2日目  戦闘(2)

そう言って出るアレックスに引き連れられて再び、僕とテツは道場に足を運んだ。

そこには、ボロ雑巾のようになったココアさんとそれを踏んでいる課長の姿があった。


『随分と早かったですね。』

「いろいろと荒療治しましたから。」

「まぁしょうがねぇよ、俺たちは二人ともスゲーからさ。」

「どうだぁ?これで行ってもいいんだろぉ?」



『ふむ、アレックスを倒すほどなら、まぁいいでしょう。その前に報告は?』

「あ、実は・・・」


事情を説明したら、課長は良い笑顔で笑って双剣を取り出した。


『それならばもう一息しごきましょうか。加減して、双剣でやってあげます。アレックス抜きで死ぬ気で勝ちに来なさい。』

「「魂装!」」


「テツ、行くぞ。」

「あぁ、ケンちゃん、任せな!」


僕らはそれぞれ武器(と言ってもテツはボール、僕は拳)を構えた。



勝てる気はしなくても、負ける気は毛頭ない!




体をめぐる原動力は、意思だ。意志だ。そして意地だ。


僕は、先に一歩踏み込んだ。

双剣が僕に向かって1本振るわれる。それを正面から素手で返す。

側面を叩き、折る。

次にテツが突っ込んでくる。

それ合わせて僕はそっと、1つの武器を作り、置いた。


手榴弾である。


そこには【吹き飛ばし】の概念を付与しておいた。


『ほう?』


それを蹴りあげる課長に今度はテツが肉薄する。

スイッチとでも言えばいいのだろうか?

僕は小回り、テツは大振り。遠距離主体のテツにインファイターの僕。

お互いに、長所を引き出して。短所を潰す。

最小限の動きで最大限に動かせる。


それだけ


『いいじゃないですか。それじゃ、ギアを上げますよ。』


まだいける。双剣を打ち砕く。


『うそでしょ?これもついてくるの?ならこれなら・・・』


まだいける。テツと一緒に翼を掴んで投げ飛ばす。


『フフフ・・・アハハ!いいですねぇ!詠唱も始めましょう!』


まだいける。二人で相殺する。


『あら?まだ居ますの?なら、通常8割行きますよ!』


まだいける。避け、いなし、殴りをそらして巴投げをする。


『また随分と面倒な!でも倒せませんよ!』


瞬間で10?20?分からないが、全身に攻撃を浴びる。

見えないほどのスピードなのに衝撃は少ない。

まだ耐えられる。進める。

こんなところで止まっているわけにはいかない。


さぁて、アレックスの時にやったあの感じ。やるぞ?そっちの準備は?


万全だ。いくよ!


意識は十分。

だけれども、まだ、火力は足らない。

相殺できても、打ち勝てない。

ならば――――



やることは一つだろう?


そうだな。


――――踏み込む


音が消えた。


加速するのは僕の体。


テツに貰った速度。いわばバフ。ボールから伝わる【衝撃】による強制的なものでもあるが、それでいい。


この瞬間に全てを



「ぶち抜け!!!」

「ふっ!」

『甘い!』


こぶしを止められるのは覚悟の上。その上から腕を掴んで、体をそらして・・・


『投げ!?無意味な「そこだぁ!」ちっ!そういうことか!』


壁を張られ、翼で吹き飛ばされる。でも立てる。テツがいるから。

僕には僕にしかできないことをしよう。『俺』が求めてやまなかった。

友のために。


「僕らは一人じゃ勝てないかもしれない。」

「だけど、一人じゃなくていいだよ。」


「「相棒がいる。それだけで十分だ。」」


『・・・くくく・・・化けましたね~。じゃあ全開行きま「待て待て待て!なぁにしようとしてるんだぁ?課長!出しちゃだめって言われてんだろう!」そうでした。それじゃ戻っていいですよ。』


はぁ?と思うと体が急に重くなった。

いきなり終わってしまって体にガタが来た。

いわば、アドレナリンのような感じだったのだろう。


魂力の使い過ぎはこうなるのか・・・意識まで飛ぶだなんて・・・


崩れ落ちてしまう視界の中に、一緒に崩れ落ちるテツを見た。



――――――――――――

(課長サイド)


よくもまぁここまで強くなりましたね。

『アレックス、よくやりましたね。あとで、ボーナス付けておきます。ココアの月給からそれは取りますけど。』

「それはいらねぇよ。課長。あいつの姉は?」


『えぇ・・・事実確認は済んだわ。霊体になったのは故意よ。あの死亡者のせい。』


あれはただ単にポカをやっただけだと思ったら、全然違った。あれは、人から寿命を奪おうとしていたんだと。


『アレックス。みんなを連れて下がりなさい。明日、朝から仕掛けます。』

「あい分かったぁ。無理はすんなよぉ。」

『お互いさまというものでしょう?』

「HAHA!それもそうだ・・・殺していいんだろう?中身だけなら。」

『許可します。』

「なら、分かった。任せなぁ。」


立ち去っていくアレックスをよそに考えていた。

私には何ができる?

現場に出る・・・だめ、それはクソ神に止められている。

支援・・・・・・これも得策とは言えない。

誰かを現場で手伝わせる・・・そうだこれだ。


シンとレイでいいな。


ならば・・・伝えておかねばならない。


真実も何もかもを。


ここで全てをぶち抜かないといけないが、私自身が手を出すことは恐らくできない。


忌々しいこの制約によって。


何が『もしも危なそうなら検討してあげる。』だ?


それさえなければ今日のうちに取り逃さずに終わらせられて言うのに・・・


あのクソ神が!


思わず、雲の床を壊してしまった。


『おっといけませんね、少し苛立っていたようです。ココリアル!』

「おっと、主が呼ぶとはよっぽどじゃな。どうしたんじゃ。」

『最悪の場合、お願いします。あの死神を喰らってください。』

「あい分かった。いざという時はやってやろう・・・グラトニーの一族として。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る