしまうのは仕方が無いことなのよ、愛ゆえに」

「これをヤンデレって言うのかね?」

「知らないわよ、そんなの」

「ですよね」


 アセアンはミルク茶を飲むのだった。そして、


「花子さんは俺が永遠に幸せにしてあげたい」


 というも、花子さんは、


「今さっきまで犯罪行為をしていたセリフじゃないわね」


 アセアンは一気飲みをして、花子さんに向け土下座をした。


「まことにすみませんでした」


 と答えた。それを見た幽霊の女性、楠木 胡桃(くすのき くるみ)はこの状況を見て、


「男って幽霊でもバカばっかりなんですね」


 と言った。花子はそれを聞いて、


「だからこうして調教をしているのよ」


 と花子は土下座をするアセアンの頭を踏みつけていた。そして、花子が「ありがとうございますは?」と言うので、アセアンは「ありがとうございまーーーーーす!」と言う。

 それを見た胡桃は笑い、それにつられて花子も笑う。

 そして、二人は趣味の話や、好きな事など会話をしながら校舎内を歩くのだった。

 アセアンは二度と更衣室に行くのをやめようと心の奥の奥の奥底に強く強く誓うのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る