Baroque

麻城すず

プロローグ

 新進気鋭の画家、行方不明。

 




 四年前の新聞の社会欄、その片隅に載せられた記事。まだ一般的にさほど名の知られていなかった彼の記事を眼に留めたのは、親族や知人、それから少数の愛好家程度であっただろう。


 それから約三年後、彼は無事に保護されたが、行方不明の間のことは一切記憶にないと言い張った。


 その言動にはいくつか不自然な点があったものの、事件性がなかったため深く追及されることはなかった。 

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