第2話  喜怒哀楽の激しいおっさん。


慌てるメルに何故か微笑ましいものでも見る様な表情で


直人「そっか、なら

   ちょいと俺の後ろに居てくれるか?」


と言った。


直人のメルを気遣う予想外の言葉に戸惑う


メル「え?あ、うん」

(あ、アレ?戦う気マンマンなの?)


メルの戦力外発言に慌てるかと思ったが、

落ち着いた様子で、

メルを自分の背中に隠す様に位置取りすると

1番早く到達するモンスターの方向を

向きながら煙魔を吸い続けていた。


メル(え?え?大丈夫なの?

   っていうか!いつまで吸っての!

   いっぱい来ちゃうよ!?あ!来た!)


メルの混乱を他所に、森からヒョウに似たモンスター5体が飛び出して来た。


メル「奇獣型!?それも5体!?

   気をつけて!そいつ等は、、あれ?」


メルが警告をしようとしたが、森から飛び出したモンスターはその勢いのまま地面に転がりその後ピクリとも動かなくなった。


メル(え?一瞬で5体の気配が消えた!?)


リズ「続いてマスターから見て

   10時の方角より

   14体が時間差で向かって来ます」


直人「あいよ〜」


直人は返事をしつつリラックス効果のある閻魔を吸い出す。


直人「ふぅぅぅ、、」


メル(あ、この香り、、

  リラックス効果の煙魔、、メルの為?)


直人の後ろにいる為、直人の表情は分からないが、煙魔の爽やかな香りがまるで安心しろとでも言っているようだった。


メルの心情を置き去りにしてどんどん迫りくるモンスター達、今度は、爪の長い猿に似たモンスターが現れるが森から姿を表すと、一歩から二歩進んだ先で次々と倒れていく。


メル(な、何が起こってるの?)


直人の服を掴みつつ半分だけ顔を出してモンスター達の様子を伺うメル。


メル(あっ、直人の右手に魔力の反応、、、

   何してるかわからないけど

    直人が倒してるの?)


何かをしてるのは分かるのだが、流石に早過ぎて何をやってるのか認識出来ないメル


その後、RANK1からRANK2のモンスターが森のいたる場所から数百体現れるがどれも、直人達の場所まで到達する事なく倒されていった。


メル(ん?リアリナ?あ、うん、大丈夫、

    もう終わりそうだから、うん

              よろしく)


見渡す限りモンスターで埋め尽くされた光景

を見ながら念話で何者かと連絡を取る。


リズ「周辺にモンスターの

   気配が途絶えました

   お疲れ様でした。

   モンスターを回収しましょう」


直人「おっ?終わったか

   ありがとうリズ!んじゃ

   めんどくさいけどやりますか」


その後、直人は左右の手から棒状にした魔力を出しながら器用に回収して行った。


メル(アレは、、かなり歪だけど魔力手?)


直人が回収作業をしているのをその場を動かず見ていたメルだか、恐る恐る直人に近寄って討伐されたモンスターを観察する。


メル(凄い、、こんなに沢山居たのに

   あっと言う間に倒しちゃった、、

   それにコレも、、アレも、、

   頭部の一部に穴が空いてる

   メルが認識出来ない速さで

   魔力を打ち出して討伐していた?

  その場をから動かないであの数を?

 息も切らさずやってのけたっていうの?

  じゃ、じゃぁ!もしもっと上手く

   【魔力】使えてたら?)


鼓動が高まって行く、、なんて圧倒的な魔力量なのだろうか、、恐らくは直人の本領は接近戦だったのだろう

しかし、メルを守る為、わざわざ苦手な魔力を使った攻撃でモンスターを倒していった。


なるほど、、そう言う事ね、、


シュナイダー神はだからワザとエルフの街に近いこの場所に直人達を送ったのだろう、、


直人に【魔力の使い方】を教える為に


メル(まったく、

   相変わらず周りくどいやり方だね

   それならそうと言えば良いのに、、)


メルは直人の手から伸びる魔力の棒を何気無く詳しく鑑定した。


メル(んなっ!?なんて無駄遣いの多い)


直人の魔力棒を鑑定後に険しい表情となったメルは

   

メル「ねぇ直人あのね、、

   ちょっと聞いていいかな?」


最後のモンスターを回収し終えた直人はメルに振り向くと険しい表情しているメルに首を傾げ疑問に思いながら答える。


直人「ん?どうしたんだ?

   答えられる事なら答えるけど?」


メル「うん、あのね

   あの数のモンスターを

   どうやって討伐したのかな?」


真剣な表情で直人を見つめるメル



直人「(おぉ、、

    鋭い目も可愛いもんだなって

    イカン!イカン!

