第19話

「ごめんなさい…あなたとはお付き合いできません」


まあこうなることは容易に想像できるが片桐は当然振られた。


「どうしてだよ…!」


片桐は虚空を掴み、山上を睨みつけた。



「それは俺が答えてやるよ」



予定やり早いが、俺はこの作戦の最終段階、周りの観衆の前でこいつの本性をさらけ出す作戦を実行した。


「誰だお前? 何の用だ? 俺は今明日香と話してるんだよ! 」


「俺は2-Bの神野だ。俺が教えてやるっていったんだ」


「あ? 」


片桐はよほど切れているのか、それとも目の前の現実に目を向けられないのか俺が先輩だと知っても臆さずメンチを切ってきた。


小牧には、手を出すなといっておいた。後は俺の演技次第だ。


「まずお前のあのクズみたいなセフレのヤリチン問題。あれを広めたのは俺だ。理由は簡単だ。お前を陥れるためだよ」


「はぁっ!? お前が、俺の秘密をばら撒きやがったのか!! 」


片桐は俺を今でも殺す勢いで睨め付けてくるが、ここまで自制心を持っていないと誘導するのも楽だ。


「ああ、お前の体だけの関係の女たちも全員それがわかって離れてったみてぇだな。なあ、今どんな気持ちだ? 」


俺は普段の姑息なことに回る頭をフル回転させて片桐を煽った。


「なんでそんなことすんだよ! 俺の快楽を奪いやがって! その上明日香まで! 」


「何でそんなこと? そんなの俺の女に手ェ出したからに決まってんだろ? アホか? 」


俺はそういうと山上を自分のものと主張するように引き寄せた。


「うぅぇぇ!? 」


一応嘘なので山上に顔で

『合わせといてくれ。』といっておく。伝わっとくれ。


周りの人たちもかなり人数が集まっているのか先程からスマホのシャッター音や録画音が聞こえてくる。よし。もうみんなこいつの正体に気がついただろう…。


俺は頃合いを見計らって最後に釘を刺した。


「もういいだろ。こんな大量人の前で女のことを快楽って言ったんだからな! 大人しく今までのこと反省しとけ! 」


俺はそれだけ言うと山上の肩を寄せて片桐から離れようとした…。


しかし、


「ちくしょう! なんなんだお前はぁぁぁぁ!! 」


後ろから一瞬の殺気の後思いっきり背中をドロップキックされた。


「うぉぉッ!? 」


俺は前方に仰け反り地面に体を伏した。

いてぇ…。


よく見ると制服が地面に擦れて何箇所か穴が空き、かなり出血もしていた。


周りから悲鳴が上がる。


だが俺はあくまでも強気で片桐を煽った。


「へ、図星だから手ェ出したのか? ダセェな」


「うるさぁぁい!! 」


片桐が俺の鳩尾を狙って殴りかかってきた。

何度も言うが俺は卑怯。姑息が似合う男。当然真っ当から喧嘩なんてしない。


俺が戦いになったらまずやることは––––


「あぁぁぁッ!! 」


片桐は目を抑えて地面に手をついた。


そう。目潰しである。


流石にチョキではやらないがそれに近い。


そして俺は視覚が奪われた無防備な状態の片桐の…


「ばぁーか。もうちょっと頭使った方がいいぞ」


鳩尾を堂々と殴りつけた。

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