第2話 不器用な男と器用な女の原点

幼稚園では、園児が誕生日を迎えると、先生から誕生日プレゼントが渡される。年中組では先生と一緒に撮った写真に先生からのメッセージカードが写真たてに入れられている。

真一の誕生日プレゼントの松本先生からのメッセージカードには


『しんちゃんは、すなおでとてもやさしいせいかくのこですね。これからもやさしいこころで、おともだちとなかよくしてね』


と書いてあった。


優香の誕生日プレゼントの松本先生からのメッセージには


『はずかしがりやさんだけど、やさしいおともだちとなかよくしています。これからもやさしいこころで、おともだちともなかよくして、げんきなゆうかちゃんでいてね』


と書いてあった。


年長組の誕生日プレゼントは手形色紙。色紙の裏には矢沢先生のメッセージが書かれている。

真一の誕生日プレゼントの矢沢先生からのメッセージは


『いつもやさしいしんちゃん。そんなしんちゃんをみていたら、せんせいはうれしくなります。これからもやさしいこころのおにいちゃんになってね』


と書いてあった。


優香の誕生日プレゼントの矢沢先生からのメッセージは


『やさしいおともだちとなかよくしていて、あかるくなりましたね。これからもやさしいゆうかちゃんがもっとあかるいゆうかちゃんになりますように』


と書いてあった。


お遊戯の時間では絵を描いたり、色紙を使った工作をしたり、紙粘土で自画像を作ったりした。優香は工作、ものづくりは得意だった。一方の真一はというと、優香とは正反対に全く作ることが出来なかった。不器用さは今後もつづく。優香は工作は早く作るので、時間が余ったら真一の工作を見ていた。しかしあまりの不器用さにいてもたってもいられず、優香は松本先生や矢沢先生に「先生、真一くんの手伝ってもいい?」と聞く始末。

真一は優香がいないと工作が完成しなかった。優香は真一に何も言わず、微笑むだけだった。


不器用な男と器用な女のルーツである。

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