「始まり、そして旅立ち」1 ミシェルのデート5

 私とニッシュは、ファッションショップ巡りをしにカートンショップ通りを歩く。


「兄ちゃん、彼女連れてカートンショップ訪れるなんざ、隅に置けねぇなあ」


 するとファッションショップの年配男性の店員さんが、私達をからかっているのか、声を掛けてきた。ニッシュは気丈に、でも落ち着いて答えた。


「ええ、俺の恋人、可愛いでしょう。さっきイヤリングプレゼントしたんです。もう愛しくて――」


 ニッシュは「愛しい」なんて言葉を恥ずかしがらずに言ってみせる。私はちょっと凄いと思ったけど、内心嬉しくて、ふふっと笑った。ファッションショップの店員さんも「ほぉ~」と感心してみせた。


「兄ちゃん、いい性格してるな。どうだい、うちの商品見ていかないか?」


「ええ。じゃあ見ていこうかな」


 店員さんが勧めるので、ニッシュも乗り気でカートンショップを見に行った。私も後を付いていく。


 年配男性の店員さんの店は、男性物のこだわりの服やアクセサリーが所狭しと並んでいた。


「へぇ、ニッシュに似合う服やアクセサリーもあるかもしれないわね」


 横柄な態度であるかに見えた店員さんも、カートンショップの店舗はなかなかセンスが良かった。ほとんどが男性ものなので、私の着るような服やアクセサリーはなかったけれど、ニッシュに似合う服を探すのは楽しかった。


「おじさん、でもこの店ちょっと高くない?」


 ニッシュは年配男性の店員さんに駄目出しをして、文句を言う。


「うちの店の商品は、そんじょそこらの商品とは違うからな」


 確かにこの店の商品は、五千ガルや八千ガルなど安くていい物が売りのカートンショップにしてはちょっと高い。中には一万ガルを超える商品もあった。高等学校生の身分ではちょっと手が出せない。


「あっ」


そんな中、私はニッシュに似合いそうな、白ベースのティーシャツを見つけた。値段も五百ガルとさっきの銀色のイヤリングと同じ値段で安い。ティーシャツには、なんとレイピア術で二人が戦っていて今にも技が繰り出されそうなイラストがデザインされていた。


(――そういえば、ニッシュ……)


 ある日のニッシュとの、レイピア術部が終わった後の会話を私は思い出した。

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