5

 ──変わってしまう自分が怖かった


 あの女の子を殺した時の記憶はない。しかし、確かなのは手に残る血肉を裂いた後の感触が物語っていた。その日、アカツキはヒカゲにすがる思いで頼み込んだ。


「お願いっ私が誰かを傷つける事をしたら絶対に止めてっ」


 アカツキは、ヒカゲに嫌なお願いをしてしまったと悔いたが、ヒカゲならそれを守ってくれるだろうと確信が持てた。

 あれから何日経ったか分からなくなるほど、アカツキの意識は混濁していた。


 周りから歓声が聞こえる。手に持っているのは血濡れた鎌。あたりに広がる肉片。自身の服に着く赤黒い染み。


 ──もっと、もっと見たい。綺麗な赤い血をっ


 頭の中に響く声。それは誰のものだろうか。あたりに飛び散る血を愛おしく思う声。


 ──私の……声?


 混濁する意識。そんな中、白髪の少年が瞳に映る。


「お前は俺の心を照らす光だ! なら俺もお前の心を照らす光になれないかっ」


 そう叫ぶ彼の言葉。それは以前、アカツキが少年に語りかけた言葉。

 自分の言葉なのに、こんなにも心を動かされるのは、そう叫んだヒカゲのお陰なのだろう。ヒカゲの声音が、アカツキを意識の混濁から連れ出すように響く。

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