第18話 空気も文字も読めないウチは人を変えた

1月。ウチは新しい職場に今日から就く事になった。


1ヶ月前に免許も取ったので、送迎もやる事になった。


この時分かったのは、親御さんは子供だけでなく職員の事もよく見ている。


ウチが普段からつけている耳栓にすぐ気付き、「それってどうされたんですか?」と聞いてくる。


ウチは軽く事情を話すと、すぐに察して話してくれる。


子供たちとの関係性も徐々に作れてきて、皆次第にウチの名前や存在を覚えていった。


上司も前の職場よりも遥かに優しかった。


前の職場の世界しか知らなければ、世の中こういうものなのだと、自分で納得させてしまっていたかもしれない。


あの時の自分の行動力を褒めたい。


それから月日は流れ、4月。


新たな女性社員が入社する事に。ウチと同い年の方だった。


数ヶ月後輩なのか、それとも四捨五入的な感じで同期なのか、ウチが変なタイミングで入ったため、ちょっとややこしい。


ウチはほぼ同期が出来た事にテンションが上がり、仲良くなりたいために、色々話しかけた。


ただ、コミュニケーションに問題のあるウチからのアプローチがちゃんと届いているかは不明である。


話をしていく中で、彼女は去年まで臨任で小学校の先生をしていた事を教えてもらった。


結構な激務だった事も教えてもらった。


その時ウチは、ただでさえ激務なのに、「谷」の字が何度言っても直らない輩が現れたら、そりゃあれだけイラつくかもなぁと思ってしまった。


その時にウチは、1年前に「ザ!世界仰天ニュース」に出演していた事をカミングアウトした。


そしたら彼女は驚いた反応をした。よく聞いてみると、何とその放送を当時リアルタイムで見ていて、担任を持っていたクラスの子の1人に字体の整わない子がいたらしく、その放送をきっかけにアプローチの仕方を変えた事を教えてくれた。


それを聞いてウチは倍驚いた。見ていた事もだが、障害者本人だけでなく、先生という障害者を支えていく人たちにも影響を与えていた事だった。


あの出演は凄く意味のあるものだったんだなと実感させられた。








これは、今これを書いているほんの1ヶ月前の出来事である。






ウチはこれからも自分の事を隠さず伝えていきたい。









その告白が、誰かの支えや、励みになると信じて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る