ワイルドカード6

男はヴァルハラ地区をあてもなく彷徨っていた。μTミュート正規パイロットは機体と紐づけられ滅多なことではクビにはならない。だが強大なスポンサーはホーンごとパイロットを交換しより強いパイロットを募る。


なかば短絡的ともいえる仕打ちにあい男は良い迷惑だった。パイロットが交換できるとはいえ、自分より強い者が用意できるとは限らない。NIGHTMAREナイトメアDREAMCATCHERドリームキャッチャーなどの強力な戦士の登場でヴァルハラ闘技場は変革の時を迎えているのだ。


無論男に非がなかったわけではない。男は解体願望という異様な癖を持っており黒い噂が絶えなかった。勝ってるうちはいい、だが負けてしまえば体良く理由をつけてクビにされた。「君、どうしたんだゾ?」冷たい声がした。


黒いコートを着た銀髪の女がどこからか現れた。男は恐怖を感じたがそれを好奇心が塗りつぶした。この異界から現れたような女の中身はどうなっているのだろう?「ひひひひ」男の口から笑みがこぼれた。「僕はナイトメア・ムスタングだゾ」


「ムスタング……。ひひひっ…、おまえの中身も見せてもらおうかな」男は懐からメスを取り出した。「じゃあみせてあげるゾ」ナイトメアはコートを脱ぎ捨てた。「ほう…」男は思わず見入った。


しなやかな小麦色の肌、それを表面積の少ない水着が覆っていた。「おまえ、変態か?」そう言いながら男はメスを構えた。まだだ、まだ”中身”はみれていない。「へんたい?たしかに変態はするぞ?」突如ナイトメアの全身に赤い唐辛子のような目が現れた。


「!?」男が驚愕するとナイトメアが消えた。「君にこの世界を替えてもらいたいんだゾ?」ナイトメアが男の背後に現れた。全身の目が男を見つめている。「いつまでも愛しているゾ」男にノイズギアの液体が注入された。


能異頭ノイズと化していく男を尻目にナイトメアは歩いて行った。「神子ウヅメちゃん、まったく勝手な行動が過ぎるゾ」


「ワイルド・カード」終わり


「ブラック・ボックス」に続く

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