一度フラれたはずの幼馴染から告白されて付き合ったら、そのまま同棲する事になりました。

なべつかみ

プロローグ 幼馴染に告白した話

俺 山下裕太には好きな人がいる。


その人は俺の幼馴染である、齋藤陽葵だ。


陽葵とは小学校から高校二年生の今までずっと同じ学校に通っていた。


そんな陽葵だが、はっきり言って可愛い。

幼馴染の贔屓無しに可愛いのだ。


陽葵は小学校の頃から男子に好かれる対象として見られてきた。


小学校高学年の時、陽葵と一緒に学校から帰ろうとして下駄箱を開けると、陽葵の下駄箱から大量のラブレターが落ちてきた事は今でも鮮明に覚えている。


しかし、そんな男子からモテモテの陽葵は今まで告白してきた男子を全員断っているらしかった。


その理由を中学校三年生の時、陽葵からフラれた友達の話によると、『そもそも男子と付き合う気がない』との事だった。


正直、その段階で告白することを諦めておけば良かったのかもしれない。


もしかしたら幼馴染で他の男子よりも長い時間一緒にいる自分なら大丈夫かもしれない。


そんなどこから来たかよく分からない希望を持っていた俺は、陽葵に告白する事を決意する。





そして時は過ぎ、高校二年生へと進級した俺は未だに陽葵に告白出来ずにいた。


正直なところ、フラれることを恐れているのだ。


もしそこでフラれてしまえば、恐らく今後陽葵と仲良くする事は無くなるだろう。


しかし、俺も男だ。いつまでもこの恋心を引きずっていても、陽葵からの返事は変わらない。


そして俺はその日の放課後、陽葵に教室に残ってもらい、告白しようとしていた。


「ねぇ裕太、話ってなに?」


陽葵の方から、俺に話しかけできた。


話しかけながら陽葵は、長く艶のある髪を手でまとめながら、口にくわえていたヘアゴムでポニーテールにしようとしていた。


ただ髪をまとめているだけなのに、とても絵になる。


「ん、裕太?話って?」


髪をまとめていた姿に見とれていた俺は陽葵を待たせてしまっていた。


「あぁごめん、話っていうのはな…」


俺は覚悟を決め、告白した。


「陽葵、俺と…付き合ってください」


「ん……ごめん、無理なの」


終わった。俺は陽葵にフラれてしまった。正直、分かりきっていた。それまで普通の関係の幼馴染からいきなり、『付き合ってください』なんて、そんなの無理に決まっている。


「そうだよな、ごめん」


そう言った俺は逃げるように教室から出ていった。





一人で家に帰っていた俺は、失望していた。


フラれると何となく分かってはいたが、いざ本人からの返事を聞くと、中々ショックだ。


これで陽葵との関係も終わりか…


そう思っていた俺は一人寂しく家の玄関を開けた。


しかし、この時俺は知る由もなかった。


明日から一度フラれたはずの幼馴染と、恋人になるということを。

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