第9話 誰かの為の夢の中

「フィンさん、どうしたのでしょうか?」

「アスランを見かけたら犬の様に走っていたけど……。んー。推しを見かけた高揚感からかしら?」

「それにしは、鬼気迫るものがありましたけど?」

「確かにそうね」


 一体どうしたのか。

 しかし、それはアスランも同じだ。

 あんなにもあからさまに逃げられたら、フィンじゃなくても追いかけたくもなる。

 ま、私は足遅いからしないけど。

 一体、何がそんなにもアスラの防衛本能を擽っていると言うのか。


「あの子は地図も見えるし、取り敢えず当初の予定通り私達だけで図書館に行きましょうか」

「はい」


 取り敢えず、フィンには帰ってきてから聞いてみるか。

 私とセーラはそのまま図書館に向かい、中でセーラは勉強卓へ。私は本を見に別れた。

 しかし、だ。


「太宰治に、芥川龍之介……。ああ、こっちは智恵子抄があるじゃない……。檸檬なんて三冊もある」


 世界観とは?

 並んでいる本を見て、思わず疑問を持ってしまうが、それこそフィンの言うように日本のゲームだ。

 日本の文学史に名を残す名作があっても致し方がないのか?


「あー。地獄変があるじゃない……。懐かしいな。高校生の時に授業でやったなぁ」


 思わず、懐かしの本を手に取ってしまう。

 いい思い出なんて一つもない学生時代だが、多少の思い出ぐらいならある。

 勿論、こんな風に授業関連についてが殆どだが。


「そりゃ、日本語で書かれてるよね……」


 パラパラとページを捲れば声が上がる。

 それはそうだ。表紙も日本語なんだし、中身も日本語だろうに。

 ゲームの中だと言うのに、本を開けば懐かしい本の香りがする。

 そう言えば、最近は本を読む機会がめっきりと減ってしまったな。

 時間が無いわけではないのだが、何だか手が伸びなくて。


「あれだけ、本が好きだったのに……」


 本に注ぎ込んでいた金は、殆どが服や化粧、美容院代に消えている。

 変わって、しまったのだろうか?

 昔私が嫌悪していた女に、自分が変わってしまったのだろうか?

 それは、誰が悪いんだろう。

 ランティス?

 それとも、私?


「あ、人間失格だ」


 まるで、今の私のような題名。

 惹かれるように手を差し伸ばすと、誰かの手と当たってしまう。


「あ、ごめんな……」


 誰かも借りようとしているのだろうか。

 こんな日本文学を。

 そう思って手を離そうとした瞬間、私の手が掴まれた。


「えっ?」

「ローラっ!」


 驚きのあまり、声が出ると名前を呼ばれる。

 この声は……。


「お、王子……?」


 今日の授業に顔を出さなかった王子が、私の隣に立っているではないか。

 あの手の主は、この男かっ!


「な、何用ですかっ」


 思わず、手を振り払う。

 何故王子がこんな所に?

 図書館で王子に会う事はゲーム上なかった筈だ。

 それに加えて、この男は図書館の使用回数で変わるステータスもない。

 何だ?

 また、新手のバグが起きてると言うのか?


「す、すまない。痛かったか?」

「え……、いえ、痛くはないですが……」


 何を普通に会話を?

 ローラを嫌っている設定はどこに行った?


「すまない。不躾な事をしてしまった……」

「……え、ええ。分かって頂けたらいいのです」


 随分と気持ちが悪くなるほどのしおらしさじゃないか。

 何というか、調子が狂うな。

 いつもならば、罵倒は当たり前だというのに。

 罵倒一つ出てこないとなると、身構えていた自分が馬鹿のように感じてしまう。

 剰え、此方が悪者の様な気さえしてくるじゃないか。

 余り、衛生上宜しくないこの場面。

 逃げるが勝ちだな。

 ここはセーラに早々と合流するのが正解だろう。


「では、私はこれで。失礼致します」


 そうと決まれば、早々に退場するのが吉だ。

 無駄に話を長引かせるのは愚の骨頂。

 さっさと回れ右が正しい。


「あ、待ってくれっ! ローラっ!」


 待てと言われて待つという馬鹿がいるか。

 どれ程大きな声で言われても、聞こえなかったフリをして私は頑なに王子に背を向ける。

 何か本当に用があったかもしれないが、その用に私が答える義理はない。

 私は王子を振り切り、足を前に進めよとする。

 そう、この時までは


「君の左腕は、無事なのか……っ?」

「……は?」


 あ?