    質問に答えなければ)

   あ、あぁ、それはな

   コレをこうしたら後は狙い定めて

   弾いてたんだよ」


直人はメルに見える様に親指を巻き込みながら握り拳を作り、その親指の爪に魔力の玉を作ると、

数m先の地面に発射した。


ダァン!!


貫通力に特化した魔力の指弾は石の地面を軽々貫通した。


メル(指弾?ううん、そんな事より、

  魔力の使い方はてんでダメだね、、

力技過ぎるけど無理してる感じはない、、、かな、、なるほどね、、

魔力量が桁違いなんだねRANK2クラスなら

数百体来てもさほど消耗しない程の量か)


一連の動作をゆっくり再現した直人。

メルの返答を待っていると

指弾で空いた穴を見つめていたメルは

直人に向き直ると


メル「直人!凄いね!それ!」


直人「おっ?そう?あははは!凄いかね?」



メル「うん!凄い!『雑』だね!」


笑顔でそう言ったメル。


直人「あははは!そうか!そうか!

   雑か!あははは、はは、は、は?

  え、、と、、メルさん、『雑』とは?」


美少女に絶賛されたと思い有頂天となる直人だが、褒め言葉とは思えない言葉に困惑しながら聞き返す。


メル「うん、信じられない高魔力を力技で

   形作ってるからさ

   無駄に高い魔力を無駄に凄い力技で

  やってるのが『雑』だなって思ったの」


笑顔から真顔になり話すメル。


直人「えぇぇぇ、、

   やっぱ『雑』って言ってたのかよ

   この上がった後に突き落とされる感じ

   卵以来だわ

   でもまぁ、多少上手くなったとは言え

   無駄が多いのは自覚してたけど、、

 そこまで無駄無駄言わなくてもさぁ、、」


肩を落とし、しょんぼりする直人


メル「じゃぁ、質問です!」


ダダアン!と口で効果音を言うメル


直人「え?突然なんだよ?」


メル「直人さんの目の前で、スープを

   飲んでる人が居ます」


直人「スープ?うん、まぁ、はい」


メルの豹変ぶりに戸惑いながらも

一応聞く直人。



メル「その人はスプーンでは無く、

   何故か穴の空いた

   コップで飲もうとしてますが

   当然飲めませんよね?」


直人の目を見ながら確認するメル

その目が少し怖い


直人「は、はい、、飲めません」


メル「なのでその人はもう片方の手で

   穴を塞ぎながらスープを飲んでいます

   さて、ここで問題です」


直人「お、、おう、、あ、いえ、はい」


『おう』と返事しようとしたらメルが眉間にシワを寄せたので慌てて言い直した直人。


メル「その人は直人さんの大切なお客様です

   そのままではその人が

   お店や他所様のお宅で

   恥をかく可能性が

   非常に高いです。

   直人さん貴方ならどうしますか?」


メルは両手を後ろに組みながら少し前屈みとなり、直人を上目遣いで見つめながらも質問した。


直人「(あ、谷間だ、、

    結構実ってますねって違う違う!

    え、、と、大切なお客様で

    世間に恥をかくんだろ?)

   だったら、普通に恥をかく前に

   マナー教えれば良いんじゃないか?」


メル「直人さん!正解です!!

   パチパチパチィ!」


口でパチパチ言いながら手を叩くメル


直人「いや、そんなの普通だろ?

   なんの問題だったんだよ?」


メル「メルは見た目通りのか弱い少女

  なので戦力は無いけど

   魔力の扱いや観察力は

   結構優れているのです!

   エッヘン!

   なので直人のヘンテコ魔力操作を

   見極めたんだけど

   他の魔力に長けた種族

   この国ならエルフ族やドリアード族

   が直人のヘンテコ魔力操作見たら

   爆笑か失笑する事

   間違い無しなのです!」


ババーンと効果音が鳴りそうな程に、胸を張りながら言い放つメル。


直人「爆笑か失笑かって、、

   そんなに酷いのかよ、、、

   って!まさか!!

   スープを穴の空いたコップ

   の穴を手で押さえながら

   飲んでるのは俺かよ!?

   むしろコップ邪魔じゃん!

   手で飲んでる方が分かりやすわ!

   そんなややこしい上に無駄な事

   してるっていうのか!?」


メル「うん、そうだよ?」


可愛く首を傾けながら笑顔で肯定するメル


直人「そんなに酷いの!?

   結構ちゃんと使えてると思ってたよ!

   コストは悪いけど、、」


メル「そう!そこなんだよ!

   直人はさ、魔力に長けたエルフ族の

   全力の魔力を使ってやっと焚き火の火

  出してるみたいな、使い方してるんだよ

   そんな馬鹿げた魔力の量持ってるのに

   やってる事がショボすぎて

   馬鹿にされるか

   中には怒る人も居るかも知れないよ?

