第20話

二人の剣士が城内にある闘技場兼訓練場に向かい合っていた。片方は、白い鎧を身にまとい、片方は黒いローブを着ている。

他の騎士たちも見学に来ており雰囲気は少し騒がしい。オールズも見学に来ていた。

だが、仕方ない。五将の試合だから。


五将。騎士団と団長と一部例外を除けば、王国最高戦力ともいえる者たち。

その一人、ダルブ・ハクザン

近接戦闘を得意とする。剣の達人。

まだ若く潜在的にも優れた騎士である。

タルブはすでに剣を抜いているが、マドウは鞘から抜いていない。


「では、行くぞ。」

「いつでも構わない」


決闘と言うことで武器は一時的に返してもらった。腰には三本の刀と剣。

タルブは剣を構えるが、マドウは自然体でゆったりとしている。構えとはいえるものではない


審判はジーク。二人の間に入り、両者を交互に見た


「ルールは相手に参ったと言わせること、これだけだよ。ただ死に至らしめる攻撃は禁止。あくまでこの決闘は実力を確かめるだけだからね」


そう言うと、もう一度二人の顔を見て開始しても大丈夫かと確認する。両者共に準備は出来ているようだ。


「それでは、始め!」


先ずは、ダルブが斬りかかる。体を引いて回避。しかしそこから、ダルブの連撃

上下左右様々な方向からの怒涛の攻撃。


「でた!<連動剣>」

「剣先が見えない!」

「流石は、五将だ!」


騎士たちは、大声を上げて試合を見学。五将の試合ともなれば盛り上がるのは当然。ダルブはもちろんだが、マドウにも驚かされる


「全部避けてる!」

「見えてるのか、、」

「冒険者にこれほどの者が、、」


上から下、左から右と剣が次々と通過する。全て行動が一流だが、当たらない。マドウには、かすりもしなかった。


「なかなかの剣だ。身体強化、そして自身の積み上げた剣によって流れるように連続攻撃を放つ。単純な技だがそれ故に強い。」

「そうだ。これが<連動剣>。反撃を出来るもの慣らして見せろ」


<連動剣>を躱しながらマドウが冷静に分析を話した。未だに反撃はしない、怒涛の攻撃に避けるしかないと言うことではない。

相手の実力を見て、自分の物にしてやろうと考えていた


(無駄のない剣術。見ていて、カッコいい。これは俺のモノにしなければな。)


全ての剣を完璧に見切るだけでなく、自身のステップアップの為に避けに徹していたのだ。貴重な五将との決闘をただ終わらせることはしない。


開始から、数分が経過。場内は異常ともいえる試合をただ見ていた。剣の振る音が響き渡る。


(大体見切れた。良いものを盗ませてもらった。流石は五将、)


マドウが、腰にある剣に手を伸ばした。ゾクっと何かを感じたダルブが、剣を止め後ろに下がる。

直観的な物、根拠などないが無視せざるを得なかった。


「下がったぞ!」

「ダルブさんが!」

「なにをしたんだ!」


(今、何か感じた。あれ以上は踏み込めないと無理やり分からされた。)


ダルブが剣を構え、何かに備える。何が来るのかと警戒するダルブは、次のマドウの行動に目を見開いた

大胆にも、真っすぐ歩いて行ったのだ。ただ一直線に

。これには、見学者全員が驚く、何もしていない。ただ歩いて行くだけ


しかし、間合いに入りかけた時再びダルブは下がった。

下がらずを得ない。

 

(引く以外に道がない。だが、これ以上無様な姿は見せられない。、、覚悟を決めて突っ込む!)


ダルブが身体強化をフルに使い、間合いを極限まで詰めた。そこから上段切りを、、放とうとしたが


次の瞬間、世界が光ったと思ったら自身の持っている剣は粉々になっていた。


「<煌めく世界>、、、」


「参った。、、」


ダブルが呟いた。武器を破壊され、実力の差をここまで見せられたら降参以外選択は無かった


「!、、勝者。マドウ・ロッタール」


驚きながらジークが試合終了を宣言し、マドウもその場から去る。見学者は何が起こったのか分からず呆然とするが次には、拍手を送った。両者を称える音が場内では、暫く鳴り響いた



