第10話 お色直しとレベリング!

ルルねぇが何処かに走り去ってしまったので、俺たちは冒険者ギルドを後にした。

あのまま部屋にいてもルルねぇは帰ってこないだろう。


「お前、ルルさんどうすんだよ」

「いつものへそ曲げだ。後でデザートでも作って持っていけば治る」

「手慣れてますね」


毎日一回は顔を見ないと弟成分が欠如するって言ってははばからない人ですよ。


「ルルねぇはひとまず放置しても大丈夫。それよりも、これからどうする?」

「意気込みいれちゃいましたけど、私たちまだ推奨レベルに全然届いてないんですよね」


噴水の縁に座ったルーチェさんはイベントのメールを読み込んでいる。

イベントには適正レベルが設定されているようで、今回の場合は基本ジョブ10レベルだ。


「ウェンディちゃん。今からレベルを上げて始めて、10レベルって間に合うのかな?」

「無理じゃねぇかな」


ズバッとウェンディは希望を切り捨てる。


「ゲーム内じゃあと二日あるっつっても、思ったよりも全然レベル上がんねぇし、イベント開始まで、リアル捨ててゲーム三昧ってわけにゃいかねぇだろ」

「あぅ、そうだよね」

「だからよ、別の方法でその差を縮めようぜ」


ウェンディはウィンク一つ、俺とルーチェさんの前に仁王立つ。

やたら自信たっぷりですが、その方法ってのはつまり。


「装備を整えるんだろ」

「ザッツライッ!よくわかったな、ヒュージ」

「そりゃあ、冒険者ギルドに行ってきたばかりだからな」


討伐報酬を受け取った以外に、冒険者ギルドではモンスターのドロップ品も買い取りも行ってきた。

初冒険をクリアして獲得した260ガメルは……〈HNM〉の討伐報酬が如何に破格か思い知らされて、三人揃って神妙な顔をしてしまった。


「スタートタウンつっても、探しゃアタシらレベルでも装備できるいい装備が見つかんだろ。幸い十分すぎる元手があるしな!」

「〈HNM〉の報酬金があるもんね」


260ガメルはさておき、【グラウバ】の討伐報酬の配分は終わっている。

俺が10万、ルーチェさんとウェンディが45万ずつ受け取っている。

ルーチェさんは、もっと貰ってくださいとぐいぐい来てたけど、流石にXジョブかもしれない【神楯機兵アイギスガード】に加えて、報酬金まで2人と同じくらい貰うわけにはいかない。


「装備の良し悪しはよく分からないけど、この格好はあんまり似合ってないから着替えたいです」


ルーチェさんは困った顔でロングスカートをつまみ上げた。

確かにルーチェさんほどの美少女だと質素な服では素材の良さが殺されてしまうな。


「やっぱ初期装備はどのゲームでもデザインが微妙なんだよなぁ。アタシもこのジャケットとジーンズは好きじゃねぇし」

「ウェンディでも気にするんだな」

「なんか言ったか」


しまった、つい本音が口から滑り出てしまった。

眼光だけで人を殺せそうなウェンディをルーチェさんが宥める。


「話が決まったのなら、一旦別れよう。3時間もあれば装備は整えられるよね?」

「分かりました。集合は噴水前に」


2人の了承を得て、俺たちは『ティミリ=アリス』の街に散会した。

〈エクスマキナ〉の所属が少ないとは言っても、流石に俺でも装備できるアイテムくらいは売っているだろう。

俺は揚々と武具店へと向かった。





しかして、現実は残酷であった。

5件目の武具店を巡り終え、俺は完全に打ちのめされていた。

もう店も回る気力もなく、一足先に噴水前に戻っている始末だ。

初期装備とは比べ物にならないスペックの楯や、VITを格段に上げる鎧は見つけた。

高くて5万ガメルだったから、手持ち金で購入できる。

要求ステータスも満たしているから、いざ購入!