 おい。

 ちょっと待てよ。

 私は足を止めて、後ろを振り返る。


「その左腕は、君の本当の腕なのか……?」


 何で……。

 何で?


「あの時斬り落とされたのは、嘘なのか?」

「っ!」


 私は王子の襟を掴み上げる。


「おい、お前……、誰だ?」


 何故、知っている?

 何故、それを知っている?

 私の左腕が切り落とされた事を、何故知っている?


「お前、何故私の左腕がギヌスに斬り落とされた事を知ってんだ? ギヌスも居ない、ゲームの中だぞ? 誰にそれを聞いた? いつ、その知識を設定された? 誰にだ。セーラか? それとも、ランティスか、タクトか?」


 少なくとも、ローラはこのゲームでは何方の腕も斬り落とされる描写はない。

 お前が知るには過ぎる知識だ。


「……矢張り」


 私が睨み付けていると、王子がポツリと呟き私の手を取る。

 は? 何のつもりだ?


「お前、何を……」

「ランティスも、ギヌスも君は知っている。矢張り、君はローラなんだね?」

「……あ?」


 ランティスもギヌスも?


「ああ、良かった! 起きたらこのおかしな学園に飛ばされていて、君を見つけた時、もしやと思ったんだ!」


 ちょっと、待て。

 おい。

 こいつ、今、起きたらこのおかしな学園に飛ばされてって言わなかったか?

 いや、確かにおかしな学園だよ。

 和洋折衷どころでは無い。未来も過去も国も何もかもが混じった世界だ。

 正真正銘おかしな学園だろうよ。

 でも、何故それがおかしいとこいつは思える?

 それには、基準が必要となる。

 その基準なんて、お前にはこのゲームの中にしかない筈じゃないのか?

 いや、それよりも、起きたらと、こいつは言わなかったか?

 起きたら、ここにいた?

 それは……。


「君がまた僕に会いに来てくれたという事。あの塔で、君は死んでなかったんだ……っ!」


 王子が私を抱きしめる。

 塔……?

 今、この目の前の男は、塔で私が死んだと言わなかったか?


「お帰り、ローラ。僕は、ずっと、君を待っていたんだ」


 抱きしめられた肩に、暖かい滴が溢れてくる。

 おいおいおい。

 冗談はやめてくれ。

 起きたら、ここにいた。

 それは、間違い無く私と同じって事じゃ無いかっ!


「……王子」


 そして、こいつは……。






「此処まで来れば……」


 肩で息をしながら、アスランは後ろを振り返った。

 後ろには人影などない。

 どうやら、捲けたようだ。


「クソっ! 何処まで行っても化け物かよっ!」


 息も荒い中、アスランが逃げた先の裏庭で腰をつく。

 しかし、何なんだ。


「俺は、幽霊でも見ているのか……?」


 悪名高いローラ・マルティスがいると思えばその隣に……。


「フィシストラ……。あいつ、何でここに……。ここは、悪魔の腹の中か……?」


 ぐったりとしたアスランが疲れ果てて上を向いた瞬間だ。


「おいおい、これぐらいで何疲れてんだ? 久々の兄弟子との再開だろ? 泣いて喜ぶのは分かるが、逃げるとはどんな了見だ?」


 声が聞こえたと思った瞬間、三階の窓から人影が降ってくる。

 アスランは悲鳴を上げると、地面に着地した人物がアスランの襟を掴み上げた。


「久しいな、アスラン。お前が会いたがってたフィシストラ・テライノズ様だぞ? 感動の再会だろ? 喜べよ」

「……フィシストラ……?」


 そう。

 アスランの前にはフィンが立っていた。

 食堂からの追いかけっこの末、アスランは無事に逃げ延びたと思っていた様だが、外に逃げたのならば上から見たほうが早いとフィンは階段を上がって窓からアスランを探していたのだ。


