警告と手助け

 有里に聞くところによると、そうはこの星、センターの創設者であり、社長で、未だに実権を握っている、いわばこの宇宙の治安維持の番人・・・・・・・なのだという。

 そして、宇宙で必要な、食料や物質の維持管理も、彼が行なっているということだ。



(いや、こいつマジで何歳なんだよ!?)



 軽く100は超えてるんじゃないかと恐怖心を抱く。




 ちなみに、宇宙は意外と物質が豊富だ。


 小惑星と呼ばれる自然の星には、炭素や水に石、はてには鉄やニッケルまである。


 石によって作られたソーラーパネルでエネルギーを確保でき、石によって植物などを育てる土ができる。建物には加工しやすい鉄やニッケルが役立つ。


 現在も、過去地球に住むことが出来たという時代であってもそうだった。



 地球よりも小惑星の方がそれらの物質は取り出しやすいくらいだったのだ。

 ただ、宇宙に行く費用が莫大にかかるから乱獲が行われなかったに過ぎない。



 まあつまり、宇宙では衣食住が賄える、ということだけ分かっていれば十分だと俺は思う。




(ああそうだ、何でオークションに行くのがダメか、ってな話だったな)



「皆、何故、という顔をしてるな。

 有里とみのるは知っていると思ったんだけど。

 まあ僕が説明してやる。感謝しろ」



 有里が唾を飲み込み、切迫した気持ちが伝わってきた。



「一言で言うと、オークションとは、闇市場・・・なんだよ。

 何でも誰にでも売るんだ。まさに、金が全て、だ。

 どういう過程で手に入れたものか、なんて気にもされない。だって売る場所だ。

 

 もう一度言うぞ、やめとけ。お前らには向かないところさ」


 有里は気圧されながらも、必死に喰らい付く。



「それでも行く必要があって、そして『ある品』をどうしても、手に入れなければならないとしたら?」


 有里の顔をサングラス越しに見つめ、先を話してみろ、と彼は顎で促す。




 今までの経緯を有里は躊躇いなく全て話す。

 杏子と蒼は信用に足る人間だと俺の中に瞬時にインプットされる。



 話を聞き終えた2人は、じっと押し黙る。流石は大人という風上で、動揺は表に出てこない。


 蒼が、有里に手をサラッと伸ばす。


 有里は大切な日記を取り出して、渡す。


 どうやら、彼を通さないと本当に紐は使えなくなるらしい。しげしげと蒼は見つめる。日記をだいじそうに、宝石を扱うようにペラペラと捲る。

 やはり彼は綺麗だ。見た目も、心も。



「なるほどな……

なら、俺も少しばかり協力してやらんこともない」



「本当か!?」


 有里が目をキラキラとさせて親の前にいる子供のように喜ぶ。



「……というか君、僕が手を貸さなかったらどういう行動をするつもりだったのさ」



 有里は堂々と、出たとこ勝負だ!と叫ぶように、吹っ切るように言う。



 みのると俺は当然、茫然と、胸を張って言い切った有里を見つめた。



 はぁーと長い長いため息をもらして、蒼は言う。



「俺が話を通してやる。元々あの場所は気にくわん」



 頼もしい蒼の言葉に、俺を含めた皆の目が期待に輝いて揺らめいた。

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