吸血姫と少女

アオイユウヒ

ガールミーツガールとLooking for her mother

お姉さんと少女

日本の郊外にある、とあるボロアパート。実は結構訳ありだったりするのだが、そのアパートの大家さんの部屋の真下にあたるところに、中学生ぐらいの少女が立っていた。








私がいるのは真っ暗な通路、成人済みの高身長な男性なら頭を下げないと通れないような、それでいて幅は一メートルあるかどうかといった狭く土で出来た通路だ。 暗闇を照らすのは私の持つ懐中電灯だけ、そしてその光は目の前に立ちふさがる壁とその壁に立てかけられた梯子を照らしていた。


「着いたの…かな」


今までずっと一人で歩いてきて、ようやく漏らした私の声は土が吸収してあまり響かなかった。

梯子はしごの先を追って光を上に向けていくと、木で出来た扉が私を見下ろしていて、勝手ながらあまり歓迎されてないような印象を抱く。

目的地に着いたことを確信した私は、この通路を教えてくれた人に貸してもらった懐中電灯を落とさないように気を付けながら梯子を上っていき、扉に手をかけようとしたところで一抹いちまつの不安にかられる。


「‥‥‥ほんとにこんなところに相談して大丈夫なのかな」


地下からこの通路に入る際固めた決意は、長く暗い通路を歩く中で鈍ってしまったようだ。

臆病風に吹かれた私が引き返そうかなと思い始めたその時…


「いらっしゃ~い!!」

「~~~~~~~~~っ!!?」

「あれ?見かけない子だね……とりあえずお上がりなさい!」


扉が向こう側から勢いよく開けられ、綺麗な女の人が顔を出してきたのだ。

まさか向こうから開けてくるとは思わなくて驚いてしまった。


(もしかして声とかが向こうに漏れていたのかな…?)


向こうも想定していた相手ではなかったようで一瞬怪訝けげんな顔を見せたが、すぐに笑顔に戻り私が昇るのを手助けするため手を伸ばしてくれる。

恐る恐るその手を握ると、片手で私をと引き上げると、私が履いていたスニーカーをポポイっと脱がして梯子を登った先の部屋にある玄関に並べた。

どうやら随分と力の強い人らしい。





「今お茶入れるからその辺座っといてね~。話はお茶飲みながら…ね?」

「お、お気遣い痛み入ります」


引き上げられた先は畳張りの(言っちゃ悪いけれど)狭い部屋で、部屋の真ん中にはちゃぶ台とそれを囲む数枚の座布団があった。

ひとまずそれに座って待っているようにうながすお姉さんの言葉に従っておく。


座布団に腰を下ろし、持っていた懐中電灯をちゃぶ台の上に置いたところで、一度落ち着いたためか睡魔が一気にやってきた。

今はまだやることがあるんだ、と必死に抗う私だったがこの睡魔がなかなかの強敵で一進一退の攻防となる。

『強敵』と書いて『友』と読む人たちが世の中には居るそうだけれど、今の私には『強敵』と書かれても『邪魔』としか読めなさそうだった。


やはり緊張しているせいなのか私が無駄なことばかり考えていると、お姉さんがお茶を二つ持って戻ってきた。


「お待たせ~、緑茶だけど大丈夫だよね」

「大丈夫です。緑茶、大好きです」

「ふふふ、緊張しすぎ」


お姉さんに指摘されたことで赤くなった顔を誤魔化すように、入れてもらった熱いお茶を飲むと目が覚めて気持ちも落ち着いた。

一息ついた私を見たお姉さんは柔らかそうな物腰で質問してくる。


「お話を聞く前に、ここに来た経緯を教えてくれるかな?」


私は、この通路を教えてくれた探偵所の人もまずは経緯を説明しろと言っていたのを思い出しながら、ぽつりぽつりと語り始める。



「その…半年前、お母さんが急にいなくなっちゃったんです……」



あぁだめだ……。

もう涙は枯れたと思ったのに、少し話しただけでこんなに簡単に溢れてきて……声が湿しめる。


「朝買い物に行ったお母さんが夜遅くになっても全然帰ってこなくて……いつもならお昼前には帰ってきて一緒にお昼ご飯を食べるから、おかしいと思ったんです…」


涙が溢れて上手く喋れない。


「警察に電話して事情を説明して、捜索してもらったんですけど、全然見つからなくて……うちはお父さんがいなくてお母さんと二人暮らしだったから、お母さんがいなくなってからは私家にずっと独りぼっちになっちゃって…」


