第15話 田舎な探検

 田舎二日目。今日は親達はあまり会えないこっちの親戚を回ったりするため、俺達にすることはなく、完全にフリーだ。


「なにしようかなぁ」


 朝ご飯を食べたあと、部屋で転がっていると、何気なく声に出ていた。暇つぶし用の小説を読んでもいいし、スマホでゲームをするのもいいけど、せっかく自然豊かなところに来ているのだから、出かけたいとも思う。


「カケル、レス知らない?」


 母がやってきた。


「知らない。そういえば今日は見てないなあ」

「どうしよう、外に出ちゃったのかしら」


 普段は家猫として外に出してないし、自分から出て行こうともしないから、完全に油断していた。

 胸騒ぎが収まらない。


「どしたの? レスちゃんいないの? 大変じゃん!」


 キクもやって来て心配する。

 そこに爺ちゃんが来た。


「猫か?」

「爺ちゃん知ってるの?」

「知らん」


 なんだよ! 期待させんな!


「昨日の首輪、着けとんだろ。じゃあ心配ない」

「名前がわかったってどこの猫かなんてわかんないだろ」

「これよ」


 爺ちゃんは自分のスマホを見せてきた。


「GPS」


 爺ちゃんの口からまさかの単語が飛び出した。


「こんなこともあろうかと思ってな」

「マジで!」


 全員で爺ちゃんのスマホを覗き込む。


「今は……神社の裏の山の方だな。たぶん、神様に挨拶にでも行っとるんだろ」


 安心、とまではいかないが、明らかな希望に絶望が消えた。


「神様って?」

「神様ってのはな、キクちゃん、むかーしむかし、ここに降臨なさった神様じゃ」


 爺ちゃんが得意げに話し始めた。俺は毎年のように聞いている話だ。


「むかしな、雨が降らんで畑や田んぼが干上がって困っとったときに、神様がやってきて雨を降らせてくれたんじゃ。それから村で頼み込んで、しばらく身をおいてもらったんよ。村に神様がおる間は、雨が降らねば降らしてもらい、台風がくればおさめてもらい、スカートの短い女の子がおれば、ちょっと強いそよ風を吹かせてもらったのじゃ」


「世俗的な神様!?」


 爺ちゃんの持ちネタなのだ。


「はっはっは。でも神様の話はホントじゃけ。猫も大丈夫、心配ない」


 爺ちゃんはそう言うが、さすがに探しに行った方がいいだろう。


 俺はGPSを確認するアプリをダウンロードし、爺ちゃんから教えてもらったレスの番号を登録して、キクと一緒に探しに行くことにした。




 GPSを頼りに山道を歩く。まだ少し肌寒いため、俺もキクも長袖長ズボンだ。地面も雨の影響はもうほとんどなく、歩くのに支障はない。

 天気も良く、絶好の散歩日和だ。


「こっちで合ってる?」

「合ってる」


 レスの位置はあまり動いていない。


「ここってさ、前に来たことあるよね?」

「覚えてるの?」


 確かにここは、小学生のとき一緒に来たことがある。


「この先に沢があってさぁ」


 言っているうちに見えてくる。


「水遊びしたよね」


 そこは道から川まで降りられるようになっていて、キクがそこを降りていく。


「足元気をつけろよ」

「今日は下駄じゃないから大丈夫」


 俺もあとに続く。


「冷たい!」


 しゃがんで川の水を手ですくったキクが声をあげた。


「小さいころ、よくここで遊べてたね」

「子供の活力ってすげぇよな。確かあとで風邪ひきかけたけどな」


 えーいと手の水を俺に向けてかけてくるキク。全然届かなかったが、もともと本気で当てるつもりもなかったのだろう。


「水着持ってくれば良かった?」

「アホか。死ぬわ」


 道に戻り、GPSを確認する。


「あれ?」

「どったの?」

「レス、神社にいるみたいだ」


 レスの位置を表すマークは昨日の神社にあった。これホントに大丈夫なのか?


「じゃあ急いで行ってみよう!」


 キクが走り出す。俺も慌ててあとを追いかけた。


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