第8話 「熱となる瞬間」

鼓動が漏れないように膝を抱えこんだ

ラジオからの叫びは ただの音ではなかった

空になったビールは 何の意味もなくなってしまった

頭の奥には冷たいものが確かにあって

心臓は膨張と縮小を繰り返し まもなく胸を破るかもしれない     

たったひとつの歌なのに 全身はまみれてしまい

声だけがぐるぐると廻ってゆく

やがて冷たい一点が解けだして

硬直したままの指先に しびれとなって到達する


やっとひとつ息をして 部屋の隅から立ち上がる

私は

何かをしなければいけないと思った

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