第13話 新たな後ろ盾

 もう一つの違和感とは浴槽にお湯がないということである。


 こういう展開なら、女の子の残り湯に入るときに、躊躇っ《ためらっ》たり自分と葛藤するシーンがあるのがお決まりなはずだ。なのにお湯がない。


 

 俺は一日でお決まりの展開を二つとも失ってしまい。もう起きている気力がなくなった。


 「もう疲れた。早く寝ようぜ。」

 「こういうのって修学旅行の夜みたいに遊ぶもんじゃないの?」


 少し不機嫌にさせてしまったがもう起きている気力はないので寝させてもらうことにした。



 結局俺がベッドで寝たので、俺の上に紗耶香さやかが落ちてくることはなかった。



 お決まりの


 「夏彦君、もう寝た?」

 「まだ寝てないよ。」

 「実はね私…」   


 みたいなやり取りもできずに寝てしまった。俺は二日間で三つのお決まりの展開を逃したのだ。



 なんやかんやあったが俺らの作戦合宿は無事終わった。

 ほとんどが勉強だったが……


 

 作戦合宿が終わった次の日、俺たちはまた集まった。


 「今回の一件で、人々の考えが私たちと同じ方向に傾いてきていると思うの。だから今のうちにもう一回SNSに投稿して、より応援者を増やしたらいいんじゃないかと思うの。」

 「大賛成だ。今回の警備型ロボットの写真が流出したのを無駄にするわけにはいかない。」

 「そうと決まれば投稿よ。」


 “先日皆さんが見た写真は、火星側が地球に送り込んできた警備型ロボットの一つです。あれが今回は十体前後送り込まれてきました。見ての通り火星側と地球では圧倒的な技術差があります。この差を埋めないと火星と対等にやり取りすることができません。”


 “なので皆さんにお願いです。世界各国が資源的に協力し合い、我々も独自に技術開発を進めましょう。火星移住計画によって失われはしたものの地球には高度な文明がありました。今再び皆の力を集めれば火星に追いつけるはずです。”


 できるだけ早く地球全体で工業などの発展が見られれば。


 俺たちはそう願った。


 

 投稿から数日後、俺たちのアカウントに思わぬことがおきた。アシダー党から返信が来たのだ。


 “君たちが投稿をして、民衆を動かそうとしていたのは知っていたが、まさかここまでだったとは正直予想していなかった。我々も微力ながら協力させていただきたい。火星から送り込まれてきた警備型ロボットは解析がもうすでにすんでいて、データなどは地球の大手会社に送ってある。また、特許の出願が行われた際のデータはすべての会社と工場に提供した。これで少しでも早く地球の工業が発展することを願っている。”

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