   だってこの世界の人たちは

   少ない魔力をどれだけ効率的に運用

   運用出来るかを日々切磋琢磨

   しているんだからね」

   

衝撃的な事実を突きつけられた直人

実は俺ちょっとスゲェんじゃね?と思っていただけにショックは思いの外、大きかった。



直人「うわぁ、、、

   凄く、、恥ずかしい、、

   リズどうしよ?

   俺、今、めちゃくちゃ

   カッコ悪いんじゃないかな?」


助けを求める様に

リズにすがる様に質問する直人。

今までメルと直人のやり取りを静かに

見守っていたリズは 



リズ「マスター、、、」


慈愛の表情を浮かべるリズ


直人「あぁ、リズぅぅ」


フォローの言葉を期待した直人もまた笑顔となる


リズ「ドンマイ!!」


直人「かるいーー!軽いよ!リズさん!

   いつもちゃんと

   フォローしてくれるじゃん!」


リズ「申し訳ありませんマスター、、

   魔法なら関してはお力になれそうに

   無いので、魔力の扱いに秀でた方に

   助力を願うしか無いと思われます。

   なので、私は応援しか出来ないです」


今度はリズがしょんぼりする。


メル「ああ!リズをいじめてるぅ!!」


リズの姿とメルの発言に慌てる直人。


直人「ち、違うんだ!

   ご、ごめんリズ!

   責めてる訳じゃないんだよ!

   メルも誤解を

   生む様な発言はするなよな!」


メル「うっ、、うぇーん

   赤毛マッチョが虐めるぅ、、」


両手で目を擦りながら泣き真似するメル


直人「ちょ、なんだよそれ

   嘘泣きは止めろよな」


メル「うぇーん、、うぇーん」


直人に上目遣いしながら両手を目の位置から離さず嘘泣きを継続するメル


直人「わ、分かったよ

   悪かったよ、、すみませんでした」


不満げにしながらもメルに謝りながら頭を下げる直人。


メル「猛省しなよ!」


嘘泣きをピタリと止めて、人差し指を直人に突きつけながらドヤ顔で言うメル。


直人「ぬぐっ、、」


そのメルの態度にカチンと来る直人


メル「おや?どうしたの?」


分かってて煽るメル。


直人「な、なんでもないです」


反論した所で勝てそうに無いのを理解してる直人は言いたい気持ちを我慢し抑えた。


メル「あははははは!変な顔してるぅ〜」


リズ「メ、メルさんあまりマスターを

   あまりからかわないで下さい

   可哀想です」


何気にリズの可哀想

発言に1番ショックを受けた直人。

見た目、妖精に可哀想だと庇われる40歳


哀れである。



真っ白に燃え尽きた直人口から魂が出てるのが見えるような屍姿を晒していた。


メル「あははは!ごめんごめん!

   直人が凄い強いのは分かったし

   魔力操作を覚えればちゃんとした

   魔法使える様になるからね?

 丁度今からエルフ族の街に行くからさ

    エルフの街には漢気溢れる

 カッコイイ族長居るからさ族長に頼んで

 は【みんな】に協力して貰えば直人も

  ちゃんとした魔法使える様になるよ!」


屍直人の両手を掴んでグイグイ引っ張るメル


直人「ちょっ、分かったから!

   そんなに引っ張るなよ

    まったく、、

   (急に馴れ馴れしくなったよな

    メルの奴は、きっかけあったか?

    それにしてもエルフの街ねぇ

    エルフと聞いてドキドキしてたけど

    折角のエルフも

    漢気溢れる族長が相手かぁ

     イケメンマッチョなゴツい

     奴なんだろうなぁ、、

     やる気出ないわ、、)


リズ「エルフの街は

      ここから近いんですか?」


メル「ここから15分位歩いた場所に

   転移陣あるから

   そこまで行けばすぐ着くよ!

   ほら!直人!

   エルフは男女共に容姿端麗だけど

   今は女性の方が多いから

   頑張ってダンジョン攻略すれば

   モテモテになるよ?」


【モテモテになるよ?】


その言葉にヤル気MAXになる直人。


シュン!


直人「2人とも何をしている!

   一刻も早くダンジョンを攻略

   しなければならない使命が

   オレ達にはあるんだぞ!!」


いつの間にか20m先に移動し、リズとメルに、手を振りながら2人を急かす直人


メルとリズは互いを見つめた後に


直人を見ながら


メル「はぁ、これだから異世界人は、、、」


と溜め息を吐きながら呟き

リズ「はぁ、マスターの、、バカ、、」


リズもまたため息を吐きながら誰にも聞こえない程小さい声で呟いた。



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