温泉4
「そんなおびえた声出さなくても襲ったりしないからさあ~」
「そんな荒い呼吸をして、その言葉を信用できるとでも思っているのか!」
「そこは信用してもらわないと困るかな」
何、この人、すごい怖いんだけど。隣の二人を見てみるが、苦笑いをしたままだ。俺はこれから一体何をされるというのだろうか。せめて犯罪チックなことはないと信じておこう。それだけは譲れないポイントだろうし。
「やっぱり、見れば見るほどいい身体つきだよね」
ああ、今すぐここから逃げたい。もう一度、荒川と三浦を見てみるが、頑張ってねと目で言っている。なんなんだこの二人は。俺が危険な目に合うかもしれないのにがんばれっておかしくないか。温泉から出たら何か仕返ししたいぞこれは。
「これならすぐに男も落とすことができそうだよねえ」
ん? 男を落とすとは一体……
「これなら私の好きなシチュエーションに持っていくことができるかもしれない。こんな偶然はないんだよ!!」
なんか美海が興奮し始めたぞ。お湯につかる前のはずなのに顔を真っ赤にして今にも鼻血でも出てきそうだ、と思ったら案の定出てきたぞ。
「少し興奮しすぎだよね。美海は鼻血が出やすいのに体を温めた状態で興奮なんてするんだから」
「まったくだな。これ懲りることはないだろうけど、少しは学習してほしいよな。こういう場所で後始末をするのはあたしたちなんだから」
「その言い方だと何回もこういうところで鼻血をだして迷惑かけているのかこの女は」
「3人で遊びに行くときはかなりの確率でね」
何とも言えないことを聞いてしまったな。美海にそんな悪癖があったなんて知らなかったし、知りたくもなかった。
「おい、少なくともお湯につかるときには止めておいてくれよ」
側でまだ、だらだらと鼻血を出している美海に言ってはみるがそれが伝わっているかは分からない。
シャワーを使って二人は美海の鼻血を流している。鼻血の出た場所が洗い場でよかった。これがお湯の中だったら悲惨なことになっていたな。美海本人は興奮しているからまともに動けなさそうだし。
「でもなんであれだけで興奮し始めたんだろう」
「それはね、そのね、後で本人に聞いてみると言いよ」
「あたしも同感だな。あたしも言いにくいし、それにこういうのは本人に聞くのが一番いい」
おいそんなに深刻なことなのか。やめてくれ、なんだか犯罪臭がしてならないんだけどオ?と、そうこうしているうちに美海の鼻血も収まり、興奮もまた収まっている。
「いやあ、取り乱しちゃってごめんね」
美海は軽く謝っているが、さっき言っていた通りみなれた光景なためか、荒川と三浦の2人は受け流している。
「それじゃ、お湯にでも入ろうか」
「温泉から出たあとゆっくりと話そうよ」
「それは一体……」
立ち上がって、湯船の方にすたすたと歩いて行く際に、耳元に口を近づけてきた。その内容はどこをどうとってもアウトだ。怖いなあ、もう。女湯だからびくびくしていたのにそれとはまったく違う意味でおびえることになるとは思ってもみなかったぞ。
「こっちが聞く前にあちらから話してくれそうな勢いだな」
「多分、君が思っているよりも健全だから大丈夫。よからぬことを考えているのは間違いないけど」
そんな物騒なことを考えるのはあの姉だけで十分だ。身近に二人もいたらこちらの身と心が持たない。誇張でもなんでもなく死んでしまうかもしれない。これから起こることを少し想像しただけで自然とため息が出てきた。
「一応聞いておくけど、荒川と三浦にはないよな。美海であったり、俺の姉ちゃんみたいなことは」
「ないとは思うぞ」
「同じく」
「ならいいや」
一応この二人におかしそうなところは見えない。もしかしたら俺が見ないようにしているだけかもしれないけど。結構付き合いの長い美海に事も全然知らなかったんだ。何があるかは分からない。警戒しておくに越したことはないだろう。
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温泉回、もう少し続きます。だらだらして申し訳ないです。明日も午後10~11時の間に更新予定ですのでよろしくお願いします。
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