〜君と僕が過ごした日々〜

君が謝罪をしてから、数日が経っていた。

僕はその君の謝罪についてとても悩んでいた。


理由は簡単だ。

心から謝罪をしに来た君に対して、流石にあの態度は無かったと思ったからだ。


もちろんそれだけなら僕も、こんなに悩みはしない。

僕はあの謝罪があった後、夢で昔の事を思い出していた。

その夢で思い出した事のせいもあって、謝罪の時の態度に、罪悪感が芽生えて来たからだ。


その夢っていうのが君と僕とがまだ親友になる前の話しだ。

今はこんなに仲の良い僕らだけど、お互い初めから、こんなに仲が良かった訳では無かった。


僕らはどちらかと言えば〝虐める側〟と〝虐められる側〟だった。

君が〝虐める側〟で僕が〝虐められる側〟


いや、君が虐める側は少し語弊がある。

君は周りで見て見ぬフリをする、言わばその〝みんなの中にいる1人〟だった。


そんな僕らが仲良くなったのは、1人の少年が目の前に現れてからだ。

その子はまるで〝そこに居て居ない〟様な感じだった。


ふっと現れては〝虐めてる子〟や〝その周りの子〟そして〝虐められてる僕〟にただ〝人生〟を語り去っていく。

そう、そんな変わった奴だった。


そんな子が現れても虐めは消え無かった。

しかしその子が最後に来た日、最後に話をした日、君と僕が親友になった日。

これまで話していた〝人生〟の話がその周りにいたみんなの心を奮い立たせた。


今でもその時の言葉を僕は一言一句覚えてる。


【自分が幸せになりたいなら、人を幸せにしなさい、その人にとって幸せになる様に働きかけなさい、そうすれば君達はこの世界で素晴らしい大人になれるから】だった。


そんな言葉を放った後、もうその子の姿はもう何処にも無かった。

そのすぐ後に君がいきなり立って〝いじめっ子〟に『もう虐めるのは辞めないか』そう言った。


その姿はカッコよくて、それを見た周りの子達も次々に立ち上がり虐めてる子に抗議してくれた。

こうして僕の虐めは無くなり、最後には皆んな仲良くなれた。


そして最初に立ち上がってくれた君とは、それからよく一緒にいることが増え、親友になった・・・


そんな事があったからこそ、僕は罪悪感に押しつぶされそうだったのだ。


それに〝その子〟が言ってた中に

『どんなに許せなくても、謝罪しに来た勇気有る子を、傷つける事は絶対にしてはダメ』

と言った事があった。


そんな事を思い出した、僕だから本当に君に悪い事をしたと思ったのだ。


それと同時に、君との喧嘩で君の言った言葉の意味を、分かった気がした僕は、余計に罪悪感が大きく膨れ上がったのだ。


だから僕はとても悩んでいた。

いくら君でも、あんなに酷い態度をした僕が、謝っても許してくれない、そんな〝嫌われる恐怖〟と〝謝らなくてはいけない罪悪感〟があったからだ。


だけど僕はこの時とうとう覚悟を決めた。

このまま終わるのだけは、絶対にしたく無い。

だから謝ろうと、そう決めた。

そして君の家へ向かうのであった。

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