お嬢様は語り合いたい

 お出かけが終わり、真夜中になった。


 俺は今、ベッドに潜り込んでいる。


 芹とは沢山色んなことを喋って、誤解その他もろもろも何とか解けた。


「お兄ちゃん、なんか昔より頼もしくなった?」


 と言われてめちゃくちゃ気分が良い。俺はお出かけのことを思い出して全く寝つけないでいる。


 一年に一回しか会ってないから、次は来年──あいつもそろそろ高校受験か。


 ……俺も、進路をまだ何も決めてないな。少なくともずっと藤宮家務めだけはゴメンだ。でも、


「居心地は悪くない」


 ずっとこのままでもいいかなって。ふとした時に思ってしまう。


 藤宮家に幽閉されて、カレン様と共に一生を過ごすか。この家を飛び出して極貧生活を送るか。


 うむ、悩ましい。


「蓮二」


 俺の小さい部屋の中に、突然カレン様が入ってきた。パジャマ姿だし、てかまだ寝てなかったのか。


「なんですか、こんな夜中に」


「蓮二が私の部屋に来なければ、私があなたの部屋に行くまでよ……特に意味なんかないわ」


「寝てもいいすか?」


「ダメ」


 そして、カレン様は一人分空いたスペースに体育座りをした。全く寝付けなかった俺は正直、嬉しかった。


「カレン様。進路はどうなされますか」


 俺も上体を起こした。自分だけ寝てるのもなんか悪いからな。


「そうね……いい大学には行きたいと思ってるけれど」


 カレン様はそう言った。まぁ、そりゃそうだ。彼女はこの学校で一番の成績なのだから。旧帝大は堅いだろう。


「蓮二は?」


「俺は何も決めてません。でもそのうち決めなきゃなぁって──いつまでこの家に雇ってもらえるかも分かりませんしね」


 全ては、偉大なるお父様の気分次第だ。いや、お義父さまか。


「ふふ、心配することはないのよ。私は絶対に蓮二を見捨てないのだから」


 彼女はそう言って、にっこりと笑った。


「俺も、カレン様の笑顔を見られるのなら何でもいいです。一番近くで」


 俺は笑顔で返した。


 カレン様は前髪をかきあげた。ちょっとドキッとした。


「……ありがと。そう言って貰えて嬉しいわ」


 そうだ。俺が、必ずこの幸せを守り抜いてみせる。誰にも渡したくない。


 例え、それが禁断の恋だったとしても。



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