のどが狭くなったみたいで、息が浅くなる。


「でも、一昨日おととい家でお母さんの部屋を掃除してたら偶々たまたま、お母さんが残した『何かあったらこの住所に行って事情を説明して助けてもらいなさい』って書かれたメモを見つけたんです」


ちゃんと…説明しなきゃ………。


「その住所にあった、探偵事務所さんのところに行ったら、地下に通されて……この通路を行った先の人に事情を説明しなさいって言われて、あと暗いからって懐中電灯も渡されて、」


何度も鼻をすすり、涙を乱暴に手でこする。



「ほんとに真っ暗ですごく長い通路で何時間も歩いたんじゃないかってぐらい歩いてここに来たんです……お願いです、私のお母さんを見つけてください!お願いします!!どうかお母さんをっ」


見つけてください!と言う前に私はお姉さんに抱きしめられていた。

すごく暖かくて、もし私にお姉ちゃんが出来るならこんな人がいいなんて場違いなことを思ってしまう。

お姉さんから伝わってくる優しさに、涙を少しでも抑えようなんて私の考えはすぐに決壊けっかいし、自分からもお姉さんに力いっぱい抱き着くと涙を思う存分流した。


今の私の顔は涙と鼻水でぐちょぐちょだったから、普段の私ならお姉さんの服を汚さないように離れようとしていたと思う。

でも、あいにく今の私はそんなことを考える余裕もなく、ひたすらお姉さんの胸でわんわんと泣き続けた。







どれくらいの時間が経っただろうか、私の流す涙の勢いが少し弱まったことを見たお姉さんが静かに、優しく言葉を切り出した。


「あなたお名前は?」

「……………リリアです」

「そう、リリアちゃん……。大丈夫よ、あなたのお母さんはきっと見つけてあげるわ……」


お姉さんは私の名前をささやいて、私をなだめるようにゆっくりと、ひと言ひと言をつむいだ……。

そして私の背中を撫でながら、またすぐにお母さんに会えるから、と繰り返していく……。


私は泣き疲れたのか、緊張が解けたのか、もしくはただ単に長い道のりを歩いて疲労してしまっただけなのかはわからないけれど、そのままお姉さんに抱かれて意識を微睡まどろませていく…。

眠る前も、眠ってからも私を包み込んでくれたお姉さんの暖かさは、約半年ぶりに私を幸せな気分にしてくれた。






▼▼▼






目を覚ますと知らない天井ってやつだった。

ぼんやりとした頭でここはどこだろうなんて考えてると、トントントン・・・と久しく聞いてなかったまな板と包丁の奏でる音が耳に入ってくる。

半年前までは毎日聞いていたその音に懐かしさを胸に抱きながら体を起こすと、女の人の声が飛んできた。


「あっ起きたー?」


声の発信元へと顔を向け、その明るい声の主の姿を認識して状況を思い出す。


(そうだ、私は昨日‥‥‥)


「ってわぁ!!なんで泣いてるの!?怖い夢でも見ちゃった?」


お姉さんが心配そうな声で駆け寄ってくる。

泣いてる?