……普通ならばそうなるのだが。


「〈エクスマキナ〉装備不可と来ますか……」


悲しいかな、種族という超えられない壁が俺を阻む。

話を聞くに、国家ごとに技術力の差があるらしい。

ここ【サンディライト】はマジックアイテムの生産力と加工技術は【BW2】でトップではあるが、〈エクスマキナ〉関連の技術がまだ根付いていないのだ。

技術を定着させようとも〈エクスマキナ〉の数は決して多くなく、むしろ減る一方なので基盤が育たない悪循環に陥っている。

プレイヤーも加工職クラフターのジョブに就くことで技術を磨けるらしいが、ロボット関連は【ダイヤリンク】か【トゥークル】まで赴かないと転職できないから望むべくもない。


「〈エクスマキナ〉が少ないわけだよ、これは」


やはり一度【ダイヤリンク】への遠征を計画すべきだろう。

でも、他の国家に移動するのだけでも金が掛かりそうだよな。


「ロボが噴水の縁に座って空を見上げる絵面は威圧感がやべぇな」

「太陽光を浴び、彫像のような美を放つこの素晴らしさを理解できんとは愚民でいらっしゃる?」


言い返して、目線を下げる。

装備を一新したウェンディがそこに一人立っていた。


「お前なんも変わってねぇけど、買い物したのか?」

「したよ。イベント開始前には届くはず。で、ルーチェさんは?」

「何言ってんだ。ここに居んだろ」


ウェンディは何もない背中に手を伸ばす。

空を切るだけでそこには誰もいない。


「もしかして、はぐれたのか?」

「いんや、さっきまで一緒に居たんだぜ……あ、いやがった!」


やおら身を翻し、死角になっている家の陰に回り込んだ。


「待って、待ってってばウェンディちゃん!心の準備がまだなのっ!」

「別にぱんつ見せてるわけじゃねぇんだから、ほれ」


ウェンディに渾身の力で引っ張り出され、ルーチェさんらしき腕が少しずつ見えてくる。


「わ、私こんな格好じゃ恥ずかしいよ!」


甲高い悲鳴を上げ、ついにルーチェさんが姿を現した。


「……ルーチェさん?」

「……あ、はい。そうです、ごめんなさい……」


だよな。

我ながらアホな質問をしてしまった。

彼女の姿に何度も目を瞬かせてしまう。

かわいい、というよりは綺麗な女の子だ。


「【神官プリースト】が装備できる【ガーベラシリーズ】のフルセットだ。回復魔法の回復量や発動速度がアップするだけじゃねぇ、【神官プリースト】系ジョブの魔法を使用するときにゃMP消費も軽減されてまさに回復職にピッタリってなもんさ。ちょいとお高く付いちまったが、似合ってるからいいだろ!」

「何でお前が誇らしげなんだよ」


早口でまくし立て、さあ見ろ!とルーチェさんを俺の前に突き出す。

甘いムード漂う白と朱色のミニスカートとボディスを、金糸をアクセントにした同系色のローブを羽織ることで上品さをワンランク格上げしている。

耳の横で丸くまとめた髪についているピンク色の花の髪留めがルーチェさんに色気を匂わせつつも、垢抜けない少女らしさを残す憎いワンポイントになっている。


「……馬子にも衣裳な女の子でごめんなさい……目が腐ったら慰謝料請求してください……」


ややあって、ルーチェさんが居心地悪そうに、おずおずと俺を見上げた。

目線が高く感じるのは、ヒールの高い靴を履いているからか。

このままだんまりを決め込むと不安がらせてしまう。


「そんなことないよ。華やかなでよく似合ってるよ」

「……その、嬉しいですけど、無理に誉めなくても……」

「無理なんかしてないよ。ルーチェさんが球体間接だったら、人目を憚らず押し倒してたくらいだ」

「……ソウ、デスカ。アリガトウゴザイマス」


喜怒哀楽をミキサーにかけたようなコクのあるブレンドフェイスをしているが、どうしたんだ?


