第35話 カンストスキルの力

中村さんが、俺を守ってくれた……?


華奢な中村さんが寺田のナギナタをさばいた……信じられないけど、もしかして……

剣を構えてる姿は細い体を感じさせないほど凛々しく見えた。



中村さんはチラッと俺のことを見てすぐ寺田に構えをとった。


「あの……箕輪さんが助けてくれたんですよね? ありがとう……ございます」


「い、い、いや、、そんな……全然大したことじゃ……」


い、いきなり話しかけられるから戸惑ってしまった……

しゃべり方はいつも通り気の弱そうな中村さんだ。



突然攻撃を防がれた寺田は困惑していた。


「中村さん……なんでこんなところに?」


異常に血走っていた寺田の表情が少し元に戻ってるような……


そういえば、菅原を殺した時寺田は中村さんを探してるって言ってた、今は黒沢に魅了されてしまってるけど心のどこかで中村さんへの気持ちが残ってたってことか?

間近に触れたことで少し理性を取り戻したと思うべきか……


「やっぱり生きてたんだ……箕輪さんを守ってるってことは2人は組んでるってことね」


黒沢の声が聞こえ寺田の顔はまた洗脳された充血した目に戻った。

寺田は一度中村さんから距離をとった。


「変ねぇ……さっきまでの中村さんとは別人みたい、ちょっと前に私が触れた時の中村さんなら絶対今の攻撃はかわせないとおもうんだけどなぁ」


「俺は殺す気でナギナタを振り下ろしたんだ、初めて剣を持つ女がさばけるは思えない」


黒沢は警戒するそんな寺田の姿に苛立ってるみたいだ。


「若井さんを殺せたんだから、こんなちっちゃい女一人に手こずるなんて言わないでよ、ついでに箕輪さんもやってちゃってよね! でも、とどめは私がやるから殺さないでよ!」


俺はついでかっ!! バカにしやがって……


まあ奴らには言わせておくとして、寺田の驚き方をみるに中村さんの切り払いは偶然ではなさそうだ……





「フンッ!!」


妙な掛け声とともに寺田がナギナタを振り回しながら中村さんに向かって行った。




「中村さん!」


思わず声をかけていた。


俺を庇ったさっきとは違って今度ははっきり中村さんを狙ってきてる……


「大丈夫です」


言葉は強気だけど、いつも通り弱々しく、か細い声で中村さんが立ち向かった。



ナギナタを打ち払い氷の飛沫があたりに舞う。

すかさず寺田は二撃三撃と入れていくがことごとく中村さんは弾いていった。


すごい……見た目のギャップはかなりのものだ、こんなに強くなるなんて……

これがスキルのレベルを上げた力……



中村さんが目を覚ます前に色々ステータスをいじってみたらスキルの部分も変更できることがわかった。


◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️

名前:中村 かな 性別:女

身長:145 体重:38

状態:普通


所持スキル

剣術技能(レベル99)

◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️



今の中村さんのステータスだ、思い切って剣術技能スキルをカンストする99にまで変更してみたけどそれが今の結果だ。 想像以上ではあったけど寺田を圧倒している。


寺田のスキルはかなりの強さなのは間違いないけど、高レベルのスキルひとつだけでも入り込む余地はありそうだ。




「何ふざけてるの? マジメにやりなさいよ」


なかなか中村さんにダメージを入れられないことに黒沢は相当ご立腹だ。


「ハァ……ハァ………ふざけてるつもりはないんだ、攻撃が当たらない……」


寺田はかなり動揺してる……若井を倒して自身もあっただろうに中村さんに通用しないとは思わないよな。


「バカなの? アンタのスキルはその武器を振り回すだけじゃないでしょ!」


黒沢、キャラ変わったな…………


「……そうだな……」


寺田は気を入れ直したみたいだ。


「中村さん、寺田は……っと寺田さんは持ってる武器だけじゃなくて燃やしたり凍らせたりもしてくるから、気をつけて」


アドバイスをしたけど中村さんは俺を見ず寺田に集中していた。


「大丈夫です……」


きっと俺に返事をしたんだと思う。



寺田が足元を狙って攻撃するが、中村さんはサッと身を引き回避した。


「甘い!」


ナギナタは地面をえぐり凍りつき、そこを中心に凍りはじめ中村さんの足まで氷に覆われた。


足止めが狙いだったんだ、これじゃ回避ができない……



「死ねええええええええ!」


殺意満々で火の玉を何発も中村さんに飛ばしてきた。

仮にもちょっと前まで探してた相手だろ!


足止めされている中村さんは火の玉に構えをとる。

火に対して身構えたってどうしようもないんじゃ……



ボッと音がした。

ろうそくの火を吹き消した音を大きくしたような……


それと同時に火の玉が消えた。



早すぎて見えなかったけど、中村さんが消したんだよな……?


火の玉はまだ何発も向かってきている。



それも同じように中村さんに近づくとボボボッと音を立てて続けて消えいった。


間違いない、火の玉を斬って消滅させたんだ。

そんなことできるものなんだ……



続けて足を止めていた氷を斬りつけ、足を自由にした。



「すごい……」


思わず、声に出していた……



「理由は分からないんですけど、できる気がして体が動いてくんです……」


いつになく中村さんがハキハキと喋ってる、なんと言うかちょっとうれしそうだ。


これがカンストスキルの力……寺田のスキルを完封してしまっている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る