22.突き進む
ちょっと調子っぱずれな感じがするけど、おれはケイドさんからも背中を押された格好になった。
察しはついていたんだけど、ケイドさんは少なくとも身分にはこだわっていない。というより、身分で判断することを相当に嫌っている感じがした。
かといって、おれが見た感じでは、大人の立場を振り回している感じでも、何か企んでいるわけでもない。
どちらかというと「こうあってほしい」を直感で言っている感じ。
あの人は第一印象よりずっと不器用なんじゃないか、という事がわかってきた。
おれのほうも、人の性格について考え過ぎか。
正直、危なくないかと思う。心配しているならいっそ着いてきちゃって引率でいいんじゃ……?そういうわけにもいかないのかな。
とにかく、カトー、ヒアリ、(それと、どんなに説得しても狩場には来そうにない)トムと狩猟をするという予定は、よっぽどのことがない限りゆるぎなくなった。
それなら、向かって突き進んでいったらいいじゃないか。
おれは一つ年を取って、16になっていたのを良いことに、アルバイトをはじめた。
自分のお金を持っていたほうが、小遣い(しかも、ケイドさんの給料から出てるってやつ)だけで暮らすよりずっと気が楽だった。ついでで体を鍛えられるし。
集中して何かをやりこむと、どこかで安心できるのもメリットだ。
だけどおれは、誰にも言っていない目的を隠している。
バイトも狩猟も旅に出る前の土台作りのつもり……というか、これもプランの一つというか。
とどのつまりは両親がどうなったか分かれば良くて、それには二通りの道が考えられた。
つまり、IRGに入隊するか、勝手に旅に出るか。
受け身で待つのは嫌だった。
嫌だったんだけど、どうにも直接伝える気にはならない。
諦めることさえしなければ……おれはそのうち、デスゲーターなんて楽勝くらい強くなれるだろうし、そうなれば心配されないだろう。
そんな、下心みたいなものを伏せながら、レアキャラ部―実質、狩猟部の活動日が迫るのを待った。
それにしても、おれはこんな目的がある、というのはいいとして。
カトーなんかは、何が目的なんだろう。
ドローン開発のためって話だったけど、どうも、話が足りない気がする。
狩猟免許試験は、めちゃくちゃ脱落者が出るような、下手すると死人が出るようなものを想像していたけど、それよりはあっさりした内容なのが、あっさりとわかった。
この世界?星?ぶっちゃけよくわからないけど、ゼーラールには普通にネットとかあるのが有難すぎた。
どうも、生活に必要な人がいるので、狩猟免許の基準はゆるくなっているみたいだ。
16で取れるのって、ハードル低いような気がするんだけど、これは4つの人種のうちで、何歳で大人かっていうのをうまいこと話し合って決めたから、なんだとか。
ネットで調べたことの受け売りだけど。
自由すぎる、かえって大丈夫か……?と思わなくもないけど……。
結局のところ、勉強と体力テストの準備は真面目にやる羽目になったんだけど、裏を返せばそれだけ。
ワナ猟を含めて、ウデナガモグラを狩るのに必要そうなライセンスを取る事が出来てしまった。
おれは何となく後ろめたい感じはしつつも、大手を振って必要な武器もかき集めることができた。
武器店で店主のオヤジと相談して気づいたことは、ロングソードはまったく流行りではないし、目的にはあっていないという事だ。そりゃそうか、と思うけど。
そのかわりに手に入れたのが、ボルト発射の罠と、かなりリーチのある、スタンガンが先についたロッドだった。いわく、扱いに慣れるまでが難しいけど、しぶとい生き物にはよく効くとか……。
あんまり格好が良くなく、やたら長い警棒にしか見えないロッドは、手に持つとずしりと重かった。電源を入れなくても、振り回せば勢いが出そうだ。
ああ、物騒だなぁ。その割にはなんかハイになるな。
今更ながらそんなことを噛み締めた。
一番の計算違いは、あの超能力みたいなのが出ないらしい、という事だけど、おれにはそれはどうしたらいいのかさっぱり分からなかった。
どうやら似たような事ができる人はこの世にいないんじゃないか。そう思うとうかつにばらせないような気がするので、これで良かったのかもしれない。
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