閑話006 大黒 美咲の嫉妬
先生の視点ですが、かなりの胸糞です。ご注意ください。
ザックザック……
ザックザック……
いま私は嫉妬している。
あまりの嫉妬に、子供のころに買ってもらった熊のヌイグルミの腹をナイフで切り裂いてる。危ないやつ?そんなわけないでしょ?
私は【大黒 美咲(おおぐろ みさき)】ぴっちぴちの24歳、中学校の2年の担任教師。
だって私はもう24歳で20代半ばに差し掛かろうとしているのに、男性経験はおろか彼氏だっていたことがない。中学生のころから化粧もしたし、眼鏡もやめた。
オシャレにも気を使ったし、ファンッションや今年のカラーから風水まで、ありとあらゆる努力もして、積極的に男子に話しかけていった。
だというのに、告白されたことは一度もなく、したらしたで全敗。
もう30人から先は数えるのをやめた。
こんな酷くモテない女、【喪女】がいるっていうのに……。
「……あんのアマぁあああああ!」
ザックザックザック!!!!
私の中学生の時の容姿とほぼ同じような陰キャの女がいた。あの花咲 藻子というアマは何度も告白を受けていた。
あれは私の過去、そのままだ。なのにまったく違う道を歩いている。
なんでなんでなんでなんでなんでぇ!!!!
ザック!!!!
私は教師としての矜持を持っているつもりだった。新任だったがそれなりに頑張ってきたつもりだし、実習も完璧にこなした。
だがその噂と、昔の私を見ているような錯覚におちいるあいつの容姿をみたら、そんなものは一瞬で吹き飛んだ。
きっかけは、あの時だ。
やっと仕事も慣れてきた頃に、生徒たちがしている妙な噂を聞きつけた。
「告白して、ヤったら1日でポイを繰り返すヤリ〇ンビッチ」がいる。
は?
中学1年でヤリマンビッチ?
もう私の時代とは違うのか?ジェネレーションギャップを感じた。
今時の子はそんなにも進んでいるのか?
思考回路はショート寸前だ。
こ、これは真相を確かめて、いやが……おっとお仕置きを……いや教育をしなければ!!!
だって私はまだ処女なのに、中学1年でパコパコパコパコとヤりまくってるなんて許せない!私はどのクラスのどの子のことかもわからなかったので、色々と情報を集めることにした。
つぎの時間は担当がないので、休み時間にぶらぶらと廊下を散策してみる。
「あの陰キャ、今日も告白されるらしいよっ!」
「たんのしみ~!」
そんなひそひそ話をしている女子が気になって、ゆっくり歩いて聞き耳を立てた。
「あいつ陰キャなのになんで?」
「それがねぇ~」
「あの子、小6の時に乱暴されたらしいよ」
「ら、乱暴?」
「アレよアレ……そんでよほど気持ちよかったのか、いろんな男とパコってるってさ。」
「うっわ~マジ?」
「まじまじ。あいつと同じクラスだった奴に聞いたから、間違いないって」
「アレってそんなに気持ちいの?」
「あたし知らない~」
「なんだよ、キミちゃんも処女かよ~」
「そういうアイちゃんだって~」
「まぁ告白をみて、真偽を確かめてみようじゃないの~?」
「そうそう、放課後集合だー!」
まじ?え?うっそ……無理やりされて感じて……?
なんだそいつ、変態の淫乱じゃない……?
それで複数の男子とエッチしてるの?どんだけエッチが好きなの?
おそらく最初に聞いたヤリ〇ンビッチはその子だ。
そんな派手な動きをしてる子が複数いたら、学校の問題になってしまうほど有り得ない。
よし、私もその告白イベントに参加してやろうじゃないの!
その日の放課後。
私はうきうきした気分でそれが見えるポジション取り出来る場所を探していた。
他の生徒も来て隠れるはずだから、数か所用意しておく。
そしてその位置へすぐ行くことが出来る廊下を往復して待機だ。
ん!……男女生徒がそわそわと裏庭に駆けていく行くのが見えた。
そろそろかしら。
私もその生徒のあとを追いかけて、いいところで別の場所へ隠れた。
どうやらもう主役は二人ともそろってる。
私はどんな女か見てやろうと目を凝らした。
!!!!
なん……だと……?
私はその子をみた瞬間に、感情が沸き立ち、全身の産毛が逆立つような感覚に陥った。
……そう、あれは私の過去だ。
引っ込み思案で、おでこを出すことを嫌い、前髪で目を隠す。
黒縁眼鏡もかけて完全防備状態。いわゆるコミュ障陰キャだ。
そのコミュ障陰キャとヤリ〇ンビッチのミスマッチに怒りを覚えた。
あんなブサイクでヤリ女になれるなら、なんで私は処女なの?