「ヒュージはさぁ、自分が返すがえす残念だとか思った事ねぇの?」

「心の感じたまま、素直に誉めただけだが」

「……」


手で顔を覆い、いやいやするウェンディ。

なんだその外国人コメンテーターみたいなオーバーリアクションは。


「お前はルーチェさんみたいに一式を装備したって雰囲気じゃなさそうだな」

「おっと気付くねぇ。アタシはAGIに補正がかかるもんを集めたんだぜ。どうよ、ヒュージさんよぉ」


見せつけるように、尻尾を揺らして一回転。

お前如きが褒められるような安いアタシじゃない。

自信に満ちた表情は俺への挑戦と受け取った。


「ヒュージさん、突然人前で左手を顔に当てて腰曲げるのは怪しまれますよ……」

「こう、バァァァン!とかやたらポップな効果音が背中に出そうだぞ」


俺はロボットの審美に関しては一家言あると自負している。

だが、その培った経験が例えば美術品の鑑賞に活きないかと言えば、それは否だ。

作風や技術のことは分からずとも、そこに宿る素晴らしさを感じることはできるのだ。


「そもさん!」

「説破!」

「ノリノリだね、ウェンディちゃん……」

「ならば問うや。お前、髪切っただろ?」


ひゅっと喉を鳴らしてフリーズする。

この反応、正解とみた。


「待てヒュージ」

「毛先を2センチ、いや1センチ短くして全体のシルエットに気遣ってる。女性の髪のバランスは難しいとはよく聞くが、その優れたバランス感覚に20ヒュージポインツッ」

「なんですかその面妖なポイント」

「待ってくれヒュージ」

「いやらしい意味で言うわけじゃないから誤解しないでほしいんだが、均整でスリムなボディラインだからこそあえておへそを出したハーフトップと大きめのジャケットタイプを選んだんだな。特にジャケットのファーがアクセントになってるのがお気に入りだから、髪の毛に気を使ったってのが分かる。その心遣いとセンスに30ヒュージポインツ。だが、それらを凌駕する魅力がウェンディにはあると俺は今声を大にして言おう。そうだ、それは――」

「待てっつってんだろうが!」

「ホットパンツ!」


残り50ヒュージポインツの価値があるローライズ。

尋常じゃなく短いそこから伸びる健康的でしなやかな足から放たれるアッ・ドルリョ・チャギ。

その破壊力は俺の尻から快音を青空に響かせるほどに、鋭く、素早く、そしてすっげぇ痛ぇ……!


「どうだって聞いたのはお前でしょうが!」

「うっせぇ!よくもんな恥ずい言葉が出てくるな!」

「どうだ、脳力クソつよロボットの本気を見ただろ!」

「褒めてねぇんだよバーカ!」

「馬鹿って言うんじゃないよ!せめてロボを付けなさい!」


鼻を鳴らし背を向けるなり、大股で歩いていく。

彼女が足を踏み鳴らすたび、人混みが割れる。

美少女とは思えない所業は、【BW2】のモーゼの誕生を俺に見せた。


「あの、怒らないで上げてください。ウェンディちゃんは褒められ慣れてないんです」

「だからって回し蹴りを入れるもんかな」

「あれはウェンディちゃんなりの照れ隠しです。手がちょっぴり早いのは、愛嬌なのでひとつお願いします」


嬉しそうにウェンディのぴこぴこ跳ねる尻尾を目で追うルーチェさんはおかんさながらの母性を放っている。


「ウェンディのことよくわかってるね?」

「はい。大切なお友達ですから」


両手を握りこんでいつになく力んだルーチェさんに、つい笑みがこぼれた。

ここまで迷いなく言い切ってくれるなんて、ウェンディは果報者だな。


「ルーチェ!んな馬鹿は置いてレベリング行くぞ!」


耳をピンと立てて叫ぶウェンディに俺とルーチェさんは揃って噴き出すと、ウェンディを追いかけた。





装備を整えた俺たちは首都から1時間ほどの場所にあるダンジョン、〈アリスター廃図書館〉へとやってきていた。

蔵書の暴走により放棄された図書館で、プレイヤーは原因となった魔導書を制御するため最下層へと潜るという設定らしい。

推奨レベルは7だが、金にモノを言わせた装備で攻略は強引に進み、周回すること早3回。


『Bumoooooooooッ!』


暴走した魔導書を心臓として顕現したミノタウロス、そろそろ見飽き始めたボスの【ビブリオス】が雄たけびを上げる。

胸部から魔導書のページが次々に飛び出し、空中で魔法の発射準備を整える。


「ウェンディ!」

「アタシのことはいい、ルーチェのカバーを!」


俺の胴体を片手で潰せるほどの拳を楯で受け流し、ルーチェさんの場所を確認する。

後方15m、魔法が発射されるまでに走っても間に合わない距離。

だがッ!