その自覚がなかった私が、自分の目元に手を持っていくと確かに濡れていた。

泣いていたのか私は。

でも私が泣いてる理由、それはたぶん怖い夢なんかじゃなくって……


「嬉しいからだと思います……起きたとき誰かがいてくれるのが久しぶりだったから……」


寝ていた姿勢から上体を起こしただけの私に目線を合わせ、心配そうにのぞき込んでいたお姉さんは、音を出さず静かに息を飲んだように見えた。

そして昨日みたく、私をギュッと抱きしめてくれた。


「大丈夫、リリアちゃんのお母さんは絶対見つけるし、それまでお姉さんが一緒にいるからね…」


だからもう安心してね、と言うお姉さんは、ゆっくり安心させるような手つきで私の頭を撫でてくれる。

その手が気持ちよくってつい身をゆだねてしまいそうになるが、昨日より少しは落ち着きを取り戻した私にはだんだんと羞恥心がよみがえってきた。

私ったら昨日会ったばかりの人に二度も泣きつくなんて!!


「もっ、もう大丈夫です!それにあのっ、お姉さんの服がいろいろと濡れちゃいますから!!」


慌てて離れようとする私だったが、お姉さんは少し強引に私を抱きしめ続ける。


「そんなの気にしなくていいのよ、ほらまだ抱きしめててあげる」


お姉さんがちょっと楽しみ始めたような気がするのは気のせいだろうか。声がうきうきしている。

お姉さんの胸に抱かれたまま顔を上に向け、すぐそこにあるお姉さんの目を見て反抗の意思を伝える。


「かっ、からかわないでください!」

「からかってなんかないわよ~♪」


この人絶対からかってる!何とかして逃れないと……。

なにか、何かちょうどいい口実はないのだろうかお姉さんを引き離す口実……そうだ!


「あのっ!お料理途中だったんですよね!よかったら私にも手伝わせてください!」

「……ふ~ん、そういうこと言っちゃうんだ~」


にやにやと私を見ていたお姉さんだったが、慌てる姿を見て満足したのかようやく解放してくれた。


「まぁいっか、それじゃお言葉に甘えて朝ごはんの準備手伝ってもらおうかな。でもそのまえにシャワー浴びてきなさい。それが終わったら、一緒に作りましょ」


お姉さんの言葉に抱きしめられた際赤くしてた顔が、やっと元に戻りつつあったのに、また熱を帯び赤くなっていくのが感じられた。

そうだ、そういえば私昨日ここについた後、お姉さんの胸で泣いてそのまま眠っちゃったからお風呂に入ってない!!

レディとしてあるまじき失態である。

まして私はすでに、お風呂に入ってない身体でお姉さんと抱きあっているのだ、もし臭いなんて思われてたらどうしよう。

なんて考えてると更に顔が赤くなってくる。


「大丈夫全然臭くなんてなかったよ、むしろいい匂いって感じ♪」

「どんな感じですか、もうっ!」


お姉さんは見透かしたようにフォローしてくれたけど、やはり恥ずかしいものは恥ずかしいので急ぎお風呂場に向かうことにした。

服を脱いで洗面所にあったカゴに畳んで入れ、浴室に入ってシャワーを浴びる。


シャワーを浴びているときに後ろが気になるのは仕方がないのだろうか。

つい誰かいるような気がして後ろを確認する私。

まさか本当に誰かいるとは思ってもみなかった‥‥‥。

振り返った先には、ドアを挟んですぐ向こうに立つシルエットがあり、たまらず悲鳴を上げそうになる。が、それを止めたのもそのシルエットから聞こえてくる声だった。

…って言うか、シャワーの音に交じって聞こえてきたのは、お姉さんのとろけたような声だった。



「ん~、やっぱりいい匂いだよ~リリアちゃーん」


ふぁっ!!?


