2話 吸てる神あれば拾う神あり

※注意※ これはSoul Keeper(s)本編 37話と38話の間の話になります。

     本編37話まで読んでいただくとこの作品をより一層楽しんでいただくことができます。


ガチャ、と鍵の開く音がする。

時刻は午前1時。

「おかえりなさい!!!!」

本田が出迎える。

「ああ、そうか。お前が居たのか。忘れてた…ん?なんか綺麗になってねぇか?」

「はい、この部屋と洗面所とトイレとお風呂だけですが!」

九条はテーブルに袋をいくつか置く。

「これは…?」

「食料だ。食っとけ。俺はシャワー浴びてくる。」

そう言って九条は風呂場に行った。


「おい…食べとけって言ったろ。」

九条は頭を拭きながら言った。

「いや、そう言われても一応界人さんが手を付けてからと思って。」

「何でだ?」

九条は訊く。

「それはあなたが俺の命の恩人だからです。」

「…。」

九条は袋の中の食品トレーを取り出した。


「ところで…これはどこから?」

本田は頬張りながら訊く。

「…賄いと廃棄だ。」

九条は水を飲む。

「お前には言うが…俺は5つのバイトを掛け持ちしてる。そのうちの1つの料理店のものだ。」

「い、5つ!?」

本田は驚く。

「界人さん、高校生ですよね?」

九条は口の中の物を飲み込む。

「…ああ。」

「夏休み中の高校生でも5つも掛け持ちしないですよ!?」

九条はエビチリを箸で掴む。

「だろうな…でも、生きるためだ。」

九条は食べ終わったごみを捨てた。

そして奥の部屋へと向かう。


「ごちそうさまでした!!!!」

本田が食べ終わった頃、九条は部屋から出てきた。

「本田、職が見つかるまであの部屋使え。」

先程出てきた部屋を指さす。

「え…俺お金なんて持ってないですよ!?」

「あとでいい。まあ、俺もそこまで裕福じゃないから、長居はさせられないがな。」

「ありがとうございます!!!このご恩は…必ずお返しします!!!」

本田は泣き出す。

「おいおい…。」

「さ、早速!!明日ハローワークにでも!!!」

本田は張り切る。

「いや、明日は付いてきて欲しい場所がある。」

「あ、はい。」

「じゃあ、また明日な。」

九条は自分の部屋に入る。

「おやすみなさい!!!」




翌日

2人はどこかへと歩いている。

「界人さん、どこへ行くんです?途中でわざわざカステラも買って。」

本田は訊く。

「妹の所だ。あとこれは妹の好物。」

九条は持っている紙袋を見せる。

「妹…。」

本田は呟く。

神妙な面持ちで九条は話し始める。

「ああ、俺が随分とガキの頃。10年ぐらい前になるか。」

信号が赤になる。

「俺たち家族は…事故に遭った。」

「え…?」

「相手は居眠りのトラック。両親は即死、俺は特に後遺症もなく助かったが妹は…。」

バスが通り過ぎる。

本田は言葉を失う。

「そして俺はこの鉄の両手ミタマを手に入れた…、最初の方こそ親戚筋に預けられ俺ら一家を憐れんだが、いつしか周りは俺のこの力を忌み、妹は疎まれるようになってこの生活を強いられてる。」

九条は歩くのをやめた。

「ここだ。」

巨大な総合病院の前に立っていた。

「え…?」

本田は困惑する。


「入院してたんですか!?」

驚く本田。

「ああ、言っただろ。俺は助かったが妹は10年近く入院を強いられてるって。」

2人は病室へと向かう。

「そもそも妹は体があまり丈夫じゃなかったみたいでな、家庭事情的にも完全に面倒を見きれる状態じゃねぇしな。」

1つの病室のドアを開ける。

「九条 柚佳ゆか」と書かれている。

「あ!!お兄ちゃん!!!」

元気にはしゃぐ少女が居た。

いくつかの管に繋がれている。

「よ。お土産だ。」

九条は紙袋を差し出す。

「あ!!カステラ!!!…お兄ちゃん、そこのおじさんは?」

柚佳は本田を見る。

「ああ、この人はな。」

「こんにちは、おじさんね。「本田 猛人」って言います。界人くんに命を救って貰ったんだ。何か恩返しできないかなってついてきてるの。」

本田は笑顔で挨拶する。

「そうなんだ!!一緒だね!!」

柚佳は笑顔で返す。




夕方

病院から2人は帰る。

「いやー、界人さんに似て…すごく…すごくいい子ですね…!!!」

本田は咽び泣く。

「やめろ、そして拭けよ。きたねぇ。」

九条はハンカチを差し出す。

「ぐすっ…うう…。」

本田は涙を拭く。

その時。

キキキキキキキィギィイイイイイイイイイイイイイイ!!!グアアアアアアアアッガァッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!!!

遠くから響く。

「まさか…。」

九条は冷や汗をかく。



九条たちが駆け付けると現場はものすごい惨事になっていた。

「クソ…!!!!」

「界人さん…。」

二の陣形フォーメーション・ツー護る者ガーディアン!!!!浮遊せし剛盾ホバーボード!!!!乗れ!本田!」

をボードのようにして飛び乗り、移動する。

「奴の霊力の質は覚えてる。これが奴の仕業なら…。」

九条は感知する。

「居た!!一の陣形フォーメーション・ワン拳の者ハンズ!!!今度こそ逃がさねぇ!!!」

に変え、この間の男を殴ろうとする。

が、煙の渦によって覆われ、防がれる。

「まさか…。」

「やあ…少年…フゥ…と君達風に言うと「灼熱の男」。」

つばの広い帽子と外套を羽織った男が煙を伴って現れた。

「「煙の」…「男」。」

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