第14話 リング

「なぜ、いつも獣魔を倒したあとにコウタロウ君の体に獣魔達の力が委譲されていくの? コウタロウ君の力は強くなっていっているようだけど、体への負担も増加しているようで」ナオミはコウの体を抱えながらモンゴリーに聞いた。


「コウには君達には無い特殊な力が備わっているようだ、他の力を吸収して自分を強化する。そして戦うほど強くなっていく、ある意味私以上の力を持った魔女になりうる存在かもしれない」モンゴリーは傍らに座りながら呟く。コウの使い魔はナオミの後ろに隠れるように姿を隠した。なぜか怯えているようにナオミの目には映った。


「ナオミさん、貴方に新しい力をあげるわ。サイコキネシスだけではあなたの体への負担が大きいようだわ。 これを使いなさい」エリザは手甲を放り投げてきた。


「エリザ?!」モンゴリーの目が厳しい形に変わった。


「いいじゃない。効率的に戦うには、皆の力のバランスも大切よ。ナオミさんの力には攻撃力が皆無だから補助してもらうのよ」


「補助?」ナオミは手甲を受け取りながら呟く。


「その手甲を装着して魔法円を描いて、その時に欲しい力を望めば力を貸してもらえるわ。ただし乱用しては駄目よ。本当に危険な時だけ使うようにしてね」エリザはウインクをした。何か意味ありげなような気がしたがその本意をナオミは読み取ることは出来なかった。

 エリザは変身を解くと、神戸 美琴の姿に戻った。


「エリザ・・・・・・あなたに話があるわ」モンゴリーが神戸の体を這い上がり肩の上に乗った。


「・・・・・・解ったわ」そう言うと、神戸達はその場から姿を消した。彼女が消えた後には一陣の風が吹いた。

 ナオミは眠るコウの顔を見た。 ナオミの胸に顔を埋めてコウは幸せそうな微笑を浮かべていた。


「もう、心配ばかりさせて・・・・・・」ナオミは呆れるようにコウの顔を覗きこんでから、安堵のため息をついた。


「お姉ちゃん! 大丈夫?!」イツミとシオリが飛び降りてきた。


「コウ君はどうなの?」シオリはナオミに抱きかかえられたコウの様子を確認した。

 コウは一仕事終えて疲れきったように眠っていた。


「大丈夫みたい。でも、また女の子のままだからお母さんを誤魔化さないといけないわ」

シオリ達は自分の意思で変身を解くことが可能である。しかし、コウだけは一度変身すると夜の十二時まで元に戻れないようである。


「お姉ちゃん、その手の飾り何?! とっても綺麗!」さきほどエリザから貰った手甲を指差してイツミがはしゃぐ。


「これは、神戸さんに貰ったの。私の新しい力だって」ナオミは手甲をイツミのほうに向けた。


「す、すごく綺麗! 私もそれ欲しい!」イツミが目をキラキラ輝かせて手甲を見つめた。


「駄目よ、魔法具にも適正があるのよ。その魔法具はナオミの観念動力に反応して作用するものだわ」シオリがイツミを嗜めるように言った。


「へぇ、シオリ姉さん詳しいのね?」ナオミはシオリの博学に驚いた。


「・・・・・・魔法に関する本を読んだ知識よ。あなた達も少しは勉強しなさい」そう言うとシオリは変身を解いて制服に戻った。ナオミとイツミも詩織に習うように変身を解除した。 愛美は直美の手甲が気になるようで何度も名残惜しそうに直美の手を見ていた。

 合いも変わらずどす黒い雲が空を覆っている。


 学校は街で発生した謎の爆発騒ぎで休校になったようだ。

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