「ちょっと待ってください!!何してるんですか!!もしかして私の服のにおい嗅いでるんですか!!」


シャワーを止めて、急ぎドア越しにお姉さんに食ってかかる。


「そーだよ~、うんいい匂い!!」

「そーだよ~じゃありません!!早くやめてください!!」


息を切らして止めにかかる。

実はこの人変態なんじゃないだろうか。

だが、息を切らしたかいもあって、どうやらお姉さんは匂いを嗅ぐのを止めてくれたらしい。


「ごめんねー洗濯しといてあげようと思ったら、あまりのいい匂いについ……ねっ。あぁそうそう、私の服代わりに置いとくから出たらそれ着てね」


ついっ、じゃありませんよ全くもう。

お姉さんが離れていったようなので気を取り直して、叫ぶ際に止めていたシャワーを再び出し始め、身体を十分に濡らしてから洗っていく。

ちなみに私は身体を洗う際、上から汚れを落としていくように髪、顔、体の順で洗っていく。

特質すべき点で言えば、お母さん譲りの『まるで光の糸を束ねてできているんじゃないかって錯覚するよ!』なんて友達が言ってくれてて、自分でも気に入っている金髪、肩甲骨の下あたりまで伸びてるそれと、私の中では汗をかきやすい部位である首元は他よりも入念に洗っていくところだろうか。


お姉さんと同じもので洗ったのに、お姉さんに抱きしめてもらった時の匂いと違うのはなんでだろう。

やはりお姉さん自身の香りが大事なんだろうか。

すごく落ち着くようないい匂いだったなぁ、可能ならばもう一度抱きしめてほしい……ってこれじゃ私もお姉さんと同じで匂いフェチみたいじゃない!

私は悶々もんもんとしながらもある事実に気づいた。


あれっ、そういえば私お姉さんの名前まだ聞いてなかったな、いつまでもお姉さん呼びじゃだめだよね。

お風呂あがったら名前とかこれからのこととかいろいろ話さなきゃ‥‥‥。



▼▼▼



お風呂上がりの私に鼻息を荒くしているお姉さんを見てその変態性を再確認しながら、私はお姉さんと一緒に台所に立った。そして朝ごはんを作り終えると、例のちゃぶ台についた。


「リリアちゃんてまだ小さいのにお料理上手なんだね。お姉さん、リリアちゃんがお嫁に欲しいな~」

「母とも一緒に作ったりしてましたから…あと小さいは余計です」


ふんっ、後半のくだらない冗談はスルーしちゃいます。

それに身長はスタイルの良いお姉さんからしたら小さいかもしれないけど、学校では少し高いほうなのに……。

なんてことを思いつつ箸をすすめていく。

……うん結構おいしくできている気がする。

ご飯をおいしくいただき洗い物まで二人でやり終えると、私たちは昨日と同じようにちゃぶ台を挟んで座った。

ただ空気は昨日より柔らかいものになっていて、外から入ってくる朝日も私たちの気分を少し明るいものにしてくれていた。


「それじゃ、改めて自己紹介から始めましょうか。        

私はライラって呼ばれてるこのアパートの大家さんなんだ、ライラお姉ちゃんって呼んでほしいな♪好きなものはかわいい女の子、あと最近ニンニク料理にハマってるよ」


これからよろしくね。と簡単かつ明るく自分を紹介を終えたライラさん。

(ライラお姉ちゃん云々はスルーしておくとして。……恥ずかしすぎるし)

こうやって改めて明るい中でライラさんを見てみると、その美しさに目を奪われてしまう。

それに加えて初めてあったとは思えない、まるで何百年もの時を共に過ごした恋人のような安心感、愛おしさがこみあげてくる。思わず抱き着かなかったのが不思議なぐらいだ……。


(まあ何回か既に抱きしめられているんですけど……)


肩にかかるかどうかといった長さの、私と同じ金髪。ルビーを思わせる紅の瞳。白いのに病弱さを感じさせない陶器のような肌は、首にかけられた銀のロザリオと相まってまぶしさすらこちらに伝えてきそうな勢いである。

台所での立ち姿から170ちょっとはありそうな高身長、彼女が履いているジーパンは長く、程よい肉つきの脚に込められたエロさを主張している。


そのうえ胸だって私に比べてちゃんとあってなんかこう、美乳って感じ?でも私だってまだ中一でこれから大きくなるし、そりゃクラスのみんなよりもちょっと、ほんのちょっと小さいかもだけどお母さんはこのお姉さんより大きいぐらいだったし、娘の私もきっと………

