第2話 二日目~ベトナム編(?)

 目が覚めた。体が重い。もちろんでろでろの二日酔いだ。このゲストハウスは正午までにチェックアウトすればいいのだからと、ゴロゴロした。海外のゲストハウスはみんな正午までにチェックアウトすればいいから、という理由らしい。ありがたい。

 昼近くなってようやく外に出た。もちろん富〇そばの薬膳そばを食べる。店員が「サービスです」と言いながら、目の前でどんぶりに卵を割り入れてくれた。一気に啜る。体中に力がみなぎる。地方出身者はうどんで喧嘩になるそうだが、郷に入れば郷に従えで、東京ではみなそばを食べれば良いのだ。


 三鷹の森ジブリ博物館に行こうとして、迷う。二時間ほど迷ったところで、足がくたくたになる。コンビニもカフェも自動販売機も見つからず、まるで行軍だった。諦めて電車に乗り、中野ブロードウェイへ行った。


 中野ブロードウェイに行く。オタクグッズが色々あったが全く買わなかった。アニメや漫画のオタクグッズももちろん多いのだが、広くサブカル文化を網羅しているようだった。コミケカタログはここでようやく購入。昼食は少し外れたところの中華そば(支那そばだったか?)屋で食べて、中野ブロードウェイを出たところの甘味処で韓国のかき氷「パッピンス」を食べた。かき氷の上に色々なフルーツが乗っていて非常においしかった。


 通りの酒屋で、熊本の酒「美少年」を購入。高かったが「熊本の復興のため」と言いながら買っていた気がする。この酒の蔵元は今持ち直しているそうだ。良かったね。


 付近のネカフェに宿を取る。料金体系に不満を持ったサラリーマン風の人が、抗議なのか寝られればどこでもいいのか、ネカフェの前の階段で寝始める。東京は怖いところだ。よそに移ることもできないので、そこに泊まった。

 ネカフェを出て、ブロードウェイ付近の沖縄居酒屋へ。オリジナルカクテル飲んだ気がする。海ぶどうは私の口には合わなかった。サラダに乗っていたポーク缶が大変おいしかったので、食べてすぐにネットで調べた。ポーク缶、スパ〇はネットスラングになるほど「嫌なもの」らしいけど、それはアメリカ軍において兵士が毎日毎日食べさせられたから嫌なものになったのである。押し付けられたものでなければスパ〇は非常においしい。ポークたまごとか、にんじんしりしりとか沖縄料理に凝りだしたのもこの店のお陰。だけど、次来た時には見つけられなかった。残念。

 ネカフェのパソコンでコミケの電子カタログを読む。分かったのは「最終日以外は特に興味ないジャンルばっかり」という驚くべき事実だった。最終日までどうして時間をつぶそうか途方に暮れた。


(雑記)

 さて、どうしようか。いよいよ予定がない。いや、あるにはあるんだが、その間どうやって時間をつぶそうか。しょうがないので、ブロードウェイ付近をぶらぶらしたあと、あまりにも時間を持て余しすぎて、またぞろ朝から開いている狂った居酒屋に入ってしまう。恥の多い一生を送っています。酒を飲むと時間の感覚が溶けてしまう。アルコール依存症の人が「酒を飲めばすぐ時間がたってしまうので楽だった。それ以外の暇つぶしを見つけるのが難しい」と言っているのを聞いたことがある。いや、まさしくその通りなのだ。私はおいしい料理や酒を楽しみたいのではなく、チートアイテムを使って時間を飛ばしているだけなのだ。


 このへん記憶があいまいだし、日付感覚もぶっとんでいるので断片的に書かせてもらいます。


 東京帝国劇場にて、「ミス・サイゴン」を見る。ベトナム戦争時に懇意になったアメリカ軍人とベトナムの娼婦が戦争の終わりによって離れ離れになるが・・・というあらすじ。美術と演出と演技が完璧で、こんなに美しいものを一回限りで(録画もせず)終わらせるのは贅沢すぎると思ったほどだった。冷房の効いた劇場であるにもかかわらず、ベトナムのじっとりした熱気が伝わってきた。こんなものを見られるのであれば、東京に住むのも悪くはないと思った。

 劇場を出ると、お腹がすいた。この辺は再開発が進んでいて、普通のこじんまりした飲食店がない。「ガード下にいけばなにかあるだろう」と思いついてずんずん進むと、思った通りいい感じのベトナム料理屋があった。店員も客も温泉で過ごしているかのようにゆったりしていて、カオマンガイは安くて優しくて豊かな味だった。ちょうど、演劇の追体験ができた。こんな店があるなんて、東京はいいところだ。次に行ったときに、この店は別の店になっていた。東京は怖いところだ。

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