薔薇色洞窟

泡沫綾凪

第1夜

真っ暗だ。私は同じ大学のサークル仲間と山でサバイバルをしようとここに来た。と言っても私を含め4人しかいないのだが。ここは山奥で、偶然見つけた洞穴でサバイバル生活を始める準備をしている。

「…それにしてもくらいなあ」

「僕ライト持ってきたよ!」

海亜が言う。

「そんなんみんな持ってるよ」

みんなそれぞれライトを出し灯りを点した。

「だだっ広いな」

4人分の寝袋が引けて、尚且つ荷物の置き場所があるくらいには。

「よし!今日から2週間!サバイバルするぞー」

紺はつくづく能天気だ。そこがいい所でもあるが。

それから私達は少し食事を取り、寝袋を広げて寝た。



「ふっふっふふーん!美味そうな獲物の匂いだ。」

ニンマリと笑うそいつは歩き出した。

影を置いて。





「うっ、ああ腰が痛い…」

どうやら私が1番に起きたようだ。時計を見ると朝の9時だ。みんなを起こしてやらないと。

「おい!いつまで寝てんだ〜起きろ!」

続々と起き出した皆。

その時ふっと自分の1m先くらいに人の姿が見えた。見間違いかと思って瞬きをしたが

目を開いたあとも相変わらずそいつはそこにいた。


「だっ、誰だ!」


みんな口を揃えてそういう。


「ああ、驚かせてしまったようだな」

そいつはそういった。

「いやあ、若くて美味そうな匂いがしたもんだからさあ頂こうと思って!」


「……は?」


臨戦態勢に入った紺がそいつに殴り掛かる。だがそいつをすり抜けその向こうの土の壁に突っ込んだ。


「殴ったって無駄だよ‪w君らじゃ勝てない」


「お前の要求はなんだ」

低い声。紺のものだ。


「要求だなんて〜。誘拐犯みたいに言わないでよ〜。まあいい言ってやろう。」


そいつの要求は


1・1日1人ずつ生贄を差し出すこと

2・その生贄は死んだ状態で差し出すこと

3・生贄を殺す時は自分の指示に従うこと

4・逆らったり逃げたりした場合は即刻、次の日の生贄となること


付け足しとして、最後の1人は助け、山の麓まで送り届けること。


「……というわけなんでよろしく。次は夜の10時にやってくるよ〜」


そう言ってそいつは消えた。


「チッ、そんな要求のめるわけないじゃん」

私が怒りを口に出したその時紺が

「いーんじゃない?俺最初の生贄になるよ〜」

「……え?」

驚きの発言だ。

「だって逃げても殺られるいても殺られるんだろ?生贄になれば誰かひとりは助かるんだろ?」

まあ、言ってることは間違ってないが。

「紺くんって…馬鹿なの?」

亜夜と海亜が揃って言った。

「いいよ。別に俺死にたいし。」

驚きの発言2。

「なんで」

亜夜が問う。

「え?そんなん話す必要なくね?」

「紺くんなんか嫌い!」

海亜が言う。私と亜夜は呆然と立ち尽くしている。

「ああ、嫌ってくれて構わないとも。今日の夜、俺は死ぬんだから。」

海亜が紺を睨みつける。冷戦状態のままついに夜の10時が来てしまった。


「さあて、今日の生贄はそこの紺くん?だっけ。その子みたいだねえ。じゃあ他のみんなには指示に従って殺してもらおうか。」


「……嫌!!」

私は思わず口に出した。

するとすぐさまそいつが

「あれぇ?忘れちゃったのかなあ?逆らうと食べちゃうぞ♡って言ったよね!まあ今回は見逃してやろう。」

危なかった……。


「そうしたら紺くんを殺してもらおうか。はい!これ道具。あとこの紙に殺り方書いてあるから。これ通りによろしくね!」


そう言って渡されたのはリュックサックと紙。それを見るとなんとも恐ろしいことが書いてあった。殺しの手順は、


1・とりあえずじわじわ効くその辺の毒草を食わせる。(その毒では死なない)

