終わる世界で君と…

赤のアドベンゼン

第1話 平凡の終わり

 俺の名前は家門夏彦やもんなつひこ


 毎日何の変哲もない生活を繰り返している。

 

 多分今、毎日日記を書けと言われれば、「寝て起きた」で埋まるだろう。


 一つだけ周りの人と違うのは妙にリアルな夢を見ることが多いことだ。回数はどうであれ、夢自体は明晰夢めいせきむと言って病気ではないらしいが回数は確実に人とは違う。


 今日もいつも通りバスに乗り、高校から帰宅していた。


 今は夏だから、まだ明るいが手首の時計を見ると針は六時を指していた。


 夏休みに入る前テストがあるとか急に先生が言うものだから、学校で長い時間勉強する羽目になった。俺は早く帰って昨日発売の新作ゲームを進めたいっていうのに。


 時事問題の対策でもするか、と思ってスマホを開きニュースサイトを見た。


 ニュースサイトを開き一番に目に入ってきたのは最近のニュースではなく、地球の寿命についてだった。確実に時事問題で聞かれることはないだろうが気になるので記事を開いてみた。


 20世紀にアメリカの思想家であり、建築家でもあったバックミンスター・フラーは我々が住むこの惑星ほしを例えた「宇宙船地球号」という言葉を有名なものとした。


 その宇宙船がいつまで持つのか、そんなことについて長々といろいろな観点から述べられていたが、結論としては約100年だという。


 俺はもう死んでいるな。その結論を確認すると俺は時事問題の確認に戻った。



 到着の10分ほど前になって突然バスの挙動がおかしいことに気が付いた。明らかにさっきから蛇行運転を繰り返している。


 周りから心配する声が聞こえてくる。


 「大丈夫ですか、大丈夫ですか。」


 そんな声が聞こえてきて、何が起きているのか気になった俺はスマホから目を上げた。


 なんと心配されていたのは運転手だった。次の瞬間耳を突くような甲高いブレーキ音とともに体が大きな衝撃を受け、横向きになった。


 俺は頭を強く打ったようで、痛みが治まらない。周りからは小さい子供の泣き声なんかも聞こえてくる。だんだん頭が働かなくなっていき遠ざかる意識の中、あぁ俺はこれで終わりだなと思った。



 気が付くと俺はふかふかな柔らかい何かに横たわっていた。俺はあの後死んだのだろうなと思ったが、周りを見渡すと見慣れない景色が広がっていた。


 それは自分が住んでいた世界でもなくて、天国でもなく、近未来的なメカニカルな世界だった。よく本などで読んだことのある、俗にいう「転生」なるものをしてしまったのだろうか、そんなことが科学的にも倫理的にもあっていいのだろうか。


 そんなことを考えながら自分の体を起こしてみる。体に力が入りにくく、相当衰弱しているなと自分で感じた。


 近くに人はいるのだろうか。ここはどこなのだろうか。体を起こして視野が広がったため、疑問が増えた。俺はその疑問を解決するために問いかけてみた。


 「誰かいますか?」


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