社会人サークルの集会で隕石がブチ落ちて大変なことになる話

ヴァレー

第1話 隕石が落ちてきて異次元にブッ飛ばされた人々

ようやくコロナウイルスが終息し、長らく中止していた関西創作交流会が開催される。

関西創作交流会は、創作をする人たちが集まる社会人サークルだ。メンバーたちは、久しぶりに会うメンバーたちとの歓談を楽しみにしていた。


ここではメンバーたちはハンドルネームで呼び合う。古参であるmk-2(まーくつー)は、開催30分前に待ち合わせ場所に到着した。

そこにはすでに主催者であるヴァレーがいた。


mk-2「お久しぶりです!あいかわらず早いですね!」


ヴァレー「(・∀・)ニヤニヤ お疲れっす!」


ずいぶん自粛が続いていたこともあり、いつもと変わらない日常が戻ってきたことを実感でき、二人は思わずニヤけてしまう。


mk-2「今日はいい天気ですねー。あ、例のゲーム、ちょっとずつ制作が進んでいるんですよ!今日はその進捗もお教えしたいです」


mk-2の創作は多岐にわたるが、その中でもゲーム制作ができるのが彼の強みの一つだった。


ヴァレー「お、あれですね?関西創作交流会メンバーを登場させるという」


mk-2「そうそう、メンバーたちがゲームの世界に入り込んでしまうという」


ヴァレー「いいですねぇ。ストーリーが気になります」


mk-2「キャラ設定は考えてるんですけど、ストーリーがなかなか思いつかないんですよね。そういえばこの前のオンライン交流会では、ヴァレーさんがストーリー考えてましたよね?」


ヴァレー「考えてましたねー。ちょうどこんないい天気の日、関西創作交流会が開催される。すると突然隕石が会場に降ってきて大爆発、皆が異次元に飛ばされてしまうという」


mk-2「ちょwww あれは笑えました」


ヴァレー「mk-2さん知ってますか?隕石って秒速50kmで突っ込んでくるんですよ?数年前にロシアに落ちてきた隕石は斜め方向だったので動画で撮影してた人とかいましたが、地面と垂直方向に落下してきたら大変ですよ!もし空が曇っていたら、雲から隕石が出てきた瞬間に地面に激突します!」


mk-2「それはどういう意味で?」


ヴァレー「曇りの日の雲というのは高層雲(こうそううん)、あるいは雨雲のことを乱層雲(らんそううん)といい、地表面から2km~4kmくらいの高さの雲なんです。すると地面と垂直に隕石が秒速50kmで降ってきた場合、雲より上にあるときは目に見えませんから、隕石を我々が確認できるのは雲を突き抜けた瞬間になります。しかし秒速50kmが4kmを通り抜けるには0.1秒もかかりません。つまり隕石が雲を突き抜け、我々がこれを視認してから0.1秒で地面に激突し、核爆弾数百個規模の大爆発を引き起こします。あれ?何か降ってきたぞ?と思った瞬間死んでるわけです。恐ろしいですね!」


mk-2「そ、そうですね(なんでそこに細かくこだわるんだろう…)」


ヴァレー「今日はほら、快晴の空ですからそういうことは起こりません。たとえ隕石が垂直に降ってきても、落ちてくるずっと前から、月を観察するようにずっと前から視認できます。ほら、あそこに何か見えませんか?あの小さな空の点は、もしかしたら隕石かもしれませんよ?」


