マイナーアニソン友の会 -クラストップのお嬢様と、マイナーアニソンがきっかけでお友達になった私-

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

第一章 発足、マイナーソング友の会

「邪魔はさせない:F(エフ) ED」 一生カラオケに入らない、マイナーアニソンなのでわ⁉

 ない。


 カラオケボックスで、私はひとりごちた。

 もはや、この店に来た理由さえ失っている。




『邪魔はさせない:蛎崎弘かきざきひろし


 傍若無人な田舎者がF1レーサーを目指すアニメ『F-エフ-』の主題歌である。


 しかし、ない。


 マイナーアニソンをこよなく愛する身として、友達と分かり合えないのはツラい。オタ同士でさえ、相互理解に欠ける。オタ同士だからこそ、なおさらメジャーに走るのかも知れないが。

 

 だから、ヒトカラでマイナーアニソンを歌うのが日課になってしまった。


 それでも、歌いたい曲は入っていなかった。



『邪魔はさせない』というタイトルのアニソンは、あることはある。

 だが、『スレイヤーズNEXT』のエンディングなのだ。


 確かに名作であり、名曲だ。


 しかし、私がほしいのはそれじゃない!



「もはや、一生カラオケに入らない、マイナーアニソンなのでわ⁉」


 ん?


 私と同じ叫びが、となりのボックスから聞こえたぞ。




 ドリンクバーへ向かうふりをして、隣のブースを覗く。


 黒髪ストレートの女子が、カラオケ店のタブレットをコンコンとペンで叩きながらうなだれていた。



 唱子さんも、『邪魔させない』のページを見てる!


 同じ制服を来ている。しかもあの子、私のクラスメイトじゃん!


 高山たかやま 唱子しょうこさんは、我が校で最も美しいと言われている。


 窓越しに、女子が私と目があった。


 本能が、瞬時に反応する。



大島おおしまさんよね?」

 しかし、女子が窓に張り付くほうが早かった。



「あなたも、マイナーアニソンはお好き?」

 フーフーと鼻息を荒くしながら、女子が唇を動かす。


 唱子さん、学校一のお嬢様と言われているのに。


 思わず、うなずいてしまった。


「いらして。相部屋にしてもらうから」

「いいの?」

「店長と知り合いですから」



 あなた「も」、か。

 ようやく、理解し合える友を見つけた気がした。




 本当に、相部屋になってしまった。


 二人でドリンクバーのジュースを取りに行き、改めて自己紹介をする。


「学校以外でお話するのは、初めてね。高山たかやま 唱子しょうこです」


「お、大島おおしま 優歌ゆうかです。本当によかったの? お店にご迷惑がかかるなら」


「緊張なさらないで。店長が父と知り合いですの。あなたのお部屋代を負担することで、お話をつけましたわ。空いているのも幸いしましたわね」



 そっか。お嬢様だもんね。


「って⁉ そんな。悪いよ!」


「お気づかいなさらないで。それより、お友達になってくださいまし」


「それは、いいけど」


「ありがとうございます! わたくし、マイナーアニソンを語り合う友垣を探していましたの!」


 手をパンと叩き、唱子さんはニコリと笑った。


「でも、いいの? お金返すから」

「いえいえ。お近づきの印として、これくらいは」


「ありがとう、高山さん」

「唱子でよくてよ。優歌さん」


 随分とフレンドリーだ。同士を見つけたのが、よほど嬉しかったのだろう。


 二人、ソフトドリンクで乾杯をする。

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