第49話:心が弱い俺は、自分がやるのだと心に決める
俺は、俺がピースやキャティを助けるんだということを改めて自分に言い聞かせた。
自分でなんとかする。
だけど、どうしたらいい?
どうしたらいいんだ……?
──いや、その前に。
このままだときっとピースは、俺を助けるために魔剣から出てきてしまう。
自分がサタッド王に居所を知られることになっても、たぶん俺を助けることをピースは優先するだろう。
そんな気がする。
「大丈夫だっ! 大丈夫だから、出てくるなっ!」
「はぁっ!? あなた……急に何を言ってるのですか? 恐怖で気がおかしくなりましたか? くっくっく」
ピースの名前を口にするわけにはいかない。
だがピースには、俺の言いたいことは届いたはずだ。
……そう信じたい。
「気はおかしくなってないよザギルさん。あの……ひとつ提案だけど、話し合いで解決しないか?」
「話し合い……? 何を言い出すかと思ったら」
「うん、話し合い。魔族にも平和主義の者がいると聞いたからさ。話し合いができたらいいなぁ」
「あなた、バカですか? 私は話し合いなんかしませんよ。さっき言ったとおり、あなたとあそこの女の命を奪って、エネルギーをいただく。それのみです」
ザギルはあごでキャティを指し示した。
やはり俺だけでなく、キャティの命をも奪うつもりだ。
「いや、あのさ。お前は、この距離だから、さっきの魔法を確実に打ち込めると思ってるんだろ? だからもう俺の命を奪えると思ってるみたいだけど、それは不可能だ」
「ほぉほぉ。今度は強がりですか?」
「強がりじゃない。さっきのお前の攻撃魔法。手のひらから光の玉を出すやつな。あんなへっぽこ魔法は、一つ目の雷系でも二つ目のやつでも、俺に当てることはできないよ。この近距離でもな」
「強がりじゃなければ……私を混乱させて、魔法を打ち込むのを躊躇わせようとする作戦ですね? ふっふっふ」
「そんな作戦じゃないって。嘘だと思うなら、試しに打ってみたらいいじゃないか。俺には当たらないから」
「くっ……面白い。そこまでおっしゃるなら打って差し上げましょう」
ザギルは忌々しそうに顔を歪めた。
俺が恐怖に歪んだ顔を見せないからだろうか。
こんなヤツに、そんな顔を見せてたまるか。
例えホントに殺されてしまうとしても、そんな顔をピースにもキャティにも、俺は見せない。
しかし……もちろん俺は、ここでこいつに殺される気なんかない。
俺がやられたら、俺の手でキャティとピースを助けることができなくなってしまうからな。
ザギルは俺の胸の上に座ったままの至近距離で、俺を見下ろしている。
そして顔の前で拝むように両手を合わせた。
この至近距離だ。
俺は右手を伸ばして、ザギルの両手の間に触れる。
「接着……」
「ん……?」
ザギルのこの攻撃魔法は、手のひらをくっつけた後に開いて、手と手の間に光を出現させる。
だから今は手のひらを離そうとしている。
だけどヤツは、両手のひらをくっつけたまま。
離そうとしても離れないのだろう。
──俺が接着してしまったんだから。
「ん……? ふんっ!」
ザギルのやつ。必死になって、上半身をよじって手のひらを離そうとしている。
俺から集中力がそれて、そして態勢も身体をよじって重心がずれた。
──いまだっ!
俺は渾身の力でザギルを突き飛ばした。
両手がくっついたままの魔人は態勢を崩す。
俺は急いで立ち上がって、魔剣に向かって走る。
ヤツが追いかけてくるのが背中に感じるが、俺の方が速い。
両手がくっついたまま走るなんて、スピードが出にくいに違いない。
そして地面から剣を拾い上げ、俺を追いかけてきたザギルの方に向いた。
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