１７歳から始める架空からの名言引用

舞島由宇二

序文

この世に存在しない作品から心に残ったセリフを書き起こす、という錬金術のような試みをやってみようと思いました。引用元の作品媒体は小説、漫画、映画、ドラマ、戯曲、アダルトビデオなど多岐に渡りますが、やはりそのどれもが存在しません。

日本の何処かのお寺ではカッパの右腕が大事に保管されているそうです。また鬼の膝の皿が大事に保管されているお寺もあるそうです。世界に目を向けるとドラキュラの肩甲骨が大事に保管されている国があると聞きます。フランケンシュタインの喉仏などもどこかにあるようです。今挙げたカッパや鬼やドラキュラやフランケンシュタイン達は架空の存在です。しかしその架空の存在の一部分が世界のどこかにある以上、そしてそれらを本物だと思う人がこの世界のどこかにいる以上、決して彼らは透明な存在ではないのでしょう。確かな熱を持ち、輪郭を持ち、鮮やかな彩りを振りまき、私達の眼球に爪をたてる実体をともなった現象となるのでしょう。

今回まとめた架空の作品の架空の言葉もまた、ここに記したことによってその存在が静かに胎動し始めるのではないだろうか、という淡い期待を抱いております。