第25話 報復者の剣

 前回までのあらすじ!!

 妹である葵ちゃんの仇をとるべく、天音は一人でアルフレッドとクマBの敵2体に立ち向かうのだと言う。チュートリアルの途中でしかもLv1の天音に対し、相手のアルフレッドはLv98と、もはやカンスト寸前。しかし圧倒的な戦力差……これではもはや『戦闘』とは言えないだろう。

 他人から見れば「何故そんな無謀な戦いを挑むんだ?」と問うだろうが……そんなのは言うまでもない! 妹の葵ちゃんの仇をただ取る為だけだっ!! 

 そう天音は決意して『魔王』でさえ、一撃で倒したという『伝説の剣』を手にするのだった。だがその『伝説の剣』とやらには『呪い』がかけられているのだという……。



「さすが、今作最大のシリアスな場面なだけに『前回のあらすじ』も特別に長いったらありゃしねぇよ!」


 誰に言うでもなく、そう感想をもらしてしまう。


「まぁ、ぶっちゃけ『前回のあらすじ』はコンテストの文字数稼ぎと、アニメ化した際の原画節約コストカット対策でもありますしね♪」


 何かオレの隣で、静音さんが制作秘話を平然とくっちゃべっていやがるぞ! 静音さん……それはあまりにもぶっちゃけすぎだぞ。マジで今に作者からクレーム来んぞ!!

 だが、無常にも作者からのクレームの電話は鳴らなかった。


 ええいっ作者のヤツめ! こんな時くらい仕事しろってんだ!! 静音さんの暴走を止められるのはヤツしかいないのに! 最近やたらとRPGっぽかったり、シリアスな展開にしてきたなぁ~♪ っと感心していたのだが、これではオレが褒めたくても褒められんぞ!!

 そうこうする内に、天音とアルフレッドのおっさんとの戦闘が今まさに始まろうとしていた! 天音は左腰にぶら下げていた『伝説の剣』を鞘から、ゆっくりと引き抜いた。


 その剣は天音の髪と同じ鮮やかな赤色……ではなく、全体的にやや赤黒い色をしていたのだ。


 バチッバチッバチッ! 天音が鞘から剣を抜くと同時に何やら電気のようなモノが剣全体を走るように強烈に流れ出し、そして発火した。それは剣身部ブレイドに炎として纏わりついた。さながら『伝説の聖剣』とは対称に、『魔法剣』もしくは魔人が持つといわれる『魔剣』にも見えてしまう。それは剣全体の赤黒さと何より静音さんが言っていた『呪い』という言葉によって、その印象をより強くしてしまう。


「静音さん、あの剣には名前あるのか? 例えば聖剣を意味する『エクスカリバー』とかさ」

「え゛……な、名前ですか…………お知りになりたいのですか?」


 何故か静音さんはオレの素朴な問いに言葉を濁していた。


「いやあれってさ、呪いがあっても一応は『伝説の剣』なわけなんでしょ? だったら名前くらいはあるよね? ほらよく、RPGのゲームで『ラグナロク!』とかカッコイイ剣の名前が出てくるよね?」

「…………え~っと、あの剣の名は確か…………『ニンジン』かな?」


 静音さんがようやく絞り出した解答がそれだった。


「……あのさ、それってあの工事現場とかで、よく誘導するおっさんが振ってる赤い棒・・・のことなんじゃ……」

「いやいやいや、今のなしなしなし!! す、少しだけ待って下さいね! 今から・・・真剣に考えますから……」


 ほっ、良かったぜぇ~っ。なんせニンジンなんて言うからさ、農夫のおっさんの『夜のおかずのニンジン』を再利用リサイクルしているのかと勘違いしちまったぜ!

※詳しくは第22話を参照のこと。


 そして「うーん、うーん」などと腕を組み唸りながら考える静音さん。


「うーん……『デュランダル』? いやいや炎なんだから『レーヴァテイン』? ……は安直すぎますかね。でも鍔つばガード形は似てるしなぁ~。あとは神剣『シーラスティン』とかになっちゃうもん。色が赤黒いから『バルムンク』? あ~っ、でもそれだと魔剣になっちゃうし……」


 真剣マジで静音さんが、それっぽい名前をただいま考えてらっしゃる。そのうち安易に『パー系』とかパチリ的な名前言い出すんじゃないだろうなぁ?

 そんなオレの心配をよそに、静音さんがどうやら剣の名前を思いついたようだ……。


「うーん……っ!? フラガラッハ? そうです! 『聖剣フラガラッハ』!? それがいいです!!」


 静音さんが静かにそう呟き、やがて大声になっていた。


「そうですよ! ワタシちゃんと思い出しましたよ!! 確か……あの伝説の剣の名は『聖剣フラガラッハ 』ですよアナタ様♪」


 満面の笑みで、名前を決められたことに満足そうに静音さんが、喜びを分かち合う様にオレに詰め寄ってきた。うん、きっとそれは「思い出しました!」……ではなくて、正しくは「思いつきました!」が正解だとオレは思うんだけどなぁ。


「その『聖剣フラガラッハ』には『報復者』と言う意味があり、またその切れ味は『すべてのモノを切りすててしまう』、そしてそれと同時に『何モノにも絶対に防ぎようがないやいば』そう代々語り継がれてきた『伝説の剣』なのです! まさに今の天音お嬢様にはピッタリの相応しい剣だとは思いませんかアナタ様っ!!(ドヤッ)」


 どうやら、もっともらしい設定までも考えてくれたらしい。


 そもそも何なんだよ代々・・って? 今さっき自分で考えたんだろうがっ! どこら辺に受け継がれてきた要素あんだよ? あとさ、その「ワタシい仕事しましたよ!」的なドヤ顔はな~んかむかつくから、できれば止めて欲しいよ。


「この剣は『聖剣フラガラッハ』というのか。そうか……き名だな」


 その『フラガラッハ』を右手で持ち、空に向け掲げ天音が剣の名前を褒める。ただそれだけのことなのに、オレはそんな彼女に見惚れてしまう。それは勇者だから……とか、美少女だから……などという、そんな安い感情モノではない。

 天音のその姿はまさに、今から生死をかけて戦う戦士の姿そのものだった。


「ほらぁ~♪ やっぱりワタシには名前を付けるセンスが抜群なんですよ♪」

「……あ、うん、そうですねー」


 今静音さん自白したよね。散々「思い出した!」とか「代々」とか色々言ってたけど、今自分で「名前を付けるセンスが~」とか言っちゃってるもんね。もう全然隠す気ゼロですよね~。



 そんなセンス抜群なヤツらと共に第26話へとつづく

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