愛が重い私は、来世を誓った騎士と結ばれたい

お花見茶

愛が重い私は、来世を誓った騎士と結ばれたい

プロローグ

「姫……申し訳、ありません……。どう、やら……私はここまでのよう……です」


「いや……いや!!お願い、そんなこと言わないで!!」




 森の中、一人の男の命が尽きようとしていた。名はルディメル・セイルド。二大大国の1つシェルフィーツ王国の姫に仕える専属近衛騎士だ。そして、そのルディメルを腕に抱いているのは、ルディメルが仕える姫ミューシェン・フィオレンツァ・シェルフィールドだ。二人は神聖都市クローズにある大聖堂からの帰り、賊の襲撃に会い、ルディメルはその時に誤って負傷してしまったのだ。医者も居らず、怪我の治療も出来ず、どんどんと血が流れ出た結果、その命は尽きようとしていた。




「姫…私の夢を……聞いて、くれますか……?」


「な、何?」




 ミューシェンは、涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、ルディメルに答える。そんなミューシェンの様子に、ルディメルはフッと笑い、ミューシェンへと手を伸ばした。




「愛して、います……」


「!!」


「貴女に、出会った頃から……ずっと……貴女と結ばれることを……願って、いました……。叶わないことを…知りながら……願わずには、いられ……なかった」




 ミューシェンの頬をするりと撫でて息絶え絶えに言うルディメルに、ミューシェンは顔をさらに歪めた。




「泣かないで……ください……。これからは……誰も姫の、涙を受け止められない……んですから……」




 涙を掬うために触れた指は切なげで、ミューシェンはその手にそっと自分の手を重ねた。




「っは……私は、もう……駄目そうです……最後に、貴女の……顔を見れて……良かっ、た」






 ―――ルディメル、来世ではきっと……






 薄れゆく意識の中聞こえたその声に、ルディメルは頬を緩めた。そしてパタリと地へと落ちたその手は、もう2度と動くことはなかった。

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