小さな白い壷

私は大人である

大人であるから

子どもよりはお金持ちである

駄菓子屋で豪遊なんて

オチャノコサイサイなのである


私が子どもだったとき

「これ食べたい」と指差したのは

壷型の容器に入った謎の白い油脂

クラスのみんなが食べていて

私だけが食べたことがなかった

けれど、母は顔を曇らせた

「ねえ、他のにしたら?」


もう私は大人である

大人であるから

何を食べてもいいのである

駄菓子屋で憧れていた菓子を買うときは

箱買いが大人のたしなみである


あれほど食べてみたかったそれを

匙ですくう胸の高鳴り

そして、恭しくひとくち


なんだこれ


母の表情の理由

大人の口の奢り高ぶり

これをうまいうまいと食べていた小学生たちの

なんと愛らしいことよ


どうすんだよ、この残り

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