なんて考えたところで思考が脱線してることにようやく気づいた。


「呼ばれてるってことはあだ名なんですか?ライラって名前」


たしかライラって夜を意味する言葉だったよね…。

なんかお姉さんの印象にしっくりくる名前で、名付けた人ナイス!ってひそかに思っていたりする。


「ううん、そういうわけじゃないんだけど…ちょっとね……」


なんだろう、そこまで言われるとすごく気になるけどなんか事情があるっぽいし聞かないほうがいいよね……。

気を取り直して自己紹介をする。


「私は昨日名乗った通りリリアって言います。今は中学一年生の十三歳です。あと…料理と読書が好きです!」


ふんふん、と心なしか前のめりになりながら、私の自己紹介を聞き漏らさないようにしてるライラさん。そんなに真剣に聞かれるともっと話さないといけない気になるから不思議だ。


「あと、その…学校の友達にはリリアちゃんって呼ばれてたんですけど、お母さんには『リリー』って呼ばれてたんです。だから、その……ライラさんはとっ特別に、私のことリリーって呼んでもいいでしゅよ!!」


最後の方少し噛んじゃった気がしたけど、そこはもう勢いだった。

恥ずかしくてそっぽを向いてる私、ビクビクしながらもライラさんのほうに向き直ってみると様子が少しおかしかった。


「ゕ、かわいい‥‥‥」

「へ?ラ、ライラさん?」

「リリーちゃんかわいい!うちにお嫁に来て!もしくはライラお姉ちゃんって呼んで!!」


むぎゅー。

違う、少しなんてものじゃない!なんかライラさんが完全に暴走してるよ!鼻息荒いし。

あれ?もとからこんな感じだったような……。いや、それにしてもなんか勢いがすごい。まずい、抵抗しなければっ―――


「ちょっとライラさん何言ってるんですか!?それに勢いに任せて抱き着いてこないでください!」

「フフフッ、リリーちゃんが可愛すぎるのがいけないんだよ?」

「なに……私のせいにしてるん…ですかっ!ほらいいから離れてっ……」


まずい、さすがに大人と中一の私じゃ力に差が‥‥‥それにこの人微笑めばすごい大人の色気出してくるのに、今みたいにこうやって笑ってると少し幼いというか可愛いって感じの魅力を出してくるのだ。

そのギャップになにか言い表せないものがこみあげてくる気がする。

なんか受け入れてもいいような……はっ、だめだめ待つのよ私、まだ私とライラさんは出会って二日目なんだよ?それにこの人、変態さがにじみ出てるし気を許したら何されるかわかったもんじゃないわ!

だから早くライラさんを引き離さなきゃいけないんだ!

…なんて私の葛藤は、ライラさんにとって知ったこっちゃないもののようだ。


「ひゃあんっ、~~~っ!!」

「んふ……、良い声♡リリーちゃん、こことか弱いんだ~。首筋はどうかな~」

「んんっ‥‥‥くっ‼」




▼▼▼




「こほん!それで、どうやってお母さんを探していくんですか?」


熱くなってしまった体を冷ましながら話を本題に戻していく……ライラさんが満足そうな顔をしてるのがなんか悔しいけれど仕方がない、(女の?)戦いは終わったのである。

ちなみに最後までは行っていない。

流石に全力で死守したのだ。


「ふぅ……。まぁ日本の警察が見つけられなかった時点である程度察しはつくから、そうやって範囲を絞っていって………」



突然言葉を切ったライラさんは真剣な顔で私を勢いよく押し倒してきた。



その瞬間

        

壁が砕けて、壁を砕いたが、少女の上に覆い被さり、首から掛けていた銀のロザリオを引き千切ろうとしていたライラさんに、直撃したように見えた


そして少女の視界が白く染まって……


そして…………

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