「ああ。私だよ」

「お、お前っ! 死んだんじゃないのか!?」

「は? 行成何だ? 私が死んでるんなら、私と会って話してるお前も、死んだ事になるが、お前死んだのか?」

「俺は……」


 アスランはフィンを見る。


「俺は、死んだ筈だ……。あの戦争で、死んだ筈だ……。なのに、何で俺はあの学園で、あの歳に戻っているんだ……?」


 まるで、自分でもわからないとばかりに、戸惑う単語だけがアスランの口から出てくる。

 その様子を見て、フィンは大きく溜息を吐いて襟元から手を離した。


「戦争で死んだ? おいおい、随分と腑抜けた話だな。それでも、私と一緒にギヌスに稽古をつけて貰った騎士の言葉か?」

「お、俺はっ! 俺は、お前らと違って強くな……」

「強くないから死んだのか? そんな単純な事で生死が決まるのか? なら、お前は今ここでまた死ぬ事になるな」


 フィンがアスランの首に手を再び伸ばす。


「弱い奴が死ぬんだろ? お前は、私よりも弱いからな」

「……フィシストラ……?」

「今度は強くなれるといいな。親族の好で苦しまずに殺してやろう。じゃあな、アスラン」


 フィンが徐々に掴んだ指の力を強めていく。

 アスランは目を見開き、フィンを見た。

 この女、本気だっ!


「……や、やめろっ!」


 アスランはフィンの手を叩き落とすと、すぐさま起き上がり距離を取る。


「お前、お前まで俺を……っ!」


 アスランが思い描くのは、ギヌスだ。

 自分を殺そうとした実の兄。

 まさかフィン迄、その兄と同じ事を……?

 フィンは振り払われた手をじっと見ると、大きく口を開いた。

 そして、大きく笑い出したのだ。


「あははははっ! 本当なんだな、アスランっ!」

「えっ?」


 一体、どうしたのか。

 何故、フィンがこんなにも笑っているのか。

 アスランには何もわからない。


「お前、剣聖に本当になったんだな!」

「え……? え? 何で? フィシストラが、その事を……?」


 自分が剣聖になったのは、フィンとローラが死んで随分と経ってからだ。

 何故、彼女がそれを知っているのか。


「え? 海外サイト読んだから」

「か? かいが?」

「あー。そこら辺はいい。気にするな。私はローラ様と違って説明する能力がないからな。と、なると……。アスラン、お前今幾つだ?」

「今? たしか三十二だったと思うが?」

「ふーん。おじさんだな」

「お、おじっ!?」

「何だ? 違うのか?」

「いや、そうなんだが……」


 歳の差が一個違いの従兄弟にまさかおじさん呼ばわりされるとは……。


「フィシストラ」

「ん?」

「お前は……、お前は今、幾つなんだ?」

「私か? おいおい、ボケたのかよ? 私の姿を見たら分かるだろ?」

「いや、それはそうだが……」

「しかし、お前が剣聖なんて嘘かと思ったが、そうか。ギヌスの呪縛を自分で打ち破ったんだな……。やるじゃないか、私の弟弟子は」


 フィンはアスランの肩を叩く。

 アスランはそもそも弱いわけではない。

 剣技はそれなにり出来るし、力も強い。

 しかし、心が弱かった。

 誰よりも優しく、繊細で、壊れやすい。

 それを、ギヌスが利用したのだ。

 だから、彼はギヌスの命がなければ何もできなかったし、なにも考えられなかった。

 それは兄と言う正解を、ギヌスは徹底的にアスランに叩き込んでいたからだ。

 本来ならば、ギヌスにとってのアスランの使い道は主人公に必要な自分を慕う弟を用意することだった。魔王を倒しに冒険に旅立った時に、自分の名声を広げる為の引き立て役として作った木偶の坊。それがギヌスにとってのアスランであった。