ヴァレーは空の上を指さした。確かにそこには小さな粒が見える。


mk-2「鳥か飛行機でしょうね」


ヴァレー「ですよねー!まあこれが作り話の世界なら、まさかの隕石落下で『伏線即回収!』みたいになるんですがね。残念ながらこれは創作の作り話ではないんですよ」


mk-2「即回収ってww」


??「おーい!」


mk-2「あ、takeさんだ!」


take「お二人ともお久しぶり!相変わらずヴァレーさんキョロキョロしてますね」


mk-2「ちょっと面白い話を作ってたんですよ。僕が作ってるゲームのストーリーがまだ決まってないんですが、ヴァレーさんがストーリーを考えてまして」


take「へー、どんな?」


mk-2「今ここで隕石が降ってきて、大爆発が起きてみんな異次元に飛ばされるっていうストーリー」


take「ヴァレーさんが考えそうなストーリーですね」


mk-2「もしこれが作り話だったら、本当に隕石が降ってきて伏線即回収になりますよねって話してたんです」


take「隕石ってww」


ヴァレー「でもmk-2さん、あれ本当に隕石に見えませんか?」


mk-2「…え?」


ヴァレーが空を指さすと、先ほどの空の粒が少し大きくなっているように見える。


mk-2「いやいやまさかww」


take「飛行機ですよね、あれ」


ヴァレー「マジで隕石かもしれんのですよ」


mk-2「漫画じゃあるまいしww」


しかしそんなことをいっている間にも、空の粒はどんどん大きくなっているように見える。


mk-2「あれ?え?」


take「ちょっとずつ大きくなってますね…マジだったりして?」


mk-2「まさかほんとに…いやいや、そんな偶然あるわけないでしょう。ねえヴァレーさんはそういう偶然とかって、いざというときは絶対信じない人ですよね?」


ヴァレー「信じませんよ。漫画みたいな都合のいい偶然なんか起こるはずがない。しかし…」


mk-2「しかし?」


ヴァレー「我々が気づいていないだけで、実は今の我々は誰かが創作した作り話のキャラクターで、今我々はこの世界が創作であるとはどういうわけか自覚できずにいる…としたら?」


mk-2「え?いまこの世界が創作の世界?」


ヴァレー「いまこの世界や私やmk-2さんやtakeさんは、実は誰かが作ったキャラクターなのかもしれんということです。例えばヴァレーが作った作り話のキャラクターであるとか」


mk-2「いやいやまさか。僕は今こうやってちゃんとここにいますし、意識がありますよ?」


take「それは面白い発想ですね」


ヴァレー「いまこんなに我々の意識ははっきりしているけれども、何者かの創作によってそう思わされている。いかにもこれが現実であるかのように思わされ、そのキャラクターとして動かされているとしたら?だったらこれは作り話なのだから、あれが隕石であってもおかしくはない。あれはきっとここに落ちてくるでしょう。そして隕石はここに向かっているように見えます」