一方男子は……え?
なんと……学校1のイケメン君だった。え?あの子が?
入学式の時に、あまりにかっこいいイケメンだったから、私の一押しだったのに。
なぜあんな陰キャに……?
自然と私は他の生徒たちが言っていたセリフと同じことを考えていた。
ふ……ふ……ふざけるなよぉおおおお!
私は化粧も努力した!良いスタイルになるためにジムにも通った!性格も社交的になるように頑張った!なのに誰一人として私を見てくれなかった!!!!
なのになぜ?なんの可愛くなるための努力をしてないあんな陰キャが??
お、落ち着け私!そうだ呼び出したのはおそらくビッチのほうだ。
振られるにきまってる!!私はそれに期待をかけた。
仮にOKしたとしてもヤッたらポイ捨てだっけ?
そうしたらイケメン君が童貞ではなくなってしまうけど、もう成人してる大人の私はきにしない!そうむしろ捨てられた彼を私が癒してあげればいいのだ!!!
そうだこれはチャンスだ!よぅし狙うぞ~!
これが私の【レ〇ィパーフェ〇トリー】だ!!!
そして次の日。
あの陰キャは呼び出されている。もうヤッたのか?
昼食の休み時間だ。私はまた隠れて様子を見ると、なぜか後ろで隠れていた生徒も出てきて、わーわー騒いでる。
あいつはペコリとお辞儀をして立ち去った。
何があったかわからないが、本当に別れやがったようだ……。
あんのメスガキがぁ~!いたいけな中学生男子の心をぶちこわしやがって!!!
よし決めた!
何があろうとあいつをいびり、イジメて!嬲り倒して【ざまぁ】してやる!!
後日、彼を呼び出し悩み事はないか?落ち込んでる彼に相談に乗ると近づいた。そして案の定、彼は悩んでいる様子だった。
彼女と事情があって1日で別れることになったそうだ。
ん~?何か違和感があるけど、どうやらあの噂通りのようだ。
「それで?飛鳥井くん?彼女とは寝たのかしら?」
「……は?そ、そそそおんな訳ないでしょう?1日しか経ってないのに」
あれ?至極常識的な答えが返ってきた。
この反応は童貞のそれだ。間違いない。私も処女だけど。
うーん?噂は間違っていたってことになっちゃうけど、それは面白くないなぁ。まぁ嬲るネタの一つとしてぐらいは使えそうか。
「コホン。ごめんなさいね。じゃあ傷心中の飛鳥井くんは今度の休みに私とデートしましょうか?慰めてあげるわよっ!」
なーんてね。童貞にはこれでむっちり押し付けて、上目遣いしとけばバッチリでしょ!私の大好きなラノベで見たから確実のはず!!
「え、ええぇ!?せ、先生(ばばぁ)と?」
「おいこら!いまばばあって言ったか!?」
「い、いえ。僕そろそろ帰らないと!失礼します~~~!」
ガラガラーピシャッ!
「な、なんでよ~~~~~!!!」
すごい勢いで帰ってしまった……。
くぞぅ……あのくそアマァ絶対ゆるさんぞぉ!!!!
それから腹いせのように、あのアマをいびってやってる。
私のイメージや体裁があるので、あからさまにはできない。だからやることは小さな嫌がらせだ。
例えば調理実習のプリントを配る時。
あいつは最後尾に座ってるからあいつの列だけ1枚足りなくしてやる。
するとあいつに親切にするやつがいないから、あいつだけは入手できずに連絡がいかない。当日に必須のものを用意してないので、あいつはなじられるし、担当教師に叱られる。
「……し……しり……ふひ……ません……でした」
「あなたは勉強する気があるの!?ふざけてるなら来なくていい!!」
ははっ、ざまぁぁぁぁぁぁ!
おラノベのザマァ系とはこのことだったのね!
ずっとクラスメイトにもイジメられているようだ。
ガキと共謀するつもりはないが、そのイジメに乗っかって協力してやったりする。
夏になって水泳の授業が行われたある日。
更衣室で制服のスカートに針を仕込んでる女性徒2人を見かけた。
「内緒にしてあげるから、もう行きなさい?」
「す、すみませんでした~」
と生徒指導して針を取るそぶりをして放置。
授業が終わり、生徒たちが教室に戻ってきた。
私は次の授業がこのクラスであるので、準備をしつつ観察していた。
そしてあいつが戻ってきて席にすわると……。
「っつ!」
ひひっ!どうやら刺さったようだ。おんもしろい顔!
またしてやったわ!ざまぁああああ!
私は大好きなラノベのごとく「ざまぁ」してやることに…………ぺろり。
あいつが二年生になって、私も今度はあいつのクラスの担任になった。
このポジションならもうちょっと嬲っても大丈夫そうね!
