19話 わたしたちの長い夜①

 激しい運動を終えた直後のように、心臓が早鐘を打っている。

 向かい合ってベッドに座っただけでこれなのだから、この後どうなってしまうのか想像もつかない。


「つぐみさん……触っても、いいですか?」


「う、うん、もちろんっ」


 噛まないように気を付けてゆっくり訊ねると、つぐみさんは若干の驚きを見せつつも拳をグッと握って元気よく答えてくれた。

 わたしは深呼吸で気持ちを落ち着けてから、右手をつぐみさんの胸に伸ばす。

 慎ましやかな膨らみは服越しにも分かるほど柔らかく、温かい。

 緊張で速まった鼓動の音が、手のひらに伝わってくる。

 続け様に、反対側の胸に左手を押し当てた。

 妄想では決して得られない確かな感触が、胸の高鳴りをさらに激化させる。


「わたしも、触っていい?」


「はっ、はい、ぜひお願いします」


 願ってもない嬉しい申し出に、思わず声が弾む。

 以前にわたしからお願いして胸を揉んでもらった時のことを思い出し、期待感が高まってゴクリとのどを鳴らしてしまう。

 つぐみさんの両手がわたしの胸を捉えた瞬間、自分で触るのとは桁違いの快感が走る。

 ちょっと触られただけなのに、早くも自分の息遣いが荒くなるのを感じた。

 つぐみさんにも、気持ちよくなってほしい。

 わたしは指を軽く広げて不規則に動かし、パジャマ越しに胸を刺激する。


「んぅっ」


 普段はまず聞くことのできない、つぐみさんの嬌声。

 かわいらしくも色っぽいその声に、わたしはいままでになく興奮してしまう。


「つぐみさん……っ」


 わたしは無意識のうちにつぐみさんの背中に手を回し、ギュッと抱きしめていた。

 吐息のかかる距離にまで顔が近付く。


「美夢ちゃん……」


 つぐみさんがわたしの名前をつぶやき、瞳をそっと閉じる。

 わたしも同じようにまぶたを下ろし、顔を少しだけ前に動かす。

 一瞬の後に唇が重なり、チュッと小さな音を立てた。

 夢中になってキスをしているうちに、気持ちの昂りに伴って体も火照る。

 肌にじんわりと汗が滲み始めていることに気付き、息継ぎも兼ねてキスを中断。

 汗だくになってパジャマが肌に貼り付くという事態を避けるには、どうするべきか。

 エアコンの設定温度を少し下げるか、いっそのこと服を脱ぐか。

 わたしたちが選んだのは、もちろん――

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