mk-2「って、そんなこといってる場合じゃないですよ?あの粒、マジで隕石なんですか?本当にちょうどここに向かってるように見えます!」


take「ど、どうしましょう?」


ヴァレー「落ち着いて皆さん。もしこれが作り話の世界であるなら、たとえ隕石が我々の頭を直撃しようが、誰も死ぬことはありません。絶対」


mk-2「ほんとですか?なんで?」


ヴァレー「だって創作の中の話でしょ?きっとヴァレーが作った話に決まってます。なら主人公たる我々が死ぬわけないじゃないですか」


mk-2「そんなバカな?」


take「ちょっと、冗談いってる場合じゃ…」


頭上に大きな影ができ、やがて頭上をまばゆい光が覆い、昼間なのに太陽が二つあるかのようだった。


mk-2「うおまぶしっ!」


take「落ちてくる…」


ヴァレー「いいですか皆さん。もし次に目が覚めた時、我々が生きていれば、ここはヴァレーの作った創作の世界なのですよ…」


mk-2「ぎ…」


ヴァレー・mk-2・take「ギャアアアアアーーーーーー!!!!!」



・・・・・・



mk-2「うーん…あれ?」


気が付くとmk-2は、何かの建物の中で倒れていた。


mk-2「あれ?さっき僕はヴァレーさんとtakeさんと一緒にいて…それで隕石が降ってきて…あれ?生きてる?それとも死んでいるのかな?ここは死後の世界とか?」


立ち上がってしばらく歩いてみる。大理石の建物の中にいて、巨大な柱がいくつもある。まるで古代ギリシャの建物のようだ。


mk-2「ここはどこだろう?意識ははっきりしてるけど、これでも死んでるのだろうか?」


突然建物の向こうからまぶしい光が見えたと思うと、何かがこちらへ飛んできた。


ヴァレー「わーーーーっ!」


飛んできたのはヴァレーだった。


mk-2「おわぁっ!?ヴァレーさん?」


ヴァレー「あいたた…」


mk-2「ちょっと!ヴァレーさん?」


ヴァレー「おお、mk-2さん、無事でしたか」


mk-2「無事って…あれ、ここって死後の世界じゃないんですか?」


ヴァレー「そう考えそうですが、ここは死後の世界じゃありません。生きてます。そして我々が生きているということは、ここは創作の世界なんです」


mk-2「まだいってる…」


ヴァレー「その証拠に、今私を吹き飛ばした人物がこれからやってきます。彼を見れば、ここが創作の世界だとわかるでしょう」


mk-2「ヴァレーさんを吹っ飛ばした人物?誰ですかそれは?」


建物の奥のほうからやってきた人物は、黄金の鎧を着た、たくましい男だった。


??「この獅子宮を通るものは殺す!」


mk-2「うわっ!誰ですかあれ?いきなり殺すとかいってますよ!」


ヴァレー「彼はレオ(獅子宮)のアイ〇リア。某アニメのキャラクターです。普段は紳士的な強い男ですが、悪者の手によって悪に洗脳されているのです」


mk-2「アニメの人物?え?」


ヴァレー「いったでしょ?ここはヴァレーが作った作り話の世界だと。以前私が頭の中で作ったストーリーと同じなんです。交流会の日に隕石で皆が異次元に飛ばされ、某アニメの敵キャラクターたちと戦いながら地球へ戻るというストーリー」


mk-2「なんでそんなカオスな話作るんですか…」


ヴァレー「間違いなくそのストーリー通りに進んでいます。そして今目の前にいる彼は我々の敵。しかも強敵です!」


mk-2「わかりました。もう無茶苦茶すぎてわけわかりませんが、とりあえず目の前に金色の美しい鎧を着たイケメンがいるという事実は現実では考えにくいです。しかたないなぁ!めちゃくちゃだけど今はヴァレーさんのいうことをに従いますよ!それであの人はどういう人なんですか?ヴァレーさんほんとにあの人のこと知ってるんですか?」


ヴァレー「今我々はアニメの世界の中にいるんです。そういう話なんです。それでここは獅子宮という建物の中で、ここを通ろうとする者を、彼は殺しに来ます」


mk-2「じゃあ逃げましょうよ!」


ヴァレー「まあここにいる時点で殺され確定ですね。そのアニメの主人公だって、ここを通り抜けるつもりでやってきたんです。それに元の世界に戻るには、ここを通り抜けてずっと向こうへ行かなければならないんです」


mk-2「じゃあ戦うしかないんですか?喧嘩とかしたくないんですけど…」


ヴァレー「あの男はアイ〇リアという大変強い男で、光の速さで殴ってきます」


mk-2「え?光の速さってどういうことですか?」


ヴァレー「アニメの設定では、彼は光速拳の使い手で、光の速さで1秒間に1億発のパンチを繰り出すという強者です」


mk-2「それ、勝てないですよね?絶対勝てないですよね?僕らは戦士でも何でもないし、どう見てもただの人ですよ?事情を話して説得しましょう!」


ヴァレー「物理学の法則に当てはめると、光の速さでパンチを打つと理論上は無限の運動エネルギーが発生します。つまり彼がパンチをした瞬間、その衝撃波のせいで地球が木端微塵になるはずです。さっき彼の光速拳を食らいましたが、地球が吹っ飛んでいないどころかこの建物すら壊れていないので、光速というのはザル設定ということでしょうね」


mk-2「そんなことどうでもいいから!ちょっと、やってきますよ!」


アイ〇リア「お前たち…ここに来るということは、死ぬ覚悟はできているんだろうな!」


mk-2「光速の拳で殴られたら即死ですよ!」


ヴァレー「大丈夫。アニメの中でも主人公は光速拳を10発くらい食らっているのに、戦いが終わってもピンピンしてましたから、実際はほとんどダメージなんてないんですよ。ジャ〇プの主人公キャラはどうせ耐久力が無限だから、いくら食らっても死んだりしないし、死んでもすぐ生き返るに決まってます」


mk-2「そうなんですか?死なないのはうれしいけど、でも痛いんですか?」


ヴァレー「主人公たちの表情を見る限りかなり痛がってますね。まあヴァレーが作る話だからバイオレンスでデストロイヤーな展開になるのは避けられないかと」


mk-2「痛いの嫌なんですけど!ってかなんでそんな話作るんですか!」


ヴァレー「それよりもm-2さん、地球に戻るためには、実は…」


アイ〇リア「死ね!ライト〇ング…ヴォルトーーーー!!」


ヴァレー・mk-2「わーーーーーッッ!!」




続…かない


END

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