……ふふふっ。
私はもうこの行動に何の疑問も持たなくなっていたし、はっきりと快感を感じていることを自覚した。
進路希望の用紙もあいつに渡らないようにして、一年の時と同じように嬲った。
しょっちゅう怪我をしてくる子だったので、それに便乗して私もあいつを傷つける。痣をつくる怪我でも、家でつくってくる痣と交じってわからなくなるからやりやすい!
ふと、一人のクラスの女子の行動に不可解な物を感じた。
あいつがイジメられ、周囲全体、むしろクラス全員ではなく近隣のクラスの人間からも敵意を貯めている時に、しゃしゃり出てきて「私の奴隷よ」とでも言わんばかりに、執拗にイジメた。するとその女子グループ以外は引いてしまって、イジメが止まるのだ。
な、なんだこいつ?た、確か名前は……鈴沢 雲母?いわゆる白ギャルって言わんばかりの、可愛くおしゃれで派手な子だ。
こいつは……邪魔だ!……敵だ!
私からおもちゃを取り上げるやつは、全員敵だ!
とある日。
約束があると、鈴沢が早く帰った。いつもは用事もないのにダラダラと教室に残ってるのに。
あいつが邪魔で、私はお人形と遊べなくなっていた。かなりイライラがたまっていたので、鈴沢がいない今は絶好の機会!
鈴沢とは別の女子グループを焚きつけた。
「あんたの彼氏はあいつに取られてるぞっ」……と。
とある偶然撮れた盗撮写真を証拠にね。
案の定、あいつはグループに屋上へ呼び出しされてリンチだ。
私は影で見ていた。かなり殴り蹴られて、野球部のバットも使われていたことから、流血していた。足も赤黒く腫れていた。これは骨までいってるだろうと素人目でもわかる。
さすがに、これ以上は暴力事件に発展してしまう。いやしているだろうが、私が何もなかったことにするのだ。
私はわざとらしくならないように、怒る先生を演じて止めた。
事を大きくしないようにするからと、女生徒たちを帰らせた。
「大丈夫?さぁ、少し休んだら保健室へ行きましょう?」
「……ぁ…………ぅ」
意識が混濁している様子なので、しばらく動かさないで回復するのを待ってから保健室へ連れて行った。
だってきったないもん、抱きかかえたくない。
それに早く行くと保険医と鉢合わせする可能性があったから、少し時間を置く必要があった。
保健室へつれて行き、私は普通に手当てした。
明るいところで見ると、これは救急車を呼ぶべきレベルだった。
しかし彼女は救急車を断った。
じゃあいい機会だからと小一時間ほど説教(イジメ)をしてやった。
そういう仕打ちを受けるのは、お前自身の日ごろの行いの所為だと。
ふふふふ~ん♪これよこれ!きんもち~~~~!!!
さすがに次の日はあいつは休みだった。
なぜか公衆電話からの連絡だった。今時公衆電話なんて良く見つかったな……。
まああれじゃあ、しばらくはまともに動けないでしょ。
リンチした女子グループは気が晴れたようだし、私もすっきり!
あいつも反省して、一石三鳥!私って天才!
まだ動けないと思ってたが、あいつは次の日は登校してきた。
かなり顔をしかめてるのはわかる。
クラスの奴らは引いてるが、真相をしってる私は楽しくて仕方がない。
ひひひっ!ざまぁああだわ!!!!!
さらに。
私の受け持つ現国の授業では、わざとあいつを前に出てきて解くように指示した。おーおー歩くのがきつそう~、いい気味!きんもちぃ~!
ストレスだらけの教師生活もこれで少しは楽しくなりそうね!
なんて思ってたある日のSHR……
シュキュィイイイイイイイイイイイイイイイイン!
と劈くような音とともに足元が光りだした。
周囲が驚いてざわめく。
は?異世界転移キターーーーー!
ナニコレ最高じゃないの!
私の時代が来た!!!!私主人公ぉぉぉぉぉ!!!
ステータスであいつはやっぱり最弱底辺だった。
王国の人にも笑われている。
あーいい気味。本当にあいつは私を楽しませてくれる!
ざまぁあああああ!
かくいう私もそんなに良くないな。
クラスカーストトップ連中が良いステータスをもらってる。
はぁ~これじゃあつまらない。
はっ!そうだきっと実は最強!?系のなろうファンタジーだ!!
もしくは侯爵令嬢とかになって、逆ハーレム?玉の輿?
私がその主人公にきまってる!!!
王子や貴族の嫡子とラブラブちゅっちゅってするんだ!!!
そうと決まればガキにかまってる暇なんてない!
さぁ私の、逆ハーレム勇者の冒険が今始まるのよ!!!
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