第27話 フェルト資源庫奪還作戦


「蒼龍、飛竜! お前達はどうしたい!? フェルト島を護りたいのか護りたくないのか? 負けた時の責任ぐらい俺一人で全部背負ってやる! だから自分の心に正直になれ!」

 手振りを添えて影が質問する。


「えっ? 提督……」

「それは流石に……」

 戸惑いを隠しきれていない蒼龍、飛竜。


「当たり前だろ! 俺は提督だ! 蒼龍や飛龍だけじゃない望むなら赤城や加賀、菊月や夕月の責任だって全部俺が一人で背負ってやるよ。だから自分の心に正直になれ!」

 叫ぶ、影。


 蒼龍と飛龍がボソボソと相談を始める。

 ここは黙って待つことにする影。

 そして。コクりと頷きあって。


「影提督……私は……フェルト鎮守府が好きです。ここに居る皆が好きです」

「私もです。影提督、私達に力を貸して下さい」


「わかった。だったらもう迷わないでね。悩んだらすぐに相談しておいで、必ず時間を作って何とかしてあげるから」


「「はい!!」」

 ようやく素直になれた二人がグズグズと泣き始める。

 そんな二人を優しく抱きしめて、安心させてあげると。

 再び後ろから声が聞こえてくる。


「あぁ~私にもして欲しいのにぃ~」

 と後方から赤城の声が聞こえたが、何度も言うが今はそれに構ってる暇はない。

(てか赤城マジでどうした……頼むから今だけはしっかりしてくれ……)

 残るは加賀。


「加賀少なくとも五航戦の翔鶴、瑞鶴は今も別の所で頑張っているぞ。加賀はどうする? 次の世代に任せて引退するのか? それともまだ現役として頑張るか? 決めるのは加賀、お前自身だ。どちらを選ぼうと俺は加賀の味方でいると約束するよ」


「私は……」

 加賀の拳に力が入りプルプルと震える。


「わたし……」

 影はそんな加賀だけを見る。


 ――数秒の沈黙。


「……戦います。まだあの子達には負けません!」


「うん。いい返事だね」

 影はコクりと頷く。

 そしてポケットからスマートフォンを取り出して時刻を確認する。

 

「時間的にも丁度いい頃かな」

 そして大きく深呼吸をして執務室にある椅子に座り直す。

 今度は皆の気持ちが一つになった状態で。

 そこから影は全員に作戦の内容を伝えていく。


【作戦】の前に――。


【一つ】影のスキル効果範囲から離れない事

【二つ】影が負傷し、指揮系統に乱れが生じた場合、赤城の指示に従う事

【三つ】夜襲になるため、視界が悪いことから無理して先行しない事

【四つ】仲間を信じる事


「まぁこれを大前提として……」

 それから影はそれぞれの役割の確認と作戦の確認を皆に伝えながら再度確認していく。

 皆の心が一つになった今だからこそ。

 そこに信頼関係が芽生え、より一層強くなることができる。

 新米提督だからこそ、まずは出来る事からちょっとずつ確実にしていくことにする。

 一か八かの賭けに艦隊少女達の命を懸けるわけにはいかないから。


「って感じになるけど、皆大丈夫かな?」

 皆がそれぞれの顔を見て頷き合う。

 執務室にいる全員の顔に今は不安ではなく、笑みがそこにはあった。


「良し、なら行きますか」


「「「「「「はい!」」」」」」

 力強く返事をした艦隊少女六人と共に影は執務室を出てハッチへと向かった。




 そして全員が気持ち長い滑り台をつかい所定の位置に着く。

 左側を見れば、赤城、加賀、蒼龍。

 右側を見れば、飛龍、菊月、夕月。


 真ん中に影がいる。

 最大七人までは同時に出撃できる仕組みになっている。


 すると、ガガガッと言う油が切れたような音を鳴らしながら目の前にある巨大な扉がゆっくりと開く。そのまま目の前に見える初めての夜の海の世界。

 海面に反射する光が眩しく感じた。


 影が一度深呼吸をして気持ちを整理していると、アナウンスが流れてくる。


「装備の確認終了。問題なし。進路オールグリーン。提督影、航空母艦赤城、加賀、蒼龍、飛龍、駆逐艦菊月、夕月出撃してください!」


「了解! 影出撃します!」

「了解! 赤城出撃するわ!」

「了解! 加賀出撃するわ!」

「了解! 蒼龍出撃します!」

「了解! 飛龍出撃します!」

「了解です! 菊月出撃します!」

「了解した! 夕月出撃する!」


 そのまま七人が同時に出撃する。

 海上を移動しバランスを取る事に集中しながらも手を前方に伸ばす。

 そして弓と飛行甲板がハッチから飛ばされてきたので空中で装備する。


「よし、上手くいった」

 

 正直、まだ戸惑いはある。

 だけど、これからの事を考えるならこれくらいでビビッてちゃいけない。

 自分一人ではどうにもならなくても今の影には仲間がいる。

 そして護るべき人達もいるのだ。


 いつかはセシル提督を超える提督になる為にも。

 このまま負けるわけにはいかない。

 そして艦隊少女達から認められる提督になると影は再度心の中で誓う。


 かくして――影と赤城達のフェルト資源庫奪還作戦は開始される。

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