「≪カバームーブ≫!」


スキルをキャスト、一歩踏み出すだけで距離は一瞬でゼロになる。

20m以内ならば味方の元へ移動できる【盾使いシールダー】のスキルがあればこの程度!


「ルーチェさん、光の力をお借ります!」

「お任せください!≪ホーリーガード≫行きます!」


加護を得て眩く輝く楯で飛来する火球をがっちり受け止める。

魔法攻撃はMNDに依存するから、VITが高い〈エクスマキナ〉ではうまくダメージを軽減できない。

だが、MNDを瞬間的に強化する≪ホーリーガード≫さえあれば俺でもダメージは抑えることが出来る。


「ハッ、絨毯爆撃は見飽きたぜ!」


ウェンディは火球を軽やかに避け、【ビブリオス】へと肉薄する。

AGIを高める装備を整えたと豪語していたのは伊達ではなく、爆炎を潜り抜ける姿は一陣の風の化身だ。

しかし、チャンス、と笑ったのはウェンディではなく、ミノタウロスだった。


『Buooooooooooッ!』


剛拳が振り抜かれる。

VITの低いウェンディが直撃すれば只では済まない。

だが、その歩みは止まらない。

ウェンディは信じているのだ。

自分の後ろに誰が控えているのか。


「≪プロテクション≫!」


ルーチェさんが素早く魔術による障壁を展開。

光の楯に阻まれて、【ビブリオス】自慢の拳の速度が大きく減衰し、


「≪カバームーブ≫っ!」


すかさず俺が拳とウェンディの間へ滑り込む。

二枚の防壁を破れず、奴の拳は俺の楯を微かに揺さぶる程度に終わる。

カウンターを受け止められ、動揺するボス目掛けて楯を振り下ろす。


「≪シールドラム≫!」


俺が習得した唯一の攻撃スキル、≪シールドラム≫。

VITを直接威力へ変換するシンプルさゆえに、高耐久を誇る〈エクスマキナ〉が放つとボスの腕といえども容易く地面に叩き伏せられる。


「ナイス、ヒュージ!このまま決めてやる!」


重心が崩れ、片膝をついた【ビブリオス】の胸部、その奥で脈動する魔導書をウェンディが捉える。

三叉の長槍がウェンディの意志を受け、光を弾く。


「覚えたてのスキルだ!試し打ちさせてもらうぜ!」


槍撃が乱舞し、膝を持ち上げようとする僅かな隙に鋭く、まるで機関砲の如くボスの胸部を切り貫いていく。


「これが【戦士ウォーリア】の新スキル!」


強大な刺突がついに魔導書を捉え、余りある破壊力でそのまま背中へ抉り抜く。


『Bu……mooo……!』


虎の子の一撃に貫かれ、【ビブリオス】の頭上のHPバーが粉みじんに消し飛んだ。


「≪ガトリングスパイク≫、だぜ!」

「後で言うのか、スキル名」

「分かんねぇ奴だな、これが今時のフィニッシュムーブなんだよ」

「お前ニチアサとか絶対好きだろ」


俺はハイタッチを求め、右手を上げた。

見事なドヤ顔で見返し、ウェンディは左手でわざと強く叩いてきやがった。

奏でられた勝利の美音は、ファンファーレと重なってより魅力的に耳朶を打った。


「ヒュージさん、ウェンディちゃん。お疲れさまでした」

「うん。ルーチェさんもお疲れ様」

「最後、ナイス援護だったぜルーチェ」

「えへへ、ありがとう二人とも」


駆け寄ってきたルーチェさんともハイタッチを交わし、ボスドロップを回収した俺たちは展開された魔法陣から入口へと撤収する。


「3回目だけあって回る速度が上がったよね」

「ルーチェが初めての時みたいにあばばばば!ってならなくなったってのがデカいぜ?」

「私そこまでパニックになってないよ!」


2人のじゃれあいを微笑ましく見守りながら、ステータス画面を呼び出す。

背伸びしたダンジョンアタックの甲斐あって、3度目のクリアによって【盾使いシールダー】は6レベルになっていた。

イベントの推奨レベルには届かないが、十分な成長だ。


「お、≪レイザーシャープ≫が成長してやがる!消費MPが減ってんじゃねぇか!」

「私は≪ホーリーガード≫をたくさん使ったから、≪ホーリーウェポン≫ってみんなの武器を強化するスキルが覚えたみたい。ヒュージさんはどうでしたか?」

