作られた夢

第31話

 少し冷めたコーヒーを口にする。

「本当に大丈夫のようね」

 玲もコーヒーを飲んだ。

「あなたがもし、ここで逃げ出していたら……まあ、いいわ」

 何かを言いかけて彼女はやめた。

「この一週間順を追って説明するとかえって混乱してしまうから、私なりに整理して話すわ」

 いかにも彼女らしい言い方だと思った。

「途中で質問があったり言いたいことがあったら、遠慮なく口を挟んでちょうだい」

「分かった」

「まず――」

 少しだけ考えて彼女が話し始める。

「あなたがさっき質問したこと。ここに来たかって。答えはイエスよ。あなたは先週の金曜日と土曜日は自らの意思で、日曜日から水曜日までと昨夜は、私の意思でこの部屋に来ていたわ」

「この部屋に……」

「そう。それから、私はずっとここにはいなかったわ。木曜日と金曜日、あなたが夢を見なかった日は出かけてたの」

 ということは、俺の夢とこの部屋はやはり繋がっているのか。

「そうね……はじまりはこの部屋で、そして夢――だった」

 俺の考えていることが分かっているのかのように話を続けた。

「でも、あなたがこの部屋に来てる日すべて、夢を見たわけじゃないでしょ?」

「ああ……俺が夢を見るようになったのは日曜からだ」

 先週は――先週はおろか、日曜まで夢なんて見たことがなかった。

「そう。日曜日からは私の意思でここに来てもらい、そして決められた夢を見てもらったの」

「決められた……夢?」

「ええ」

 一呼吸おいて彼女が口を開いた。

「あなたが先週、私にそうしたようにね」

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