2・死なない程度に首締める

3・足首と手首を切り落とす

4・皮を剥ぐ

5・腕と足を切り落とす

6・最後に首を切り落とす


毎夜この殺し方をするのだそうだ。


こんなのやりたくない……。でもやらなきゃ死ぬ。本人も死にたいって言ってるんだし。

しょうがないよね。うん。

他のみんなもぶるぶる震えている。


「じゃあやってもらおうか!」


まずは毒草……。


目をつぶって紺の口の中に押し込んだ。

3分後、紺が苦しみ始めた。


「さあさあ!次は首を締めて貰うけど誰がやる?まあ、自分からは名乗り出ないか!じゃあ君!さっき逆らった子〜。」

私のことだ。


彼に馬乗りになり、首に手を置く。


「やめ……ろ」

そう彼は言う。だがやらないと殺されるんだ。

「ごめんなさい……」

手にぐっと力を込める。苦しむ紺。しばらくたって、化け物が

「ストーップ!それ以上やると死んじゃうからね!」

やっと……終わりだ……。

紺は苦しそうに咳き込む。手足をいつの間にか縛られており、海老反りになってのたうち回っている。


「ゲホゲホッゲホッ……うっあああああああああああぁぁぁゲホッ」

紺が叫ぶ。

「ゲホッこんな……くっ……ああ……苦しめ……られるんゲホッ……なら……もっと……早く……死ねば、ゲホッよかった……。」


しゃべるのもままならない紺。私は涙が止まらない。他のみんなもだ。


「さあさあ!お次は手首と足首だね!その前にみんなの名前を教えてもらおう!」

今だ、そいつは大分油断している。逃げるならっ……


「くっ……かぁ……」


「君の考えてることは筒抜けだよ〜?

明日の生贄は君だね!」

嘘だ、嘘だ……。

「さあ早く早く!彼のこと切ってよ!彼女、綾明ちゃん?は左手首、亜夜ちゃんは右手首、海亜くんは両足ね〜よろしく!」


「なんで!なんで僕2本なの!やりたくない」

海亜が言う。

「やらないと殺されるよ」

びっくりするほど低い声で私は言った。

「生き残りたいんだろう?だったらやりな」


「綾明さん……」

海亜は泣きながら斧を振りかぶり左足首を切り落とした。続いて右足首も……。


「かはっ!い、たい……。グワアアアア」


「さあさあ次は女子2人組!頑張れ〜君らは勢いじゃなくて、ノコギリで、すこ〜しずつやってね!」

嫌だけど……しょうがない、やるしかない。

亜夜は真顔で涙を流していた。


プチッとした皮膚の切れる感触が手に伝わる。気持ち悪いが、我慢だ。紺は最初の毒草や、痛みのせいで呼吸が大分荒い。

ノコギリを、引いて、押して。長くその行為を繰り返した。やっと切り終えた時には、紺の意識はなく、身体の下には血の海が広がっていた。


「次は皮を剥いでもらうよ」


ここまで来たら無心になりかけている。


真顔でナイフを使い切込みを入れ手でひっぺがす。剥がすたびに体が飛び上がる。全身終わるまで相当な時間がかかった。


「よし!次は手足だね!これはもう適当でいいよ。反応しないし。かろうじて息はしてるみたいだけど。あ、やっぱ少し蘇生するか、意識取り戻すくらいには。ノコギリでよろしくね〜!」

化け物は紺に手を当て、何かを唱えた。すると紺は目を開けた。


「くっ!からだ……じゅ……うが ぐああ!い、たい……。」


ノコギリの刃を食いこませる。ちなみに海亜は失神してしまった。

「い……たい!やめ……てく……れ……」


切り終える頃には血の海が広がっていた。


「さあさあこれで最終かな?首を切り落としてもらおう!綾明ちゃんよろしく!」


「なんで私が……」

「だって彼らは明日もやるんだよ?君は今日で最後だから!」


しょうがない。やるしかないんだ……


「うわあああああああ!」

スパン……

ゴロッ


「はい!よく出来ましたー!じゃあまた明日の夜に!」


私はその場にへたりこんだ。


「2人とも……。みんなで死のう。あんな苦痛、耐えられないよ……。」


「え……。でも……。」

海亜は黙り込んだ。


「私はいいと思うけど。私も嫌。」

亜夜が言う。







「ふっ……」


















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