第4話「告白」

 クリスと一緒にパーティーを組み始めてから二週間がたった。

 ここ最近はずっとクリスとともにクエストに出掛けている。

 ゴブリン、コボルト、他のパーティーと合同でのダンジョン探索など様々なクエストをこなしてきた。これもクリスのおかげだ。私一人だけではここまで多くのクエストをこなすことは出来なかったであろう。

 まあ、欲を言うなら一撃熊などの一撃が重くて気持ちいいモンスターの討伐をしてみたかったのだが。クリスがしきりに止めるのでやむを得ず受けるのを断念している。


 私は今、今日のクエストを終え、ギルド内にある酒場でクリスと共に夕食を取っている。

 すると、クリスが突然ーー。


「ねえ、ダクネス?ダクネスってもしかすると貴族だったりするの?」


 突然そんなことを聞かれ、私は思わずネロイドを吹いてしまった。

 しかし、なぜだ?私のことを貴族と知る者は冒険者カード作成の時に共にいたギルド職員しかこのギルド内にはいないはずなのだが。


「ど、どうしてクリスはそう思うんだ?」


 恐る恐る尋ねてみると、


「えー、いやさ?ダクネスって妙に食べ方や飲み方が上品だからさ、もしかしたら貴族でそういった作法は完璧なのかな〜って」


「そ、そうか?別にそんなことはないと思うのだが...」


 まさか、そんなことでバレてしまうのか。このまま誤魔化すこともできるがこの際クリスには正直に伝えておこうか。


 私は改まって姿勢を正し、


「そう、クリスの言うとおりだ。私の名はダスティネス・フォード・ララティーナ。この地を治める領主、ダスティネス家の長女だ」


「えっ、ええええええええーーー!!」


「しーーー!声が大きいぞ、クリス!」


 私の正体に驚いたクリスが大声で出すのを止めさせるが、それも遅く既に周りで飲んでいる冒険者達の注目の的となってしまっていた。私の正体が貴族だと冒険者達にバレてしまうのはマズイ。冒険者の中には貴族に対して良く思っていない者も多いだろう。

 私はクリスと共にギルドの隅の方へ移動し、周りの冒険者達に聞こえない様、小声で話す。


「いいか、クリス。私が貴族であるということは他の冒険者達には言っていない。彼らの中には貴族に対して、良く思っていない者もいるからな。このことは、一部のギルドの職員ぐらいしか知らない。だから、他の冒険者にも黙っておいてくれ、いいな?」


「う、うん。えっ、いや、かしこまりました。その、ダスティネス卿これまでの無礼をどうかお許し下さい!」


 クリスが私が貴族と知って、突然謝ってくる。


「や、やめろクリス!このことは、私が自分から黙っていたことだし、謝る必要はない。むしろやめてくれ!これまで通り、クリスの友人ののダクネスとして接してくれ。言葉遣いも今までと同じにして欲しい」


「わ、わかったよ。今まで通り普通に接するね。いやー、けどダクネスが貴族じゃないかと、薄々思っていたけど、まさか国の懐刀のダスティネス家だとは思ってなかったよ」


 クリスが予想外の事だったのか、一本取られたよ言わんばかりに頭を掻きながらそんなことを言ってくる。


「しっかし、ダクネスはどうしてあたしなんかにそんな大事なことを教えてくれたの?あたしがもし、他の冒険者達にこのことをばらしちゃったら大変なことになるんでしょ?」


「ぷっ、ふふっ」


 私は思わず笑ってしまった。


「えっ、ええ?いやいやなんで笑ってるの、ダクネス?」


「いやすまない。クリスが変なことを言うのでな思わず笑ってしまった」


「へ、変なことじゃないよ!私が言いふらしたりしたら大変なことになるんでしょ?いいの?」


「私はクリスがそんなことをするような人間ではないとわかっているから正体を打ち明けたのだ。クリスを信用してこその告白だ」


「ううっ、確かにそんなことするつもりは無かったけど...。そんなことを言われたら恥ずかしいよ...」


 クリスは少し顔を赤くして、俯いてもじもじしながら、そんなことを言った。


「ま、まああれだ。これからもよろしく頼むクリス」


「う、うん!こちらこそよろしくねダクネス!」


 私達は改めて固い握手を交わした。

 が、なぜかクリスがニヤニヤしながらこちらの顔を覗いてくる。


「そう言えばダクネス。キミ、いつも『うむ』とか『そうだな』とか固い感じで話しているけど、本名はララティーナなんて可愛い名前だったんだね」


「ッ!?」


「いやー、あれだね。ダクネスって名前よりもララティーナっていう可愛い名前の方が似合ってるよ?ね、ララティーナ?」


「あれ?もしかして照れてるの?顔赤くしちゃって可愛いね、ララティーナ?」


「せっかく本名を打ち明けてくれたんだし、敬意を持ってちゃんと呼んであげないとね?ララティーナ?」


「ら、ララティーナ言うなぁぁ!!こんなことなら、打ち明けなければ良かった!」


「うわー!ララティーナが怒ったぁぁ!!」


 散々からかって来たクリスを追いかける。

 怒りと恥ずかしさで顔は赤く染まって、淫らな顔をしているのだろう。それを他の冒険者冒険者達に見られている...。




 それもまた、たまらんッ!!


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