ボクと怜悧

 幼馴染がいる、というと聞こえはいい。

 幼馴染がいて、相手が女の子で、可愛ければ、すでに勝ってる。

 だが、そんな話は、現実にはない。

 漫画なら、鉄板と言ってもいい設定だ。

 と、いうことは現実ではありえないってこと。

 今時、幼稚園児だって知ってるって。

 そんな方々に朗報です。

 ボク、森下才蔵には、美少女の幼馴染がいます。

 しかも、超の付く。

 ですが、残念なことに、ここ2、3年、まともに話してません。

 報告は、以上だ。

 小学生の頃は、あいつも良く笑うやつで、遊びの趣味も被ってた。 

 好きなゲームのジャンルも一緒(女子のくせに、RPGとかシミュレーションとかが好き)で、土曜日の午後はパワプロやって、日曜日は桃鉄で遊んだ。

 もちろん、小学校低学年までは、近所の連中を誘って、鬼ごっことかかくれんぼもしたし、高学年になってサバゲ―もした。

 雨の日は、信之おじさんに教わって、一緒に将棋も打った。

 だけど。

 中一までは、一緒に学校に行ってた。

 まったく、中二ってやつは。

 あいつが、怜悧が悪いんじゃなくて、ボクが悪いんだけど。

 なんだか急に一緒に登校するのが、嫌とかじゃなくて、ただ、なんていうか恥ずかしくなって、わざと先に独りで登校したり、学校でも、前から怜悧が来ると、わざわざ友達見つけて怜悧に見せつける様に走って行って、殊更楽しそうにしてる内に、ついに、怜悧が家まで迎えに来なくなった。

 はっきり言って、後悔している。

 そのうえ、こちらが失ったモノの大きさに見悶えている間に、何があったのか、(多分ボクのせいなんだろうけど)あいつは笑わなくなっていた。

 それから。

 中二、中三と来て、今高イチ。

 せっかく同じ高校になったのに、怜悧とは前の様に話せていない。

 幼馴染から、近くに住む同じ高校の人に格下げ。

 そんなん沢山いるから、つまり、その他大勢だ。

 それでも、周囲からはそれなりに羨ましい目で見られていた。

 主に親しい友人に限るけど。

 何故なら、やつは、怜悧は、スーパー美少女になっていたから。

 もちろん、ボクは小5くらいからその片鱗に気づいていたさ。

 でも、なんか、背が伸びたり、その、あれだ、体つきが大人に成るにしたがって、凄まじいことになってしまった。

 凛として引き締まった、しなやかな後ろ姿。

 長く、ほっそりとした手足。

 健康的だけど、浮かぶ血管が妙に艶めかしい白い肌。

 背の中ほどまである、光沢のある黒髪。

 すっと通った、形のいい尖った鼻。

 まっすぐな細い眉の下にある、大きすぎない、アーモンド形の目と、黒く輝く宝石のような瞳。 

 そして、両目の下にある、涙みたいな小さな黒子。

 薄い唇は桜色で、ほとんどの場合、何かを我慢するかのように引き締められているが、時折、そう、ほんの時折笑うと、嘘のようにきれいで白い歯並びが見える。

 白い歯がこぼれると、桜色の唇も、それより少し濃い色の舌も、断然魅力を増す。

 あとは、まあ、あんまり大きな声では言いたくないが、細いからあんまり目立たないけどけっこう女らしい体つきだ。

 アイドルでもいるよね、そういう人。

 まあ、そう言う訳で、あの過ぎ去った、自分でもちょっとよく分からない、中二という季節を呪いつつ、最近は寂しさと切なさと、なんだかモヤモヤしたものを抱えて、布団の上で見悶えながらも元気に生きている。

 

 

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