さらば、友よ

月を見る

どんぶりの中の月は

まるくやわらかく輝いている

鰹と昆布の香る出汁だし

漂う豊穣の金色こんじき


ここで連れが無粋なことを言う

「え? 月見、潰さないで食べる派?」


連れの丼を見ると

黄金の月は無残に崩され

澄んだ出汁は濁りきっている

何という傷ましさ、惨たらしさだろう


更にやつは言う

「えー、最後にちゅるんと飲む派? 行儀悪くね?」


貴様こそ

人類の叡智の結晶である出汁の澄み切ったうまみと

美しき月のコクとまろやかさを

ぐちゃぐちゃに混ぜたくって

双方を穢し、冒涜しとるだろうが


もう二度と共に食卓を囲むことはないだろう

さらばだ、友よ


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