「ここまでとは、、」


五将である。ステッドもこの試合は見学していた。そして、次元が違うことを認識した。スピードとパワー全てが段違い過小評価していたと自信を恥じた


「普通ではありませんね、、」


ステッドの隣で見ていた。同じく五将で唯一の女性騎士、サリー・フルマーク。彼女も実力の異質さを感じ取ったの。


「最後、見えなかったすよ。あれは負けてもしょうがないっすね」


ダルブと同期で、五将の一人である。エザル・リュスク、笑いながらも少しビビッている彼。


「これは、勇者の育成は彼に任せるべきだな」

「私は、異論有りません」

「俺も、否定の材料がないっす。実力が違いすぎるっすから」


五将たちも、彼の実力に勇者の育成を反対する者はいない。しかし、マドウ自身はどう思っているのだろうか、、


闘技場の端っこで、いったんマドウは待機していた。表情はどことなく満足げだ。


(きまったな。猛烈な俺tueee。爽快な気分だな、まぁやられた方は気分はそこまで良くないだろうが、何とか立て直すだろう。)


勝って実力を証明したのは良いが、肝心なのはこれからだ。異界からくる勇者の育成である


(勝ったのはいいけど。勇者の育成、したくねぇぇ。チート持ってる奴育てたくねぇんだよな。俺より強い奴を育てるのって何か嫌なんだよ。でも、王様の依頼断ったら立場悪くなるよな、、。)



どうしたものかと考えていると、審判をしてくれた。ジークと対戦したダルブが向かってきた


「お疲れ様。驚いたよ。想像の何倍も強かったからね」

「、、それなりに訓練はしているからな」

「もしよかったら、騎士にならない?試験受ける必要はあるけど、君なら受かるだろうしさ」

「いや、俺は冒険者を続けようと思っているから遠慮させてもらおう」

「それは残念だよ。騎士団も人員が不足してるからね。五将の席も一つ空きっぱなしだよ」


二人が話していると、ダルブがジークの後ろから一歩踏み出してマドウに頭を下げた

 

「変に疑ってしまい申し訳ありません。貴方の実力は本物だった。疑っていた自分が恥ずかしい」

「気にすることは無い。」

「ありがとうございます。」


先ほどの刺々した感じが嘘のように丸くなっていた。腰を九十度に曲げ一礼する。

体育系のノリだ。


(側落ちしたヒロインみたいに、態度が変わったな。別にいいんだが、俺的には適度に突っかかってくる位が好きなんだよな。俺tueeeしやすいし、、、)


何かと因縁をつけてくる者をマドウは、意外とを好きだったりする。自身が活躍できるから、、、その後ダルブがマドウにさん付けで呼び始めた



場所が変わり再び、王室。玉座にはオールズが座っている。マドウは王の前で膝をついている


「やはり、貴殿に頼みたい。引き受けてくれないか、勇者の育成を」

「私は、誰かに戦闘を指南したことはありません。いきなり勇者の育成は荷が重いかと、、」

「いや、お主以外適任はいない。私は確信しておる」

「そうですとも、マドウさん以外適任はいません!」


ダルブもいきなり大声を発した。オールズのアシストをする、これにより断りにくくなってしまう

周りもそうだそうだ、といきなり指示が大きくなる


「分かりました。出来る範囲で、、」

「引き受けてくれるか。感謝する」

「ただ、一つよろしいですか?」

「報酬なら、かなり出すが、、」

「いえ、そうではなく、、、」


マドウが引き受けたので、喜びがあふれるオールズだがマドウが条件をつけてくるので顔が引き締まった。


「もし、召喚された勇者が戦いたくない意思を持っていた時、その時はどうされるのですか?」

「その時は無理に戦わせるつもりはない。あくまで力を貸してくれるといった者だけ戦ってもらうつもりだ」

「それを聞いて、安心しました。無理に戦わせたり、訓練させるのはあまり好きではないので、、」

「そこに関しては心配はいらない。こちらはただ頼む身、断られたのならそれはそれだ」

「それでしたら、引き受けさせて頂きます」



この後、王様にお礼を言われ王室を退室した。しかし、今日は日程が目白押しこの後は、王国主催のパーティーが開催だ。

少し時間が空くが、騎士の訓練を見学などをして時間を潰し、気づけばもうすぐ始まる時間だ。


「それじゃあ、色々大変かもしれないけど頑張ってね」

「、、ああ、要らん心配をかけてすまないな」

「いや、いや、こっちが呼んだんだから普通だよ」


ジークとマドウが横並びになりながら会場に向かう。パーティー会場は王城の中にある。既にある程度は集まっているらしい。ジークは騎士の鎧ではなく、スーツのような服を着ていた

マドウも着替えを貸してもらい、スーツに近い格好をしていた。



「ここだよ」

「そうか、、、」

「まぁ、適当にあいさつすればいいんじゃないかな?多分だけど、、、」

「分かった。挨拶だな。、、、」


扉の前で、二人が足を止める。マドウは少し緊張しているようで、、、心臓の鼓動が早くなっていた


「それじゃあ、行こうか。」

「ああ、」


ジークが扉を開けた。中には、豪華な食事と派手な格好の貴族たちだ














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