怜悧な微笑は滾る心をひた隠す。銀月の悪魔と聖なる乙女、甘やかな恋愛譚。

 闇の世界に繋がれた「月葬の死神」と呼ばれる銀髪の悪魔と、聖女の末裔である乙女の、甘く艶やかでちょっと切なさもある、恋愛ファンタジーです。

 雨の夜、路地裏で不気味な異形に襲われたルシェラは、逃げた先で、三日月を背負った銀髪の男性と出逢います。いきなり不穏な展開で迫られ怯える彼女ですが、彼は異形をいとも容易く葬り去り、ルシェラに尋ねるのです。「君を味見させてもらっても?」――と。
 敬語で美形、強さも抜きん出ている、いにしえの悪魔レヴィリウスですが、とある制約により、自由に「表の世界」に出てくることはできません。彼はルシェラに執着し、ルシェラも彼に心惹かれていくものの、種族が違う相手の本心をつかみきれずになかなか心を許せない。
 焦る悪魔はルシェラを奪われまいとして、あの手この手で彼女の日常に干渉しようとするのですが……。

 種族的な隔たりに加え、物理的な制約もある二人。悪魔が聖女の血を求める背景には、過去の因縁なども関わっており、ほんのりシリアスを混ぜ込みながら物語は進んでゆきます。
 はたして悪魔は彼女の純血を、そして心を手に入れることができるのか?
 ぜひ、ご一読ください。

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