第8話 突然のできごと

 それは二限目が終わったあと、上遠野を呼びに来た子がいた。

上遠野かとおの佑李ゆうりって、このクラス?」

 わたしはその声の方向に向くと、他のクラスの男子たちが上遠野のことを探しているように見えた。

 英梨えりちゃんがわたしの制服をチョンチョンと突っついた。

「ヤバいかも……」

「え? どういうこと?」

 わたしは教科書を抱えると、英梨ちゃんは耳打ちをしてくる。

「上遠野の小学生時代の同級生だよ。ミッチーには言ってなかったけど……上遠野と小学生のとき、クラスメイトだったんだ」

 英梨ちゃんの通っていた小学校に上遠野が転校するまでは同じところに通っていたらしい。

 どうやらいじめていたグループのリーダー格の男子たちが同じ高校に通っていて、上遠野のことに気がついて声をかけに来たようだった。

「いいけど?」

「じゃあ、いま行こうぜ! お前と話したいことがあるんだよ?」

 その男子たちはニヤニヤしながら、そのまま上遠野と共に教室を出してしまった。

 わたしは少しだけ嫌な予感がして、仕方がなかったんだ。

 そのときに三限目の授業の始まるチャイムが鳴って、席について先生の授業を始まったんだ。

 それから、上遠野が教室に戻ってくるのを待っていたけど、あまりにも時間が長すぎたんだ。

 それでちょっとびっくりしてしまった。

「英梨ちゃん……これ、長くない? 上遠野がなかなか戻ってこないし……。どうしよう」

「大丈夫だと思うけど……やたらと、外が騒がしいよね?」

 外――校舎裏からざわめきが起きていて、そのときに各クラスの教室に担任の先生がやって来た。

 その表情が硬くなっているので、その表情を見たときに教室内に緊張が走った。

「どうしたの? 先生」

「ヤバいんじゃない? 上遠野が教室からいなくなっちゃったことに関係があるかも」

 クラスのみんなが話し始めるとき、先生は席につくようにと言った。

 わたしは嫌な予感がして心臓がドキドキしている。

 先生が言ったのは驚きのことだった。

「上遠野くんがさっき、暴力を振るわれて早退しました。その犯人はまだ見つかっていませんので、情報があれば教えてください」

 その言葉を聞いたとき、信じられない気持ちでいっぱいになった。





 上遠野のけがはひどかったようで、なかなか学校に来れなかった。

 だいたい二週間ほど来れなかったんだ。

 そのときにLINEを送ってはいたけど、既読してスタンプが送られてきた。

 元気みたいで安心したけど、心配になってしまった。

 でも、しばらくして暴力を振るった相手グループのことがわかった。

 防犯カメラのある場所で事件が起こっていたので、そのグループは何度目かの暴力事件などの問題を起こしていたと聞いた。

 グループへの処分は重いものになったという。

 それからしばらくして、上遠野が教室にやって来た。

 顔にはまだアザや傷が痛々しく見えた。

 わたしは心配になっていたので、上遠野に話しかけた。

「上遠野……大丈夫?」

「え、碧峰あおみね……? うん、大丈夫」

 上遠野の表情はものすごい怯えた表情をしていて、怖いものを見るような目でクラスの子を見ている。

 そのときに彼が言った言葉にわたしは心配していたことが起きていた。

「……碧峰。クラスのみんなが怖い……」

 上遠野はわたし以外に心を閉ざしてしまったように見えた。

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