 しかし、現実は非常なものだ。

 魔王なんて何処にもいない世界では、ギヌスの中でアスラの利用価値は何処にも無くなってしまった。

 違う目的で使おうにも、自分では何もできない。

 作ったのはいいが、利用価値がない。

 だからこそ、ギヌスはアスランを捨てたのだった。


「……違うんだ。俺が変われたのは、ローラの、お陰なんだ……」

「ローラ様の?」

「彼女が、俺を変えてくれた。戦士になる誇りも、人間になる誇りも、全て教えてくれた。だからこそ、剣聖迄上り詰めることが出来たんだ……」


 自分で呪縛を解き放ったわけじゃない。

 振り切れたわけじゃない。

 全ては、あの時。

 あの焼却炉の中で、己を犠牲にしてまでアスランを救おうとしたローラのお陰なのだ。

 彼女が、彼を人形から人に戻してくれた。

 彼女が、臆病者から騎士にと引き上げてくれた。

 強くもない彼女が、人として。

 あの背中を見て、変われない人間なんていない。

 生きろと叫んでくれた彼女の願いを叶えられない人間なんて、いないのだ。


「アスラン」

「ん? なん……」


 その瞬間、フィンの右フックがアスランの腹を襲う。


「が……っ!」

「お前、少々ローラ様に馴れ馴れしいぞ? 少しは弁えろ」

「く、口で、口で、言って、くれ……っ!」


 女の力だと思えないぐらいの威力に、アスランがのたうち回るが、フィンはどこ吹く風だ。


「あの方は、私の主人だからな。お前も私の弟弟子なら慎みを持って対応しろ」

「だ、だから、口で……」

「今口でも言っただろ? ほら、立て。剣聖が情けない姿を見せるもんじゃないだろ?」


 無理矢理フィンに引き摺られるように立ち上がらせると、アスランは溜息を吐く。

 この兄弟子には、何を言っても無駄なのだ。

 こいつが生まれた時からそれは十分わかっていた。


「……なあ、フィシストラ」

「何だ?」

「ここは、何処なんだ? 俺はあの貴族学校の様に見えるが、そうじゃないんだよな……?」

「あ? お前、何も知らずにここに来たのか?」

「あ、ああ。あの戦いで胸を突かれて倒れたと思ったらこの学園に来ていた。あの無くなった学園に来たのかと思ったんだが、似てるが、少し違う。フィシストラは見たところ混乱もなく、俺の事を覚えているみたいだが、何か知っているのか?」

「……まあまあ、だな。だが、悪くない。いい。質問には答えてやるよ。私はここが何処だか知ってるし、お前と過ごした記憶もある。けど、私はフィシストラ・テライノズではない」

「何を言ってるんだ? お前は……。あ、フィン、だったか? ローラがお前のことをフィンと言っていたな。家を、捨てたのか?」

「見所はいいんだが、タイミングが最悪だな。余計ややこしくなる事を思い出して。まあ、いいか。確かにフィンだが、テラノイズを捨てたフィシストラが名乗っていたフィンでも今はない」

「どう言う事だ?」


 一体、彼女は何が言いたいんだ?


「フィシストラ・テライノズは死んだんだ。ギヌスに胸を貫かれたまま、ギヌスの首を斬って死んだ。一人で、あの塔の中で、死んだよ。お前の目の前にいるのは、フィシストラ・テライノズの記憶を持ったまま違う時代に違う国で産まれた女の成れの果てだ」