「残念だけど、俺は今回はステータスアップだけだったよ」


【BW2】のスキルはレベルアップで覚える王道タイプ。

俺の≪カバームーブ≫と≪シールドラム≫はそれぞれ、4と5で取得した。

しかし、覚えるだけでは終わらないのが【BW2】のスキルシステム。

そこから使い込めば、ウェンディのように質が向上したり、ルーチェさんのように別のスキルへ派生したりする。


「なんだかとってもワクワクして楽しいですね」


ルーチェさんの素直な感想には俺も同意見だ。

真っ白な地図を自らの足で埋めていくドキドキ感には俺も心惹かれる。

同時に、地図があっても埋められないもどかしさも味わうことになる。


「むぅ……」

「ヒュージ、その表情ってことはやっぱか?」

「ああ、今回もだめだったよ」


俺はステータス画面を二人に差し出した。

順調に伸びていく【盾使いシールダー】に比例して、【神楯機兵アイギスガード】の成長は――なんとゼロ。


「流石は後継ジョブの特別枠さん、手強いですね……」

「1レべだから3周すりゃあ上がるたぁ思ったんだけど、甘かねぇか」

「よもや1レベルすら上がってくれないとは……」


落胆する俺の背中をウェンディがわざと強く叩いて励ましの言葉をかける。


「首を長くして気長にレベリングしていこうぜ!」

「俺の首がブラキオサウルスにならなきゃいいがな」

「ぷふっ。ヒュージさんの首が恐竜さんに……!」

「ルーチェそこツボんのか」


生々しい恐竜モチーフがこの白き機神に入り込むことに異を唱えたいが、ルーチェさんが楽しそうだから深くは言うまい。


「くすくす……。でも、ヒュージさんのステータス本当にすごいですよね。HPとか全然比べ物にならないです」

「【神楯機兵アイギスガード】がある分、1レベルアタシらより高ぇってこと除いても、Xジョブの補正値やべぇだろ」


ルーチェさんとウェンディが俺のステータスを表す六角形グラフに見入る。

現在の俺のHPは900オーバー、VITは驚異の500越え。

同じレベルのウェンディのHPが170、VITがようやく100と考えるとどれだけぶっ飛んでいるかが分かる。

その代償としてMNDとLUKが目も当てられない数値になっているが、それを差し引いても、お釣りがくるほどの堅牢さだ。

神楯機兵アイギスガード】は後継ジョブに分類されるとはルルねぇが言っていたが、ここまで強烈にステータスの補正がかかるのか。


「ここの敵はまだ魔法打ってくるからいいけど、物理偏重のダンジョンだったらノーダメだったろうな」

「ステータスだけじゃなくてスキルもバケモノだったからな、こいつは」


神楯機兵アイギスガード】唯一のスキルをウェンディが指し示す。

城塞外套ランパート・クローク≫。

VIT基礎値の15%、500ちょっとの今なら75ダメージを無効化、並びに軽減するスキルだ。

≪アイアンクラッド≫のように宣言するタイプではなく、常時発動しっぱなしと言えばその強さは推して知るべし、だ。

これだけ強力なスキルを備えているんだから、多少の罵声は覚悟していた俺だったけど……。


「1レベルでこれほど強力なスキルがあるんですから、ほかにどんなスキルが隠れているんでしょうか。楽しみですね、ヒュージさん」

「くぅーうらやましいぜ!さっさとアタシも後継ジョブになりてぇなぁ!」


こうして2人は嫌な顔を一つせずに付き合ってくれる。

本当にいいフレンドだ。


「ならさ、日付が変わりそうだけどあと1周くらい頑張るか?」

「そうこなくっちゃな!」

「はい、頑張りますっ」


三人揃って力強く拳を突き上げる。

明日のイベントに向け、気合はばっちりだ!


……そう意気込んだはいいものの、ダンジョン半ばで全員睡魔に負けて攻略を挫折したことは反省すべき点だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る