「……兄貴、と?」

「いつもみたいに兄様って呼ばないのか?」

「か、揶揄うな。今、俺はとても混乱しているんだ。死んだ? 記憶が、ある? どう言う事だ……?」

「あー……。だから言っただろ? アスラン。私に説明する能力はない。アスラン、こっちに来い」


 フィンはそう言ってアスランを呼びつける。

 一体なんなのかとアスランがフィンの前に立てば、彼女は立ったアスランの服を音を立てて破り捨てた。


「だから、体で教えてやる」


 そう、楽しそうに笑って。





「ローラ? どうした? 顔色が悪いぞ?」


 顔色を良くなんて出来るわけないだろ。

 王子は私の左腕がない事を知っている。

 あの塔の戦いを知っている。

 ランティスを知っている。

 私が知っている事を、知っている。

 この世界で、知る事がない事を、知っている。

 つまりだ。

 この目の前にいる男は……。


「私の婚約者だった王子……」


 正真正銘、私の。

 ゲームの世界でもない、あの時代のあの王子と言う事。


「ああ! そうだ! 君の婚約者だっ!」


 衝撃の事実が目の前に酷く鬱陶しいな。

 落ち着いて物事を考えさせる事ぐらいさせてくれないものなのか?

 いや、そう言えば生前一回もそんな事されなかったな。

 こっちが死んでもそれは治らないわけ?

 何だが違う方面で頭が痛くなりそうなんだが。


「……訂正しますね。元婚約者の王子です」


 そして、今は他人です。


「君はあの婚約破棄をまだ気にしているのかい? あれは、学園長に仕組まれた……」

「全部知ってますが、口から出た事なので。女神の前とやらなので。取り消しはきかないのでは?」

「きくさ。愛し合う二人がこうして再び出会えたんだから……」

「やっぱり取り消し無効じゃねぇーか」


 おっと、思わず本音が。

 ごほん。


「ローラ?」

「いえ。緊張感もクソもねぇなぁと思いまして」


 あ、ダメ。口調直らない。


「ク……?」

「ご自分の事をご自分で繰り返し言わなくても結構ですよ。それよりも、貴方は私の片腕の事実を知ってらっしゃるのですよね?」

「あ、ああ。ローラ、その腕はどうしたんだい?」


 成る程。

 と言う事は、あの塔の決闘の後の王子である事は間違いなさそうだな。


「ああ、生えてきたのでお気遣いなく」

「は、生えて!? それは、まさか……」


 あ、流石に雑すぎたか?


「女神の力では……? ローラ、君は女神に認められた……」


 うわ。

 死ぬ程めんどくさい。

 このまま放置は危険だな。


「クソめんどくさい設定追加する必要はないです。王子、よくよく考えて下さいまし。ここは、王子の知る学園でもないですし、王子の知る時代でもないですよね? そして、腕の生えた私もいる。あり得ない事ばかりでしょう?」

「ああ。そうだな」

「だから、ここは夢の世界なんですよ。夢で王子が腕の生えた私を見ている。死んだ私と話してる。そう言う事です」


 だいぶ無理もあるが、王子なら信じるだろ。


「成る程……、確かに」


 ほら見ろ。


「だから、クソみたいな設定を追加していただく必要はございません。夢ですので。腕も生えます」

「成る程、腕も生えるのか」


 本当にこいつが王になってもいいのか?

 ここまで素直だと逆に心配になってくるぞ?


「ですので、起きれば終わる夢でございます。精々夢の中をお楽しみあれ。では、私はこれで」


 王子の緊張感のなさのせいで伝わってはないかもしれないが、これは由々しき事態だ。

 当たり前だろう。

 このゲームの中に、実際のあの時代の人間が混ざり込んでいるんだぞ!?

 どうなっているんだ!

 これは、ただのバグでは終わらせれない。

 まずは、どうする?

 セーラにか? いや、フィンを呼んで……。


「ローラ」


 私が考えを張り巡らしていると、王子に手を引かれる。


「……何か?」


 最重要人物の王子をこのまま野放しにするのも多少のリスクを感じるが、保護した所で……、な?


「これは、本当に夢なのか?」


 え?

 まさか、こいつ、気付いている?


「え、ええ。勿論。私はそう思いますけど……?」


 何処で気付かれたんだ?

 まさか、私の言葉で……!?


「なら……」

「なら?」

「今すぐ君を王妃に迎え入れても問題ないのだな?」


 あー……。


「問題あるわっ!」


 クソ問題ありまくりだわっ!

 今の緊張返してくれよ!





次回の更新は来週10日月曜日の12時を予定しております。


 

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